「ソロスターとフレックスタッチは、何が違うのですか?」という質問は、病棟や外来、薬局でもよく出ます。インスリンは薬の種類だけでなく、デバイスの違いでも説明ポイントが変わるため、新人薬剤師さんや看護師さんが最初につまずきやすいところです。
患者さんやご家族にとっても、見た目が似ているのに少しずつ使い方が違うことが分かりにくいです。
インスリン指導では、薬効の違いと同じくらい、デバイスの違いを整理して伝えることが大切です。
この記事では、2026年4月11日時点で日本の公開情報から確認しやすい主なペン型自己注射インスリンデバイスを、新人薬剤師さん、看護師さん、患者さん、ご家族にもわかりやすい形で整理します。

もくじ
まず結論:最初に押さえたいのは「使い捨て」と「カートリッジ交換式」です
| 分類 | 主なデバイス | 特徴 |
|---|---|---|
| 使い捨てペン型 | ソロスター、フレックスタッチ、フレックスペン、イノレット、ミリオペン、ミリオペンHD | 製剤があらかじめ入っていて、使い終えたらペンごと交換します |
| カートリッジ交換式 | ノボペン6、ノボペン エコー プラス、ヒューマペン サビオ | 本体は繰り返し使い、中のカートリッジを交換します |
まずは「ペンごと使い切るタイプ」か「中身だけ替えるタイプ」かを分けると、全体像がかなりつかみやすくなります。
デバイス名と製剤名は別ものです
混乱しやすいのは、薬の名前とデバイスの名前が混ざりやすいことです。
- ランタスXR注 ソロスター
- トレシーバ注 フレックスタッチ
- ヒューマログ注 ミリオペン
このような名称では、前半が製剤名、後半がデバイス名です。ソロスターやフレックスタッチは「打つための器械の名前」であり、インスリンそのものの作用時間を表しているわけではありません。
デバイス名は“注射器の種類”、製剤名は“薬そのもの”と分けて考えると理解しやすいです。
ソロスターはサノフィ製剤で広く使われる使い捨てペンです
サノフィの公開情報では、ソロスマートの互換性があるソロスター製剤として、ソリクア配合注ソロスター、ランタスXR注ソロスター、ランタス注ソロスター、アピドラ注ソロスター、インスリン リスプロBS注ソロスター HU「サノフィ」、インスリン アスパルトBS注ソロスター NR「サノフィ」が示されています。
そのためソロスターは、サノフィ系インスリンや配合注で広く使われている基本的な使い捨てペンとして押さえるとわかりやすいです。
| 見たいポイント | 内容 |
|---|---|
| 主な位置づけ | サノフィ系の代表的な使い捨てペン |
| よく見る製剤 | ランタス、ランタスXR、アピドラ、ソリクア、BS製剤 |
| 実務のポイント | 製剤の取り違え防止、色や名称の確認 |
ソロスターは“サノフィ系の標準的な使い捨てペン”として覚えると実務で整理しやすいです。
フレックスタッチはノボ ノルディスクの中心デバイスです
ノボ ノルディスクの患者向け資料では、トレシーバ、ノボラピッド、ライゾデグ、フィアスプでフレックスタッチの使い方が共通と案内されています。実務でも遭遇頻度が高く、まず覚えたいデバイスのひとつです。
同じフレックスタッチでも、中に入っている製剤は速効型、持効型、配合剤などさまざまです。見た目が似ていても中身は別なので、製剤名まで確認する習慣が大切です。
| 見たいポイント | 内容 |
|---|---|
| 主な位置づけ | ノボ系で中心になる使い捨てペン |
| よく見る製剤 | トレシーバ、ノボラピッド、ライゾデグ、フィアスプ |
| 実務のポイント | 同じデバイス名でも中身の薬効は違う |
フレックスタッチは“ノボ系の中心デバイス”として最初に押さえておくと現場で役立ちます。
フレックスペンとイノレットは継続使用患者さんで見かけます
フレックスペンはノボ ノルディスクの使い捨てペン型デバイスです。現在の新規導入で主役という印象はフレックスタッチほど強くありませんが、既存患者さんでは今も見かけます。イノレットも遭遇頻度は高くありませんが、継続使用患者さんで見かけることがあります。
持参薬確認や継続患者さん対応では、こうした少し前から使われているデバイスを知っているだけでも落ち着いて対応しやすくなります。
フレックスペンやイノレットは、“今も現場で出会う可能性があるデバイス”として知っておくと安心です。
ミリオペンはリリー製剤で幅広く使われています
日本イーライリリーの公式情報では、ミリオペンはヒューマログ系、ヒューマリン系、ルムジェブ、グラルギンBSなどで使われています。リリー系製剤を使う患者さんでは基本になるデバイスです。
病院でも外来でも遭遇しやすく、ソロスター、フレックスタッチと並んで、早めに慣れておきたいデバイスです。
| 見たいポイント | 内容 |
|---|---|
| 主な位置づけ | リリー系の基本的な使い捨てペン |
| よく見る製剤 | ヒューマログ、ヒューマリン、ルムジェブ、グラルギンBS |
| 実務のポイント | リリー製剤全体の説明の土台になる |
ミリオペンは“リリー系の基本デバイス”として覚えると整理しやすいです。
ミリオペンHDは0.5単位きざみが大きな特徴です
ミリオペンHDは、リリーの細かい用量調整に向いた使い捨てペンです。リリーメディカルの医療者向け情報では、ルムジェブ注ミリオペンHDは0.5単位きざみで、0.5〜30単位まで設定可能と案内されています。
小児、やせた患者さん、少量調整が必要な患者さんでは、この0.5単位対応が大きな意味を持ちます。通常の1単位きざみペンと混同しないことがとても大切です。
| 見たいポイント | 内容 |
|---|---|
| きざみ | 0.5単位きざみ |
| 向いている患者 | 小児、少量調整が必要な方 |
| 実務のポイント | 通常のミリオペンと混同しない |
ミリオペンHDは“少量を丁寧に合わせたい患者さん向け”の重要なデバイスです。
ノボペン6とノボペン エコー プラスは交換式デバイスの代表です
ノボ ノルディスクの患者向け資料では、ノボペン6は1単位きざみで最大60単位、ノボペン エコー プラスは0.5単位きざみで最大30単位まで設定可能と案内されています。さらに、どちらもメモリー表示機能があります。
本体を繰り返し使い、中のカートリッジを交換するタイプなので、使い捨てペンより説明項目はやや増えます。一方で、最後に何単位打ったか、どのくらい時間がたったかを振り返りやすいのは大きな利点です。
ノボペン6とノボペン エコー プラスは、“打つ道具”であるだけでなく“記録を助ける道具”でもあります。
ヒューマペン サビオはリリーの交換式デバイスです
ヒューマペン サビオは、日本イーライリリーの交換式デバイスです。リリーメディカルでは電子添文や取扱説明書が公開されており、現在も参照可能なデバイスとして確認できます。
使い捨てペンとは違い、本体を継続使用しながら中身を交換するため、カートリッジ交換の説明、破損時対応、交換時期の確認なども大切になります。
ヒューマペン サビオは、“交換式デバイスをどう説明するか”を学ぶうえで押さえておきたいデバイスです。
新人さんがまず覚えたいデバイスはこの3系統です
| 優先度 | まず覚えたいデバイス | 理由 |
|---|---|---|
| 高い | ソロスター | サノフィ系で遭遇しやすい |
| 高い | フレックスタッチ | ノボ系で非常に重要 |
| 高い | ミリオペン / ミリオペンHD | リリー系で遭遇しやすく、HDは0.5単位が重要 |
| 次に覚える | ノボペン6 / ノボペン エコー プラス | 交換式の代表で説明力がつく |
| 余裕があれば | フレックスペン、イノレット、ヒューマペン サビオ | 継続患者さん対応で役立つ |
最初は全部を完璧に覚えるより、“よく出会う3系統”を押さえるほうが実務では役立ちます。
患者さんやご家族へ説明するときは3つに絞ると伝わりやすいです
患者さん説明では、専門用語を減らして次の3点をそろえると伝わりやすいです。
- これは何の薬が入っているペンか
- 使い捨てか、交換式か
- 針交換、注射後の待ち時間、保管で何に注意するか
たとえば「これは薬の名前がトレシーバで、ペンの名前がフレックスタッチです」「これはペンごと使い切るタイプです」「毎回針は替えて、打ち終わったあとも説明書どおり待ちましょう」のように短く区切ると伝わりやすいです。
患者さん指導では、“薬効の違い”より先に“使い方の違い”をそろえると混乱が減ります。
持参薬確認や病棟指導で注意したいこと
- 同じ会社の製品でも中身のインスリンは別です
- 見た目が似ていても、0.5単位きざみか1単位きざみかは重要です
- 使い捨てペンと交換式では説明内容が違います
- デバイス名だけでなく製剤名まで見るほうが安全です
- 保管方法や使用期限は製品ごとに最終確認が必要です
とくに持参薬確認では、「インスリンを使っています」で終わらせず、何の製剤で、どのデバイスかまで確認すると安全性が上がります。
インスリン指導の事故を減らすには、“何のインスリンか”と“どのデバイスか”をセットで確認する習慣が大切です。
まとめ
日本で使われている自己注射インスリンの主なペン型デバイスは、見た目が似ていても、会社、構造、きざみ、交換方法に違いがあります。新人薬剤師さんや看護師さんは、まずソロスター、フレックスタッチ、ミリオペン系の3系統から押さえると理解しやすいです。
そのうえで、ノボペン6、ノボペン エコー プラス、ヒューマペン サビオのような交換式まで広げると、病棟実務や外来対応でもかなり強くなります。
自己注射インスリンの説明は、“薬効の知識”と“デバイスの知識”がそろってはじめて実践的になります。
あわせて、インスリン製剤の保管方法 や PMDA添付文書検索の使い方 も参考になります。



