「頭痛時の鎮痛薬、どう選ぶ?」「片頭痛・緊張型・群発の使い分けは?」「市販薬で対応できる?」――OTC・処方の現場で薬剤師が頻繁に直面するテーマです。
本記事では、頭痛時の鎮痛薬選びを、頭痛のタイプ別・治療薬の選択・市販薬の使い方・受診勧奨の判断まで、現役薬剤師目線で具体的に整理しました。
結論を先に言えば、頭痛は「片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛・薬物乱用頭痛・二次性頭痛」に分類され、それぞれ薬剤選択が異なります。「頭痛タイプの見極め+適切な薬剤選択+受診勧奨の判断」が薬剤師の役割です。
もくじ
頭痛の主な4分類
| 分類 | 特徴 | 第一選択薬 |
|---|---|---|
| 片頭痛 | 拍動性・吐き気・閃輝暗点 | NSAIDs・トリプタン |
| 緊張型頭痛 | 締め付ける・両側性・肩こり | NSAIDs・アセトアミノフェン |
| 群発頭痛 | 片側眼周囲・激痛・群発期 | トリプタン・酸素吸入 |
| 薬物乱用頭痛 | 連日服薬・慢性化 | 原因薬物の中止 |
① 片頭痛|拍動性で吐き気を伴う
特徴
- 片側性が多い(両側もあり)
- 拍動性(ズキンズキン)
- 吐き気・嘔吐を伴うことが多い
- 光・音過敏
- 運動で悪化
- 4〜72時間持続
- 女性に多い(男女比1:3)
前兆
- 閃輝暗点(ジグザグの光が見える)
- 視野欠損
- 感覚異常
- 片頭痛の20〜30%で出現
治療薬
- 軽中等度:NSAIDs(イブプロフェン・ナプロキセン等)
- 中等度〜重度:トリプタン製剤
- 急性期失敗:エルゴタミン製剤
- 予防薬:β遮断薬・カルシウム拮抗薬・抗てんかん薬・CGRP抗体製剤
トリプタン製剤の代表
- イミグラン(スマトリプタン):注射・点鼻・経口
- ゾーミッグ(ゾルミトリプタン)
- マクサルト(リザトリプタン)
- レルパックス(エレトリプタン)
- アマージ(ナラトリプタン)
新規片頭痛治療薬
- CGRP関連抗体製剤(エムガルティ・アジョビ・アイモビーグ):予防薬
- ラスミジタン:5-HT1F受容体作動薬・新規急性期薬
- ジタン系:トリプタン代替
② 緊張型頭痛|締め付ける痛み
特徴
- 両側性
- 締め付けるような痛み
- 軽中等度の強さ
- 運動で悪化しない
- 吐き気・嘔吐は伴わない(または軽度)
- 肩こり・首こりとの関連
治療薬
- NSAIDs:第一選択
- アセトアミノフェン:軽症・妊婦・小児
- 筋弛緩薬:チザニジン・エペリゾン
- 抗うつ薬:慢性化症例で予防的に
非薬物療法
- 姿勢改善
- ストレッチ
- 温熱療法
- マッサージ
- 適度な運動
③ 群発頭痛|「自殺頭痛」と呼ばれる激痛
特徴
- 片側の眼周囲の激痛
- 15分〜3時間持続
- 1日数回・群発期に集中
- 結膜充血・流涙・鼻汁・縮瞳
- 男性に多い
- 20〜40歳台で発症
治療
- 急性期:スマトリプタン皮下注・酸素吸入
- 予防:ベラパミル・リチウム・ステロイド
- 市販薬は無効のことが多い
受診勧奨
群発頭痛が疑われる激痛の患者には速やかな専門医受診を勧奨します。一般的な鎮痛薬では効果不十分です。
④ 薬物乱用頭痛|慢性化のリスク
特徴
- 急性期治療薬を3ヶ月以上連用で発症
- 頭痛の慢性化・連日化
- NSAIDs:月15日以上使用
- トリプタン・複合鎮痛薬:月10日以上使用
対応
- 原因薬物の中止
- 予防薬への変更
- 非薬物療法の併用
- 専門医での治療
薬剤師の役割
- OTC・処方の連用状況の聴取
- 薬物乱用頭痛のリスク説明
- 受診勧奨
- 非薬物療法の提案
頭痛タイプの見極め|薬剤師の聴取
🔍 聴取項目
痛みの場所・性質
片側/両側・拍動/締め付け
持続時間・頻度
数時間か・連日か
伴う症状
吐き気・閃輝暗点・流涙
市販薬の使用頻度
月何日・何種類
緊急性のサイン
突然の激痛・意識変化
市販薬の選び方
OTCで購入可能な鎮痛薬
- イブプロフェン:イブ・ナロンエース等
- ロキソプロフェン:ロキソニンS
- アセトアミノフェン:タイレノール・ノーシンAce
- 複合鎮痛薬:バファリン・ナロン・SG顆粒
OTC選択の考え方
- 軽症の緊張型・片頭痛 → NSAIDs
- 胃が弱い・妊婦 → アセトアミノフェン
- 群発頭痛・重度片頭痛 → 受診勧奨
- 連用しているなら受診勧奨
OTC連用の警戒
月10日以上の連用は薬物乱用頭痛のリスク。OTC購入が頻繁な患者には受診を勧奨します。
受診勧奨が必要な頭痛|「赤旗症状」
緊急受診の必要なサイン
- 突然の激痛(くも膜下出血疑い)
- 意識障害・麻痺・痙攣
- 発熱を伴う頭痛(髄膜炎疑い)
- 外傷後の頭痛
- 50歳以上での初発頭痛
- がん・免疫不全患者の頭痛
- 頭痛パターンの急激な変化
専門医受診を勧めるサイン
- 市販薬で改善しない
- 連日頭痛が起こる
- 仕事・生活に支障
- OTC連用の習慣化
- 群発頭痛が疑われる激痛
処方確認のチェックポイント
- 頭痛タイプと薬剤の整合性
- 連用期間の確認
- NSAIDs・複合鎮痛薬の併用
- 胃薬・PPIの併用
- 妊娠・授乳の確認
- OTCとの重複
女性特有の片頭痛
月経関連片頭痛
- 月経開始2日前〜3日目
- エストロゲン低下が誘因
- 持続が長く治療抵抗性
- NSAIDs予防投与・低用量ピル等の選択肢
妊娠中の片頭痛
- 多くは妊娠中に軽快
- 急性期治療:アセトアミノフェンが第一選択
- NSAIDsは妊娠後期で禁忌
- トリプタンは慎重投与
関連記事:妊娠・授乳中の薬の対応
小児・高齢者の頭痛
小児の頭痛
- 第一選択:アセトアミノフェン
- イブプロフェンも使用可(適応年齢確認)
- ロキソプロフェンは15歳未満で慎重
- 慢性頭痛は専門医へ
高齢者の頭痛
- NSAIDsは消化管・腎機能リスク
- 第一選択:アセトアミノフェン
- ポリファーマシーへの注意
- 巨細胞性動脈炎等の二次性頭痛も警戒
2026年現在の頭痛治療トレンド
- CGRP関連抗体製剤の普及(予防薬)
- ラスミジタン等の新規急性期薬
- 頭痛ダイアリー・スマホアプリの活用
- 非薬物療法(行動療法・認知療法)の評価
- 専門医での包括的治療
処方医への提案
提案テンプレ
〇〇先生
〇〇様の市販薬使用について情報提供いたします。
鎮痛薬を月20日以上連用しており、薬物乱用頭痛のリスクがございます。
予防薬の検討・専門医受診のご検討をお願いいたします。
新人薬剤師に教えるべきポイント
- 頭痛タイプの見極め
- 赤旗症状の認識
- 薬物乱用頭痛のリスク
- OTC連用への警戒
- 受診勧奨の判断
- 妊婦・小児・高齢者の薬剤選択
関連する服薬指導記事
OTC窓口での声かけ
選択時に必ず聴取
- 痛みの性質・部位・頻度
- 市販薬使用歴
- 処方薬の有無
- 妊娠・授乳の有無
- 持病(胃腸・腎・心血管)
- アレルギー歴
窓口での受診勧奨
- 市販薬で改善しない場合
- 連用が常態化している場合
- 赤旗症状がある場合
- 群発頭痛疑い
こんな患者には特別配慮
- 妊婦・授乳婦
- 小児(特に15歳未満)
- 高齢者(腎・消化管リスク)
- 抗血栓薬服用中
- 胃潰瘍既往
- 気管支喘息(NSAIDs過敏症)
頭痛ダイアリーの活用
頭痛の記録習慣は専門医受診時の重要情報。患者に頭痛ダイアリー(紙・アプリ)の活用を勧めましょう。
記録項目
- 発症日時・時間帯
- 痛みの強さ(VAS等)
- 持続時間
- 使用した薬剤
- 誘因(食事・睡眠・ストレス)
- 月経との関連
2026年改定での頭痛診療
- 頭痛診療ガイドライン2021/2026の活用
- CGRP抗体製剤の保険適用拡大
- 専門医制度の整備
- 非薬物療法の評価
よくある質問(FAQ)
Q1. 市販薬と処方薬、どちらがいい?
軽症で月数回程度の頭痛なら市販薬でOK。連用・重症化したら処方薬に切り替えます。
Q2. ロキソニンとイブ、どっちが効く?
個人差があります。NSAIDsは患者ごとに合う薬が違うため、効果不十分なら別のNSAIDsを試すのも選択肢です。
Q3. 月何回までの服用が安全?
NSAIDsで月15日以下、複合鎮痛薬・トリプタンは月10日以下。これを超えると薬物乱用頭痛のリスクです。
Q4. 妊婦の頭痛にはどの薬?
第一選択はアセトアミノフェン。NSAIDs(特に妊娠後期)・トリプタンは慎重投与または禁忌。必ず医師確認のもとで使用を。
Q5. 子どもの頭痛も市販薬でOK?
軽症ならアセトアミノフェンが第一選択。改善しない・繰り返す場合は受診を勧めます。
Q6. 突然の激しい頭痛は?
くも膜下出血等の緊急疾患の可能性。即座に救急受診を勧めます。意識障害・麻痺を伴うなら救急車も検討。
まとめ|「タイプ別+連用警戒+受診勧奨」
頭痛時の鎮痛薬選びは「片頭痛・緊張型・群発・薬物乱用頭痛」のタイプ別+連用警戒+受診勧奨が3本柱。タイプの見極め+適切な薬剤選択+赤旗症状の認識ができれば、安全で効果的な薬学的介入が可能になります。
OTC窓口でも処方確認でも、「連用していないか」「赤旗症状はないか」「妊婦・小児・高齢者への配慮」を意識した対応で、患者のQOL改善に貢献していきましょう。
📚 関連する服薬指導記事
PR
頭痛診療・新規鎮痛薬の最新情報を毎日効率よく追うなら m3.com
CGRP抗体製剤・ガイドライン改訂・症例報告まで効率よくチェック。28万人以上の薬剤師が活用する無料サービス(登録約1分)。
※本記事は薬剤師の業務支援を目的とした情報提供であり、特定の患者・症例への臨床判断を保証するものではありません。鎮痛薬の選択・連用判断は最新ガイドライン・添付文書・主治医の指示に従ってください。


