PMDAが2026年7月1日に公表した令和7年度調査では、回答した薬剤師656人の制度認知率は97.9%でした。
一方、これまで制度に関与した薬剤師の割合は12.0%でした。
認知率は高い一方、実際に関わった経験は限られています。患者さんから相談を受ける前に、「何を確認し、どこまで説明するか」を薬局内で決めておくことが重要です。
薬剤師が行うのは、給付対象の判定ではありません。
症状に応じた受診を優先し、使用薬と経過を整理して、患者さん本人または遺族をPMDAの相談窓口へつなぐことが薬局での初動です。
薬局で最初に行うこと
- 緊急性を確認し、必要な受診を妨げない
- 原因と疑われる薬と症状の経過を整理する
- 入院や治療の状況、購入経路を確認する
- 対象外と決めつけず、PMDA相談窓口を案内する
- 処方記録や販売証明書など、薬局が協力できる書類を確認する
この記事では、医薬品副作用被害救済制度を薬局で案内する順番に沿って整理します。
もくじ
医薬品副作用被害救済制度の対象
医薬品副作用被害救済制度は、医薬品や再生医療等製品を適正に使用したにもかかわらず生じた健康被害に対し、医療費や年金などを給付する公的制度です。
医薬品は1980年5月1日以降、再生医療等製品は2014年11月25日以降に発生した健康被害が制度の対象です。
医薬品は、医療用医薬品だけではありません。
薬局やドラッグストアで購入した要指導医薬品、一般用医薬品も含まれます。
対象となる健康被害は、次のいずれかです。
- 入院治療を必要とする程度の疾病
- 日常生活が著しく制限される程度の障害
- 死亡
ただし、個別の給付可否を薬剤師が決めるわけではありません。
PMDAが請求内容を調査し、厚生労働大臣に判定を申し出ます。
厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて判定し、その結果に基づいてPMDAが支給の可否を決定します。
受診を優先してから相談内容を整理する
患者さんが息苦しさ、意識障害、急速に広がる皮疹などを訴えている場合、救済制度の説明より受診を優先します。
制度の案内は治療の代わりになりません。
受診後または全身状態が安定している相談では、次の内容を確認します。
| 確認項目 | 薬歴や相談記録に残す内容 |
|---|---|
| 症状と経過 | 発現日、症状、受診日、入院の有無、現在の状態 |
| 使用薬 | 商品名または一般名、規格、開始日、増量日、中止日 |
| 使用方法 | 用法用量、飲み忘れや重複、自己調整、併用薬 |
| 入手経路 | 院内処方、院外処方、OTC購入、購入店舗と購入日 |
| 手元の資料 | お薬手帳、処方内容、領収書、OTCの外箱や説明書 |
「適正使用」は、添付文書に書かれた効能効果、用法用量、使用上の注意に従うことが基本です。
ただし、PMDAは個別事例を現在の医学・薬学の水準に照らして総合的に判断します。
用量のずれや対象除外医薬品の可能性があっても、薬局で対象外と決めず、PMDAの相談窓口へ確認します。

給付の対象にならない主な場合
PMDAは、給付の対象にならない主な場合を公表しています。
| 確認する区分 | 薬局での案内 |
|---|---|
| 法定の予防接種による健康被害 | 予防接種健康被害救済制度など、接種日に応じた制度を確認します。任意接種は本制度の対象になり得ます。 |
| 対象除外医薬品等 | 厚生労働大臣が指定する一部の抗がん剤などが該当します。薬効群だけで決めず、最新一覧を確認します。 |
| 適正使用と認められない場合 | 用法用量、使用目的、禁忌、併用状況を記録します。最終判断はPMDAの手続きに委ねます。 |
| 入院治療を要する程度ではない疾病 | 外来通院でも「入院相当程度の通院治療」に当たる可能性があります。受診状況を整理して相談します。 |
| 請求期限の経過 | 給付ごとに起算日が違います。「数年前だから無理」と決めず、支払日や死亡日を確認します。 |
血液製剤など生物由来製品を介した感染被害には、別の救済制度があります。
美容医療に使われる医薬品も対象外となる場合があるため、使用目的を含めてPMDAへ確認します。
PMDAは対象除外医薬品等の案内ページを2026年6月24日に更新しており、掲載されている一覧表は2026年6月19日現在です。対象か不明な場合は、薬効群や商品名だけで判断せず、最新一覧と相談窓口で確認します。
更新情報の入口を決めておく
給付額や対象除外医薬品等は更新されます。医療ニュースで変更に気づく補助線としてm3.comを使う場合は、薬剤師がm3.comを情報収集に使う方法を確認できます。最終確認はPMDAの一次情報で行います。
給付7種類と2026年4月1日現在の金額
給付は7種類です。
医療費と医療手当は疾病、障害年金と障害児養育年金は一定の障害、遺族年金などは死亡に対応します。
| 給付 | 2026年4月1日現在の内容 |
|---|---|
| 医療費 | 健康保険等の給付を除いた自己負担分 |
| 医療手当 | 通院のみは月3日以上、入院のみは月8日以上、入院と通院の両方がある月は41,100円。それ以外は39,100円 |
| 障害年金 | 1級は年額3,142,800円、2級は年額2,514,000円 |
| 障害児養育年金 | 1級は年額982,800円、2級は年額786,000円 |
| 遺族年金 | 年額2,748,000円。原則として最高10年間 |
| 遺族一時金 | 8,244,000円 |
| 葬祭料 | 222,000円 |
医療費には、差額ベッド代、診断書などの文書料、食事の標準負担額といった保険給付対象外の費用は含まれません。高額療養費、公費助成、健康保険組合の付加給付がある場合は、その金額を除いて算定されます。
給付額は給付事由が発生した月によって異なります。年金の支給対象期間は、請求月の翌月分からです。遺族年金の支給期間は原則10年ですが、死亡した本人が障害年金を受給していた場合は調整されます。遺族一時金と葬祭料は死亡年月の金額が適用されます。
請求期限は給付ごとに確認する
請求期限は「すべて5年」ではありません。
| 給付 | 請求期限 |
|---|---|
| 医療費 | 対象となる費用を支払ったときから5年以内 |
| 医療手当 | 対象となる医療を受けた月の翌月初日から5年以内 |
| 障害年金 | 請求期限なし |
| 障害児養育年金 | 請求期限なし |
| 遺族年金、遺族一時金、葬祭料 | 死亡時から5年以内。死亡前に医療費、医療手当、障害年金または障害児養育年金の支給決定があった場合は2年以内 |
医療費は支払いごとに期限を確認します。
遺族年金を受けられる先順位者が死亡した場合は、その死亡から2年以内という期限もあります。
副作用被害によって現在も入院中で、今後も治療費を支払う必要がある場合は、過去5年以内の支払い分を先に請求することもできます。
請求書類と薬局が協力できる範囲
給付請求は健康被害を受けた本人がPMDAへ直接行い、死亡した場合は遺族のうち最優先順位の人が請求します。
医師の診断書や投薬・使用証明書、受診証明書などが必要です。給付の種類や受診先、医薬品の入手方法によって必要な様式が変わります。
院外処方された医薬品が原因と疑われる場合、2026年4月版の請求の手引きは院外処方箋の写しの提出を求めています。手元にあれば、お薬手帳または薬剤情報提供文書の写しも提出します。
薬局では、患者さんの同意と院内手順に沿って、処方内容や調剤記録を確認し、必要な写しの扱いを案内します。
OTCによる副作用では、購入先の薬局などが医薬品名や販売年月日を記載した販売証明書を作成します。
PMDAの請求書類一覧では、レシートは必須書類として挙げられていません。レシートの有無だけで請求不可と判断せず、商品名、購入時期、購入店舗を整理して、PMDAと購入先へ相談します。
患者さんへの案内文
薬局での説明例
「お薬を適切に使っていても、入院治療が必要になる程度などの健康被害が起きた場合には、公的な救済制度の対象になることがあります。対象になるかは薬局では決められないため、使用したお薬と治療の経過を整理して、PMDAの相談窓口へ確認しましょう。必要な記録については、薬局でも確認します。」
PMDAの救済制度相談窓口は、0120-149-931です。
受付時間は平日の9時から17時までで、祝日と年末年始を除きます。
電話番号と受付時間は変更される可能性があるため、案内時にPMDA公式ページで確認します。
薬局内で決めておく4項目
制度を知っているだけでは、相談時の動きはそろいません。
- 相談を受けた人が記録する共通項目
- 管理薬剤師や医薬品安全管理責任者へ共有する基準
- 処方記録やOTC販売記録を確認する担当者
- PMDAのポスターと窓口情報を更新する担当者
薬局開設者と店舗販売業者には、医薬品による健康被害の救済制度に関する解説を見やすい場所へ掲示することが求められています。
PMDAはポスター、リーフレット、薬袋用の説明資材を配布しています。
掲示の有無だけでなく、相談を受けた後の引き継ぎ先まで決めておくと、制度が実務に変わります。
よくある質問
外来治療だけなら対象外ですか?
外来だけで直ちに対象外とは限りません。
PMDAは、入院治療を必要とする程度の疾病を対象としており、入院相当程度の通院治療が給付対象になる場合もあります。
治療内容を整理して相談します。
一般用医薬品の副作用も対象ですか?
要指導医薬品と一般用医薬品も対象に含まれます。
購入先の薬局などによる販売証明書が必要になるため、商品名、購入時期、購入店舗を確認します。
副作用報告と救済給付の請求は同じですか?
別の手続きです。
副作用報告は安全性情報の収集、救済給付は健康被害を受けた本人または遺族への給付を目的とします。
必要に応じて両方を検討します。
数年前の副作用でも相談できますか?
給付によって期限と起算日が違います。
医療費は支払日から5年以内、障害年金と障害児養育年金には請求期限がありません。
支払日、死亡日、過去の支給決定を確認してPMDAへ相談します。
薬剤師が判断せずに次へつなぐ
救済制度の相談では、対象可否を急いで結論づける必要はありません。
受診を優先し、使用薬、症状、治療、購入経路を記録して、本人または遺族をPMDAへつなぎます。
処方記録や販売証明書を準備できる体制は、薬局の安全管理を支える実務です。
あわせて確認したい記事
参考情報
- PMDA「医薬品副作用被害救済制度に関する業務」
- PMDA「医薬品副作用被害救済制度の給付対象」
- PMDA「給付の種類と給付額」
- PMDA「請求期限」
- PMDA「対象除外医薬品等」
- PMDA「がんその他特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品であって厚生労働大臣の指定する医薬品等」
- PMDA「一般用医薬品により副作用が生じた場合」
- PMDA「副作用救済給付の支給決定等は、どのようにして決まるのですか」
- PMDA「患者の皆様からの医薬品副作用報告」
- PMDA「医薬品副作用被害救済制度の紹介資材」
- PMDA「令和7年度 医薬品副作用被害救済制度に係る認知度調査結果概要」
- PMDA「医療費・医療手当 請求の手引き(令和8年4月版)」
本記事は2026年7月21日時点のPMDA公表情報に基づきます。実際の請求では、給付額、対象除外医薬品等、必要書類、窓口情報の最新版をPMDA公式サイトで確認してください。


