「加算3って結局いつ取れるの?」「イとロって何が違う?」――2024年に新設された特定薬剤管理指導加算3は、算定機会が限られているのに点数が大きく、現場での取りこぼしが目立つ加算です。
この記事では、2026年6月改定後の特定薬剤管理指導加算3(イ:5点/ロ:10点)について、算定要件・対象シーン・説明フレーズ・記録テンプレを実務目線で整理しました。「最初の1回」を逃さない仕組みづくりまで、3つの具体シーンで完全解説します。
結論を先に言えば、加算3で押さえるべき重要ポイントは次の3つです。
- イ(5点)はRMP資材+緊急安全性情報での初回指導
- ロ(10点)は選定療養・供給不安・バイオ後続品の3シーン
- 「最初に処方された1回限り」算定なので、初回検知の仕組みが鍵
加算1・2・3の全体像から学びたい方は、先に特定薬剤管理指導加算1・2・3の総合ガイドもあわせてご覧ください。
もくじ
特定薬剤管理指導加算3とは|2026年6月改定の変更点
特定薬剤管理指導加算3は、調剤管理料(または服薬管理指導料)に上乗せできる加算で、患者の薬剤選択に関わる「重要説明」を行った薬剤師を評価する仕組みです。2024年改定で新設され、2026年改定でも継続・拡充されました。
加算1・加算2との違い
加算3は、加算1(ハイリスク薬指導)・加算2(抗悪性腫瘍剤への薬学的介入)と性質が大きく異なります。加算1・2が「毎回算定可能」なのに対し、加算3は「当該品目につき最初の処方の1回限り」と算定機会が限定されている点が最大の特徴です。一方で、点数(イ5点・ロ10点)は決して小さくなく、新規導入が多い薬局ほど積み上げが効きます。
2026年改定での主な変更点
2026年6月施行の改定で、ロの対象に「バイオ後続品(バイオシミラー)の説明」が新たに追加されました。バイオ医薬品の一般名処方やバイオ後続品の銘柄名処方が出た患者に、後続品の特性・先発との違いを説明すると算定できます。新設のバイオ後続品調剤体制加算と合わせて、薬局のバイオ後続品推進が制度的に強化された形です。
加算3「イ」(5点)— RMP資材を用いた指導
イの算定要件
加算3のイは、次のいずれかに該当する場面で算定できます。
- RMP(医薬品リスク管理計画)資材を用いた初回指導:製造販売業者が作成した患者向け安全管理資料を当該患者に対して最初に用いた場合
- 緊急安全性情報・安全性速報の発出時の情報提供:PMDAから新たに発出された情報を、対象薬を服用中の患者に提供した場合
いずれも「当該品目につき最初の処方の1回限り」。同じ患者でも、別のRMP対象薬が処方されれば、それぞれで算定できます。
対象薬の探し方
RMP策定医薬品はPMDA公式サイトで公開されています。「医薬品リスク管理計画(RMP)情報」ページに最新リストがあり、患者向け資材(くすりのしおりとは別の安全管理資料)が用意されている品目を確認できます。代表例は抗凝固薬(DOAC)の新規承認品目、新規分子標的薬、生物学的製剤など。「新薬が処方箋に入ったらRMP資材の有無を確認する」習慣を仕組みにすると取りこぼしが減ります。
記録テンプレート例
記録に必須の項目は次の3点です。
- 使用したRMP資材の名称(または緊急安全性情報の発出元・日付)
- 患者への説明内容(リスク・初期症状・受診タイミング)
- 患者の理解度・質問・自己管理の意向
良い記録例:「○○錠の患者向け重要事項説明資料(2026年4月版)を用いて、出血リスクと初期症状(鼻出血が止まらない/黒色便等)を説明。理解良好。次回受診まで自己モニタリングする旨確認。」
加算3「ロ」(10点)— 3つの説明シーン
ロは令和7年(2025年)4月施行の期中改定で5点から10点に引き上げられ、さらに2026年6月改定でバイオ後続品の説明が新たに対象へ追加されました。長期収載品の選定療養施行(2024年10月)に伴う業務負担増加への対応として点数アップが行われた経緯があります。現在は3つの説明シーンで算定でき、点数あたりの旨味が最も大きいパートです。
シーン①|選定療養で先発品を希望する患者への調剤前説明
2024年10月施行の長期収載品の選定療養により、後発品があるのに先発品を希望する患者には特別の料金が発生します。調剤前に「先発を選ぶと自己負担がいくら増えるか」「後発品との成分・効果の同等性」を説明したケースが対象です。
説明フレーズ例:「この薬は後発品があり、先発品をご希望の場合は通常の自己負担に加えて約○○円の特別料金がかかります。後発品でも成分・効果は同等で、後発品にすると自己負担は○○円下がります。どちらにされますか?」
シーン②|医薬品供給不安定による銘柄変更の説明
供給停止・出荷調整により、いつもの銘柄が手配できず別メーカー品に切り替える際の説明が対象です。同一成分・同一剤形でも、添加物・味・形状が変わることがあり、患者の不安解消が算定の核となります。
説明フレーズ例:「現在この銘柄が出荷調整中で、同じ成分の別メーカー品をご用意します。効き目は同じですが、色や形が変わります。これまでと同じように服用していただいて大丈夫です。」
シーン③|バイオ後続品の説明(2026年改定で追加)
バイオ医薬品の一般名処方、またはバイオ後続品の銘柄名処方を受けた患者に、バイオ後続品の特性を説明したケースが対象です。「ジェネリックとバイオシミラーは違う」「同等性は試験で確認されている」「自己負担はどう変わるか」の3点が説明の柱になります。
説明フレーズ例:「これは『バイオ後続品』というお薬で、先発品と同じように効くことが試験で確認されています。化学合成のジェネリックとは異なり生物製剤ですが、安全性・有効性は同等です。自己負担は約○%下がります。」
イとロの違い早見表
📊 加算3 イ・ロ 一覧(2026年6月改定)
| 項目 | イ(5点) | ロ(10点) |
|---|---|---|
| 対象シーン | RMP資材・緊急安全性情報 | 選定療養/供給不安/バイオ後続品 |
| 説明の核 | 安全性・リスク管理 | 薬剤選択・経済的影響 |
| 算定回数 | 当該品目につき最初の処方の1回限り | |
| 記録必須項目 | 資材名/説明内容/理解度 | 説明場面/選択結果/自己負担影響 |
※点数・要件は2026年6月施行の調剤報酬点数表に基づく。最新の疑義解釈は厚生労働省・日本薬剤師会の通知を必ず確認してください。
算定取りこぼしを防ぐ実務チェックリスト
✅ レセコン側の仕掛け
- RMP対象薬マスタを年4回更新
- 初回処方フラグの自動表示
- 「先発品希望」患者へのアラート設定
- バイオ後続品の銘柄に注意マーク
⚠️ 服薬指導時のチェック
- 新規薬は必ずRMP資材を確認
- 選定療養対象薬は説明テンプレで対応
- 供給切替時は文書も交付
- バイオ製剤は後続品の有無を確認
📝 記録・月次レビュー
- 使用資材名・場面を必ず記載
- 患者の理解度・選択結果を明記
- 月次で算定件数をモニタリング
- 査定事例は全員で共有
よくある質問(FAQ)
Q1. 加算3「イ」と「ロ」は同時に算定できますか?
同一品目について、イとロを同時に算定することはできません。場面ごとにいずれかを選択します。ただし、別の品目であれば、それぞれイ・ロを算定可能です。
Q2. 加算1と加算3は併算定できますか?
同一回でも算定可能です。ハイリスク薬(加算1対象)かつRMP策定薬(加算3イ対象)の初回処方では、加算1と加算3イを併せて算定できます。
Q3. 「最初の処方」とは薬局単位ですか、患者単位ですか?
患者単位です。別薬局で過去に処方歴がある場合、当該薬局で初めて調剤するタイミングでは算定できません。お薬手帳・問診で過去の使用歴を必ず確認してください。
Q4. バイオ後続品の説明は、何を話せば算定できますか?
最低限、①バイオ後続品の位置づけ(化学合成ジェネリックとの違い)、②有効性・安全性の同等性が確認されていること、③患者の自己負担への影響、の3点を説明する必要があります。記録には「説明した内容」と「患者の選択結果」を明記しましょう。
Q5. 説明資料を渡しただけで算定できますか?
できません。「資材を用いた説明・指導」が要件であり、口頭での説明と理解度の確認、薬歴への記録までがセットで必要です。
Q6. オンライン服薬指導でも算定できますか?
算定要件を満たせば算定可能です。ただし、RMP資材や説明文書を事前に共有し、画面で確認しながら指導した経緯を記録に残してください。
まとめ|「最初の1回」を逃さない仕組みを作る
特定薬剤管理指導加算3は、点数が大きい一方で「初回限定」という性質上、取りこぼすと二度と回収できない加算です。だからこそ、レセコンの仕掛け・服薬指導時のチェック・月次レビューの3層で漏れを潰す仕組みが必須になります。
2026年改定でバイオ後続品が加わり、ロの算定機会はさらに広がりました。バイオ後続品調剤体制加算とセットで活用すれば、薬局の収益構造を大きく押し上げる起爆剤になります。
「面倒な説明」と捉えるか、「専門性を点数化するチャンス」と捉えるか。前者の薬局は淘汰され、後者の薬局は生き残る――それが2026年改定後の現実です。今日から仕組み化を始めましょう。
加算1・加算2を含めた全体像は特定薬剤管理指導加算1・2・3の総合ガイドで、改定全体の流れは2026年6月調剤報酬改定まとめと選定療養2026年の変更点もチェックしてください。地域支援体制加算の運用は地域支援体制加算チェックリストで確認できます。
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