こんにちは、ご覧いただきありがとうございます。
今回は、薬剤師らしい話題として、痛み止めについてお話ししたいと思います。
痛み止めと一口に言ってもさまざまな種類がありますが、今回は一般の方でも使用する機会が多いNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とアセトアミノフェンについて、特徴や注意点を簡単にご紹介します。
もくじ
NSAIDs
NSAIDsという言葉にあまり馴染みのない方も多いかもしれませんが、これは「非ステロイド性抗炎症薬」の略称です。
痛みの原因となる物質であるプロスタグランジンの生成を抑えることで、鎮痛効果を発揮します。
市販薬では、ロキソニンSの主成分であるロキソプロフェンや、イブの主成分であるイブプロフェンがよく知られています。
これらの薬は効果が比較的強く、効き目が早いものが多いため、クリニックでもよく処方されます。
ただし、NSAIDsが抑制するプロスタグランジンは、胃の粘膜を保護する役割も持っているため、使用によって胃が荒れることがあります。
最悪の場合、胃潰瘍が進行し、胃に穴が開いてしまうこともあるため、胃酸を抑える薬や胃粘膜を保護する薬と一緒に処方されることが多いです。
ロキソプロフェンナトリウムは、先発医薬品ではロキソニンとして知られています。
市販薬としても入手可能で、多くの方が利用したことがあるかもしれません。
この薬はプロドラッグと呼ばれるタイプで、体内で活性化されてから効果を発揮します。
そのため、他のNSAIDsに比べて胃を荒らすリスクが低いとされていますが、完全にゼロではないため、胃薬との併用が推奨されます。鎮痛効果の発現は約50分で、歯科でもよく使用される薬です。
先発医薬品の商品名でいうとセレコックスです。
選択的COX-2阻害薬と呼ばれる系統の痛み止めです。
COXというのは、生体内でプロスタグランジンを生成するための酵素です。
NSAIDsが効果を及ぼすCOXには主にCOX-1とCOX-2の2種類があります。
主に痛みの発生に関わっているプロスタグランジンが生成されるのはCOX-2を介した経路です。
COX-2のみを選択的に抑えることで、痛みの原因となるプロスタグランジンを効果的に抑制できます。
胃腸障害が比較的少ないため、使用が長期にわたりやすい整形外科領域でよく使用されますが、それでも胃薬との併用が一般的です。
効果はロキソニンに比べてやや遅い印象があります。
先発医薬品の商品名で言うとボルタレンです。
錠剤以外にも座薬やローション、ゲルなどの外用薬も有名ですね。
効果が強い反面、胃腸障害のリスクも高く、特に尿路結石などの強い痛みには座薬として処方されることが多いです。
直腸から吸収されるため、効果が早く、内服薬よりも強力な鎮痛効果が期待できます。
NSAIDsは非常に効果的な鎮痛薬ですが、使用方法を誤ると胃腸障害や腎障害といった副作用が発生するリスクがあります。
必ず医師や薬剤師の指示に従い、正しい用法・用量で使用しましょう。
また、頓服で使用する場合は、6時間程度の間隔を空けるようにしましょう。
さらに、小児には安全性が確立されていない薬剤が多く、インフルエンザ時には使用を避けたほうが良いでしょう。
最近では関係ないという説も有力ですが、インフルエンザ脳症との関連が疑われているためです。
どのNSAIDsでも胃薬を併用することをおすすめします。
痛み止め単独で処方された場合は、医師や薬剤師に胃薬の追加を相談してみてください。
アセトアミノフェン
次に紹介するのはアセトアミノフェンです。
主な商品名でいうとカロナールです。
こちらも市販薬として購入することができます。
子供の座薬や粉薬としてもよく使われます。
総合風邪薬の成分としても含まれています。
アセトアミノフェンは、NSAIDsとは異なる作用で鎮痛効果を発揮します。作用の仕組みは完全には解明されていませんが、比較的安全性が高い薬剤であり、子供や妊婦、高齢者、腎機能が低下している方にも使いやすい薬です。
しかし、安全性が高いとはいえ、必要最低限の期間での使用が望まれます。
最も注意すべき副作用は肝臓への影響で、特に大量使用は肝障害のリスクが高くなります。
医療機関で処方された場合、市販薬と合わせて使用する際には、アセトアミノフェンの総量を確認しましょう。
通常、1日2gを超えない範囲での使用が推奨されます。
お子さんには体重1kgあたり10~15mg程度の用量で使用します。
また、アセトアミノフェン単独では胃腸障害のリスクが低いことも知られています。
しかし、NSAIDsとの併用によって胃腸障害のリスクが増加するという報告もあるので注意が必要でしょう。
個人的なイメージでは、比較的安全性が高い薬ということもあり、効果はNSAIDsに比べて弱い印象があります。
薬の副作用は効果の延長線上にあることも多いので、効果が強ければその分副作用は強く出てしまうということも多々あります。
効果と副作用、自分の症状を総合的に見て使用するお薬を主治医と相談してみましょう。
その他の鎮痛剤
その他の鎮痛薬としては医療用麻薬を含むオピオイド、神経障害性疼痛緩和薬、鎮痛補助薬として使用される抗てんかん薬や抗うつ薬、偏頭痛治療薬のエルゴタミン製剤やトリプタン系薬剤があります。
このあたりの薬はまた別の機会に記事にしてみようと思います。
ちなみに僕は偏頭痛の有病者なのでトリプタン系薬剤を発作時に使用しています。
メリット、デメリットを考え自分に合う痛み止めを適度に使おう
薬にはメリット、デメリットがあります。
リスクとベネフィットを考慮した上で使用するお薬を選んでみましょう。
どんなお薬でも漫然と使用していると副作用発現のリスクは高まってしまうので、痛み止めも症状に応じて適度に使用していきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。