時給2,500円で週10時間働くと、手当や賞与を含めない単純計算で年130万円になります。
一方、短時間労働者として勤務先の社会保険に加入する際の時間要件は、原則として週20時間以上です。
扶養の収入基準に届く時点と、勤務先で加入する時点は一致しないことがあります。
薬剤師のパート勤務を考えるときは、年収の数字だけでなく、勤務時間、勤務日数、雇用期間、勤務先の適用状況を確認します。
2026年10月に予定される月8.8万円の賃金要件撤廃も、この順序に沿って読むと自分への影響を整理できます。
確認する順序は、勤務先での加入判定、扶養認定、保険料と手続きです。
以下は、主に日本国内で民間の薬局などに雇用され、配偶者の扶養を検討する方に向けた一般的な整理です。
図表の130万円は通常の収入基準で、年齢や障害の状態により150万円または180万円の基準が適用される場合があります。
業務委託の報酬や公務員の共済制度は、そのまま当てはめず個別に確認してください。
手元に雇用契約書や労働条件通知書を用意すると確認しやすくなります。
薬剤師の年収比較シートも、給与と勤務条件を整理する際に使えます。

もくじ
まず勤務先で社会保険に加入するかを確認
適用事業所で働く場合、通常の労働者と比べて週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が4分の3以上なら、原則として健康保険と厚生年金の加入対象です。
例えば、通常の労働者が週40時間、月20日なら、週30時間以上かつ月15日以上が比較の目安になります。
週30時間だけで判定を終えないようにします。
4分の3基準を満たさない場合は、短時間労働者としての要件を確認します。
2026年9月13日に確認した公表資料では、次の条件が示されています。
| 確認項目 | 現在の主な内容 |
|---|---|
| 勤務先 | 特定適用事業所、任意特定適用事業所などであること。単に店舗の従業員数を数えるものではありません。 |
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 |
| 所定内賃金 | 月額8.8万円以上。2026年10月に撤廃予定 |
| 学生の扱い | 原則として学生でないこと。休学中や夜間課程などは例外があります。 |
| 雇用期間など | 2か月を超えて使用される見込みなども確認。2か月以内の契約でも更新などの見込みがあれば当初から加入対象となる場合があります。 |
年齢や臨時雇用などの適用除外もあるため、表だけで個別の加入可否は確定しません。
勤務先で加入要件を満たす場合は、年収が130万円未満でも加入し、被扶養者にはなりません。
出典:日本年金機構の資格取得要件Q&A、短時間労働者への適用拡大、短期契約の取扱い。
2026年10月の賃金要件撤廃予定と残る条件
日本年金機構の案内は、月8.8万円以上の賃金要件について「令和8年10月に撤廃予定」としています。
本記事もこの公表表現に合わせます。
撤廃の施行状況は、勤務条件を変える時点で日本年金機構の最新案内を確認してください。
「106万円」は月8.8万円を12倍した約105.6万円を指す通称です。
現在の加入判定で使うのは、原則として年収実績ではなく所定内賃金の月額です。
賃金要件が撤廃されても、週20時間、事業所の適用状況、学生の扱いなどの確認は残ります。
すでに所定内賃金が月8.8万円以上の方は、賃金要件の撤廃だけで加入判定が変わるとは限りません。
職種名だけでは、個々の勤務条件による違いを判断できません。
自分の雇用条件とその後の変更を確認する必要があります。
時給から130万円に届く勤務時間を試算
勤務先での加入条件を確認したら、扶養認定に用いる年間収入の見込みを整理します。
健康保険の扶養は、原則としてこれからの年間収入見込みで判断します。
暦年の収入合計がまだ130万円未満でも、契約変更によって扶養から外れる場合があります。
次の表は、毎週同じ時間を52週働き、手当、賞与、他の収入がないとした試算です。
130万円基準が適用される人で、勤務先の加入では4分の3基準を満たさず、時間以外の短時間労働者の要件を満たす状況を比較しています。
| 時給(例) | 月8.8万円に届く週時間 | 年130万円に届く週時間 | 週20時間との比較 |
|---|---|---|---|
| 1,023円 | 19.9時間 | 24.4時間 | 週20時間 |
| 1,250円 | 16.2時間 | 20.0時間 | 同時 |
| 2,000円 | 10.2時間 | 12.5時間 | 年130万円 |
| 2,500円 | 8.1時間 | 10.0時間 | 年130万円 |
| 3,000円 | 6.8時間 | 8.3時間 | 年130万円 |
計算式:月額=時給×週時間×52÷12、年額=時給×週時間×52。
時間は小数第1位に丸めています。
表示値をそのまま勤務契約の上限として使わないでください。
130万円÷(20時間×52週)=時給1,250円です。
この単純モデルでは、時給が1,250円を上回ると、週20時間になる前に年130万円へ届きます。
これは時給から導ける関係であり、薬剤師だけに固有の現象ではありません。
時給2,500円では週10時間で年130万円ちょうどです。
通常の収入基準は「130万円未満」なので、ちょうど130万円を扶養内として扱わないようにします。
通勤手当や賞与などがあれば、同じ勤務時間でも扶養認定に用いる見込み額は変わります。
月8.8万円の加入判定では通勤手当や賞与などを除きますが、労働契約内容による扶養認定では諸手当や賞与を含みます。
加入後の保険料計算に使う報酬月額も別の扱いです。
同じ「収入」という言葉でも、加入要件の賃金と扶養認定の賃金を分けて確認します。
扶養を外れて勤務先では加入しない場合
時給2,500円の例で週10時間以上20時間未満になると、年収見込みは130万円以上になります。
ほかに勤務先での加入理由がなく、通常の扶養認定も受けられない場合は、国民健康保険などの医療保険への加入を確認します。
日本国内に住む20歳以上60歳未満で国民年金の第2号にも第3号にも該当しなければ、原則として第1号への切り替えが必要です。
第3号被保険者は、厚生年金などに加入する第2号被保険者に扶養される、20歳以上60歳未満の配偶者が対象です。
健康保険の被扶養者になった家族全員が第3号になるわけではありません。
令和8年度の国民年金保険料は月17,920円で、12か月分では215,040円です。
これは免除や納付猶予、前納割引などを考慮しない額です。
医療保険料は加入先、自治体、所得、世帯構成などで変わるため、年金保険料だけで手取りを比較しないようにします。
出典:日本年金機構の国民年金保険料案内。
勤務先の健康保険や厚生年金に加入すると、保険料負担に加えて将来の年金や休業時の保障にも違いが生じます。
「この時間帯が一番損」と一律に決めず、収入、保険料、保障、育児や介護との両立を並べて比べます。
保障の概要は日本年金機構の加入案内で確認できます。
勤務先の規模は法人全体と適用状況で確認
現在の特定適用事業所は、厚生年金の被保険者数が1年のうち6か月以上、51人以上になると見込まれる企業などです。
この人数には短時間労働者を含めず、共済組合員は含めます。
全従業員数やパート全員を単純に足した人数とは異なります。
法人では同じ法人番号の適用事業所を合計し、個人事業所では適用事業所ごとに数えます。
同じブランドの店舗でも別法人なら、そのまま合算するものではありません。
店舗だけで判断せず、本部や労務担当者に適用状況を尋ねます。
| 時期 | 企業規模要件の対象(被保険者数) |
|---|---|
| 現在 | 51人以上 |
| 2027年10月から | 36人以上 |
| 2029年10月から | 21人以上 |
| 2032年10月から | 11人以上 |
| 2035年10月から | 10人以下も対象 |
出典:日本年金機構の企業規模の数え方、厚生労働省の適用拡大予定。
企業規模要件を満たさない場合でも、労使の合意に基づく事業主の申出で、短時間労働者を対象とする任意特定適用事業所になることができます。
その場合は加入要件を満たす短時間労働者全員が対象となり、本人が好きな保険を選ぶ仕組みではありません。
したがって、50人以下だから勤務先では加入できない、とは限りません。
適用事業所で4分の3基準を満たす場合も別に確認します。
個人経営の小規模事業所では、そもそも健康保険と厚生年金の適用事業所になっているかも確認してください。
保険料調整制度は事業所と標準報酬月額を確認
日本年金機構は、2026年9月11日更新の案内で、10月から開始する保険料調整制度を説明しています。
事業主の申出により、対象者の健康保険と厚生年金の保険料負担を通算3年間軽減できる仕組みです。
事業主が軽減分を一時的に負担し、その後調整されます。
出典:保険料調整制度の案内。
本人については、短時間労働者として加入し、標準報酬月額が126,000円以下であることなどを確認します。
さらに勤務先が対象事業所であり、制度利用の申出をしている必要があります。
2026年10月以降に任意特定適用事業所になる場合や、2027年10月以降の段階的な適用拡大で対象になる場合などがあり、既存の大規模事業所で働く人に一律に適用される制度ではありません。
詳細は対象事業所と申出期限、対象となる被保険者を確認します。
| 標準報酬月額 | 1〜2年目の本人負担割合 | 3年目の本人負担割合 |
|---|---|---|
| 88,000円以下 | 25% | 37.5% |
| 98,000円 | 30% | 40% |
| 104,000円 | 36% | 43% |
| 110,000円 | 41% | 45.5% |
| 118,000円 | 45% | 47.5% |
| 126,000円 | 48% | 49% |
通常の本人負担50%から、制度の軽減割合を引いた値です。
賃金に直接かける保険料率ではありません。
賞与の保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金はこの調整の対象外です。
出典:日本年金機構の計算方法。
標準報酬月額126,000円は、報酬月額122,000円以上130,000円未満の等級です。
時給1,500円で週20時間を52週働く単純換算では月130,000円となるため、次の等級を検討する水準になります。
ただし、実際の標準報酬月額は取得時や定時決定などの算定ルールで決まります。
時給だけで制度の対象外と断定せず、勤務先に登録される標準報酬月額と対象要件を確認します。
2026年4月からの労働契約内容による扶養認定
4月1日以降、労働条件通知書などから年間収入が基準未満と見込まれ、給与以外の収入が見込まれない場合には、生計維持の条件も満たせば原則として被扶養者と扱う取扱いが始まっています。
給与以外に年金や事業収入などがある場合は、この方法をそのまま使えません。
出典:日本年金機構の契約内容による扶養認定案内。
| 対象 | 主な年間収入基準 |
|---|---|
| 通常 | 130万円未満 |
| 19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く) | 150万円未満 |
| 60歳以上、または所定の障害の状態にある方 | 180万円未満 |
同居の場合は原則として被保険者の年収の半分未満、別居の場合は被保険者からの援助額未満という生計維持の条件も確認します。
半分以上でも総合判断で認定される場合があるため、詳しい条件は被扶養者の届出案内で確認してください。
シフト制でも契約内容が明確かを確認
「シフト制だから一律に認定できない」という意味ではありません。
問題になるのは、通知書などの記載だけでは年間収入を判断できない場合です。
日本年金機構は、次の例を挙げています。
- 「被扶養者になった日」から起算した通知書上の契約期間が1年未満
- 「シフト制による」などとあり、労働時間が不明確
- 「通勤手当有」などとあり、手当額が不明確
この方法を使えないことと、被扶養者になれないことは別です。
契約内容を明確にできるか、従来の収入資料などで確認するかを、勤務先と加入する健康保険の保険者に相談します。
必要書類は、労働契約内容がわかる書類に加え、本人による給与収入のみである旨の申立てなどです。
一時的な収入増には、事業主証明を使う別の取扱いもあります。
通常の契約変更で恒常的に収入が増える場合と分け、厚生労働省の年収の壁への対応や労働契約内容による認定のQ&Aを確認します。
継続的な勤務時間の増加を、一時的な増収として扱わないようにします。
自分の勤務条件を整理する5項目
| 確認項目 | 記入する内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 1 勤務時間と日数 | 自分と通常の労働者の週時間、月日数。雇用期間と更新見込み | 勤務先 |
| 2 事業所の適用状況 | 適用事業所か、特定または任意特定か。法人全体の対象人数 | 本部や労務担当 |
| 3 扶養の収入見込み | 給与、手当、賞与、他の収入、適用される年齢別基準 | 健康保険の保険者 |
| 4 変更後の負担と保障 | 加入先、保険料、標準報酬月額、年金や休業時の保障 | 勤務先、保険者、自治体 |
| 5 手続きと確認日 | 契約変更日、扶養削除や加入の手続き、回答者と確認日 | 勤務先、保険者、年金事務所 |
相談の際は「時給、週の所定労働時間、月の所定労働日数、雇用期間を変える予定があります。
勤務先での加入対象になるか、対象となる場合の加入日と保険料の目安を確認したいです」と伝えると、確認する条件がそろいます。
勤務時間を減らすか増やすかは、保険料だけでは決められません。
家庭の事情や続けられる勤務日数も含め、現在の勤務先で調整できる条件から整理します。
働き方の比較は勤務条件をそろえてから
社会保険の加入状況が変わると、手取りと保障の両方が変わります。
そのため、別の働き方も検討する場合は、求人の年収だけでなく勤務時間、日数、雇用期間、適用状況を同じ項目で比べます。
派遣を検討する方は派遣薬剤師の契約前確認シートを参考にしてください。
現在の職場での調整が難しく、別の職場の情報も必要な場合には、直接応募先や紹介会社へ条件を照会する方法があります。
紹介会社を使うか迷う場合は、薬剤師向け転職エージェントの比較記事で情報収集の方法を整理できます。
社会保険の最終的な加入判定は勤務先などに確認します。
よくある質問
年130万円未満なら、必ず扶養に入れますか
勤務先で加入要件を満たす場合は、130万円未満でも勤務先で加入します。
勤務先で加入しない場合にも、生計維持などの扶養認定条件を確認します。
週20時間未満なら勤務先の社会保険に入りませんか
時間だけでは決まりません。
通常の労働者との時間と日数の比較や、実際の勤務状況なども確認します。
契約より実労働が継続的に増えている場合は、勤務先に加入判定の見直しが必要か尋ねてください。
シフト制だと労働契約内容による扶養認定は使えませんか
シフト制という名称だけで決まりません。
年間収入を判断できるだけの労働時間や手当額の記載があるかを確認します。
この方法が使えない場合の収入確認方法は保険者へ相談してください。
掛け持ちの収入は勤務先ごとに130万円未満ならよいですか
扶養の収入見込みは、勤務先を分けて基準未満にすればよいというものではありません。
すべての勤務先の給与などを伝え、保険者に確認します。
勤務先での社会保険の加入判定とは分けて整理してください。
参考にした一次情報
- 短時間労働者に対する適用拡大
- 資格取得要件のQ&A
- パートで働く方向けの加入案内
- 厚生労働省の社会保険加入要件
- 労働契約内容による被扶養者認定
- 被扶養者の届出と認定条件
- 厚生労働省の労働契約内容による認定Q&A
- 厚生労働省の年収の壁への対応
- 保険料調整制度の案内
- 保険料調整制度の対象事業所
- 保険料調整制度の対象者
- 保険料調整制度の計算方法
- 令和8年度の国民年金保険料
- 厚生労働省の公的年金制度の体系
- 短期の雇用契約に関するQ&A
2026年9月13日に公表資料を確認しました。
時給別の数値は本文に示した条件による編集部の試算です。
個別の加入判定や扶養認定は、勤務先、健康保険の保険者、年金事務所に確認してください。

