薬剤名を入力して候補を絞ったあと、どこまで読んで選んでいますか。
名称類似による取り違えは、商品名同士だけでなく、一般名同士、一般名と商品名の間でも起きています。
検索文字数を増やして候補を絞り、選択時には名称全体を照合することが基本です。
そのうえで、規格、剤形、用法、患者への説明内容が処方意図と合うかを確認します。
薬局で点検できることを、次の7項目に整理しました。
確認日:2026年9月8日。
もくじ
名称類似による取り違えで確認する7項目
| 項目 | 確認すること | 現場での工夫 |
|---|---|---|
| 1. 検索方式 | 前方一致か部分一致か。何文字で検索できるか | 取扱説明書やベンダーの回答で確認し、スタッフ間で共有する |
| 2. 名称全体 | 入力元と選択した薬剤名が最後まで一致するか | 省略表示を展開し、似ている部分以外も読む |
| 3. 規格と剤形 | 含量、単位、剤形、投与経路が合うか | 名称と規格を組み合わせて照合する |
| 4. 成分と識別記号 | 配合成分、塩、エステル、末尾の記号を読み落としていないか | 配合剤はすべての成分を確認し、記号も省略しない |
| 5. 処方意図 | 薬効、用法、変更理由と患者情報が整合するか | 違和感があれば処方元へ確認する |
| 6. 採用品とシステム | 目的の薬が候補に出ない理由は何か。照合機能はどこまで確認するか | 似た候補で代用せず、採用状況と検索条件を確かめる |
| 7. 記録と共有 | 自局で注意する組み合わせと確認手順を共有しているか | 調剤頻度の低い薬も含め、棚表示と朝礼資料を見直す |
まずは朝礼で、検索方式と「候補を選ぶ前に名称全体を照合する手順」が共有されているかを確認してください。

年報にみる名称類似の報告と、数字の読み方
日本医療機能評価機構の2024年年報では、調剤に関するヒヤリ・ハット事例は19,304件でした。
発生要因の「医薬品の名称類似」は3,866件、「医薬品や包装の外観類似」は1,606件です。
発生要因は複数回答で、回答の延べ数は68,623件でした。
名称類似の報告数は外観類似の約2.4倍ですが、同じ事例で両方が選ばれることもあります。
この比較は、事故の発生率や、棚の配置を変える対策の効果を表すものではありません。
薬剤を取り出す場面と、入力する場面の両方を点検する材料として読みます。
出典:2024年年報の図表Ⅱ-3-7、Ⅱ-3-15。
全国のすべての調剤を分母にした集計ではありません。
商品名の類似を先頭の文字数だけで判断しない
PMDA医療安全情報No.69(2024年11月)には、ブランド名同士の類似例が16組掲載されています。
ここでいうブランド名は製薬企業が命名する名称で、販売名には剤形や含量などが加わります。
掲載された16組について、先頭から連続して一致する文字数を数え直すと、次のようになりました。
これは本記事の再集計であり、PMDAが公表した危険度の順位ではありません。
| 先頭の一致文字数 | 組数 | 掲載例 |
|---|---|---|
| 3文字 | 1組 | アクトス/アクトネル |
| 2文字 | 8組 | レスプレン/レスリン |
| 1文字 | 5組 | ロコルナール/ローコール |
| 0文字 | 2組 | プラビックス/ラスビック |
先頭3文字が一致するのは1組でした。
ただし、これを根拠に「ほかの15組は似ていない」「入力文字数を増やしても効果がない」とは判断できません。
先頭一致の数え方では、語中や語尾、音、見た目の類似を評価していないためです。
商品名の全文を読むことに加え、一般名と対応づけて確認する必要があります。
同じ薬効の薬同士でも、患者ごとの注意点が一致するとは限りません。
検索文字数を増やし、表示された名称を最後まで照合する
日本医療機能評価機構の「共有すべき事例2024年No.11」には、クロルマジノン酢酸エステル錠25mgの処方を、クロルプロマジン塩酸塩錠25mgと入力した事例があります。
規格と「クロル」の3文字で検索したところ、両方が候補に表示されていました。
報告薬局は、4文字以上で検索する運用に見直しています。
同資料の解説では、検索文字数を増やすことの有用性と、候補の名称を全体で確認する必要性が示されています。
4文字はこの薬局の改善例であり、すべての名称を区別できる共通の基準ではありません。
同じ資料には、ラスビック錠75mgをプラビックス錠75mgと取り違えた事例もあります。
調剤する頻度の高い薬を思い浮かべて読み違えており、規格や用法が同じことも背景として挙げられています。
入力時だけでなく、取りそろえと監査でも処方箋に戻って照合します。
出典:共有すべき事例2024年No.11の事例1、事例2。
上記は公表時点の事例紹介です。
前方一致と部分一致、採用状況を確かめる
| 方式 | 基本的な候補の出方 | 確認点 |
|---|---|---|
| 前方一致 | 入力した文字で始まる名称を検索する | 先頭が共通する薬が複数残らないか |
| 部分一致 | 入力した文字を途中に含む名称も検索する | 探している薬以外の候補を選んでいないか |
実際のシステムには、読み仮名、略称、一般名からの候補表示などが組み合わされている場合があります。
自局の設定は取扱説明書やベンダーに確認します。
PMDA No.69には、カルタン錠を探して「カルタ」と入力した際、目的の薬が非採用で、ビカルタミド錠が候補となった処方事例が掲載されています。
この事例は「非採用薬が候補に出た」という説明ではありません。
目的の薬が出ないときに、似た文字を含む別の候補を選んでしまった事例です。
目的の薬が見つからなければ、名称、検索条件、採用状況を確認します。
採用品だけに絞った表示を使う場合も、持参薬や非採用薬をどう確認するかを決めておく必要があります。
候補にあること自体は、処方として適切である根拠にはなりません。
一般名、配合成分、識別記号を省略しない
一般名では、途中の文字だけでなく、塩やエステルを含めた名称を確認します。
配合剤ではすべての成分を照合し、販売名にある識別記号、規格、剤形も読み落とさないようにします。
PMDA医療安全情報No.51改訂版(2024年11月)は、似た一般名のほか、同じ有効成分でも効能や用法が異なる製剤に注意を促しています。
有効成分が同じという理由だけで、代替できるとは判断しません。
処方監査では、採用製品の電子添文にある販売名、一般的名称、効能又は効果、用法及び用量を照合します。
薬剤変更の理由や患者情報と合わない点があれば、処方元へ確認します。
確認項目と伝え方は薬剤師の疑義照会実務ガイドで整理しています。
同資料は、バーコード認証や電子処方箋などの活用と、処方箋、お薬手帳、患者情報の確認を組み合わせる対策を示しています。
バーコードが照合している情報が何かを把握し、入力元の誤りや処方意図まで確認できると考えないことが必要です。
出典:PMDA医療安全情報No.51改訂版。
電子添文の調べ方はPMDA添付文書検索の使い方を参照してください。
安全情報を定期的に確認するために
一次情報の更新はPMDAメディナビやPMDAの掲載一覧から確認できます。
日々の医療情報を整理する補助として、m3.comの特徴と薬剤師向けの使い方も紹介しています。
個別の薬剤の判断では、最新の電子添文に戻って確認してください。
朝礼で共有するメモと、見直しの担当を決める
注意する薬剤名を並べるだけでなく、どの場面で何を照合するかを書き添えます。
次の表は、本記事が提案する薬局内の共有メモです。
| 記録欄 | 書く内容 |
|---|---|
| 注意する組み合わせ | 正式な販売名、一般名、規格、剤形 |
| 間違えかけた場面 | 処方入力、取りそろえ、監査、持参薬確認など |
| 候補の表示条件 | 入力した文字と規格、検索方式、採用状況 |
| 確認する違い | 名称の異なる部分、配合成分、識別記号、処方意図 |
| 対策と担当 | 棚の表示、照合手順、周知の担当者、次の見直し時期 |
自局で扱う組み合わせから優先して整理しつつ、調剤頻度の低い薬や、新規採用、持参薬で接する可能性のある薬も確認対象に含めます。
「両方を普段扱っている薬だけ」に絞ると、まれに扱う薬を見落とすおそれがあります。
PMDAの製薬企業からの取り違え防止のお知らせも確認してください。
2026年8月には「ロイコン」と「ロイコボリン」の注意喚起が更新されており、2024年の一覧だけで点検を終えないことが必要です。
教育を担当する薬剤師は、更新情報を確認する人、手順を直す人、新しく入ったスタッフへ伝える人を決めておくと、個人の記憶に依存する作業を減らせます。
安全情報を具体的な手順に変えた経験は、後輩指導や管理業務を振り返る材料にもなります。
共有の進め方は薬局の朝礼メモ、経緯の整理はヒヤリハット報告書の書き方を参照してください。
事業への報告は、参加状況と報告方法を確認したうえで行います。
院内や薬局内の教育資料に、患者を特定できる情報を不要に転記しないようにします。
交付後に取り違えへ気づいた場合は、患者の状況確認と関係者への連絡を優先します。
対応の流れは調剤事故と過誤の初動対応フローにまとめています。
よくある質問
3文字検索を4文字検索に変えれば十分ですか
文字数を増やすと候補を絞りやすくなりますが、必要な文字数は名称と検索方式によって変わります。
候補が一つでも、名称全体と規格、剤形を入力元と照合してください。
一般名処方を避ければ取り違えは防げますか
商品名同士や、一般名と商品名の間でも取り違えが報告されています。
一般名か商品名かだけで安全性を判断せず、それぞれを正式な名称に対応づけて確認します。
薬剤棚を離して置く対策は役立ちますか
取り出す段階での対策の一つとして検討できます。
棚の注意表示や配置と、入力時の全文照合、監査時の処方意図の確認を組み合わせます。
各対策で確認できる範囲を薬局内で共有してください。
似た薬剤名を無料で検索できますか
JAPICの医薬品類似名称検索システムには、無料の一般利用者向け「既存医薬品名称検索」があります。
任意の新規名称を含む検索は有料の登録利用者向け機能で、別の区分です。
検索結果を自局の点検の参考にし、結果に出ないことを取り違えが起きない保証とは考えないようにします。
名称全体の照合を、薬局の確認手順に組み込む
検索で候補を絞る作業と、候補が正しい薬かを照合する作業を、それぞれ行います。
名称全体、規格、剤形、配合成分、識別記号を確認し、患者情報や処方変更の理由と合わない点を拾います。
朝礼では、注意する薬の組み合わせと一緒に「どの画面、どの工程で確認するか」を共有してください。
参考資料
- PMDA医療安全情報No.69(2024年11月)
- PMDA医療安全情報No.51改訂版(2024年11月)
- 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業2024年年報
- 共有すべき事例2024年No.11
- 製薬企業からの医薬品の安全使用に関するお知らせ
- JAPIC医薬品類似名称検索システム
過去の事例は当時の記載に基づきます。
現在の調剤や処方監査では、採用製品の最新の電子添文と公表資料を確認してください。


