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薬局の災害対応シート|報告先・処方箋なし対応・BCPを8項目で確認【2026年防災週間】

災害対応のチェックリストを確認する薬剤師と、非常灯、保冷ボックス、お薬手帳

災害が起きたあと、薬局や病院薬剤部が最初に決めるべきことは、在庫の確認だけではありません。誰が判断して、誰に報告し、処方箋を持たない患者さんにどこまで対応してよいのかを整理する必要があります。この3つを発災後に考え始めると、判断が遅れやすくなります。

2026年の防災週間は8月30日(日)から9月5日(土)まで、防災の日は9月1日(火)です。平時の手順を見直す機会にしやすい時期です。

厚生労働科学研究の研究班がまとめた改訂版『薬剤師のための災害対策マニュアル』(令和6年3月)を軸に、薬局と薬剤部が確認しておく8項目と、薬局BCPの作り方を整理します。

この記事の結論

災害時の薬剤師の動きは、次の8項目を上から順に確認する形で整理できます。

  1. 安否確認と指揮系統:誰が判断し、誰に報告するかを先に決める
  2. 被災状況の報告:地域薬剤師会(支部)へ。機能しなければ都道府県薬剤師会へ直接
  3. 業務継続の可否判断:ライフライン、設備、人員、在庫の4点で見る
  4. 処方薬を失った患者さんへの対応:医師の指示による調剤と、正当な理由による販売を分けて確認
  5. 服薬情報の確認手段:お薬手帳、マイナポータル、災害時医療情報閲覧機能
  6. 要注意在庫の管理:冷所保管医薬品のコールドチェーンと、麻薬、向精神薬の盗難防止
  7. 在宅患者と特別な治療を受ける患者さんへの連絡:平時のリスト化が前提
  8. 救護活動への参加:個人で被災地に向かわず、所属薬剤師会の指示に従う

このうち安否確認と指揮系統、報告先、患者さんのリスト化、救護活動への参加ルートの4つは、平時に決めておけば災害時に迷わずに済む項目です。

薬局の災害対応で確認する8項目。指揮系統、報告先、継続判断、処方箋なし対応、服薬情報、要注意在庫、患者リスト、救護活動
薬局の災害対応は、8項目を平時に決めておくと初動を整理しやすくなります。

災害時の薬剤師の動きは「体制づくり」と「薬事サポート」に分かれます

改訂版『薬剤師のための災害対策マニュアル』は、災害時の行動を大きく2段階でとらえています。

1段階目が薬事提供体制の確立(Pharmaceutical Management)です。災害医療で共通言語として使われるCSCA、つまり指揮と連携(Command & Control)、安全(Safety)、コミュニケーション(Communication)、評価(Assessment)の4つを整えます。

2段階目が薬事サポートの実践(Pharmaceutical Support)です。こちらは3つのPで表され、薬事トリアージ(Pharmaceutical Triage)、準備・調剤(Preparation)、供給(Provide Pharmaceuticals)で構成されます。

順番が大事です。体制ができていないところに支援だけを積み上げても、現場は混乱します。まずCSCA、そのあとPPPという流れを、図で押さえておきます。

図1:災害時の薬剤師の動き(CSCA → PPP)

STEP 1 薬事提供体制の確立(CSCA)

C:指揮と連携
誰の指示で動き、誰に報告するか
S:安全
自分・現場・患者の安全確保
C:通信
複数の連絡手段を確保する
A:評価
ヒト・モノ・情報を把握する

STEP 2 薬事サポートの実践(PPP)

薬事トリアージ
対応の優先順位を決める
準備・調剤
災害時の調剤と服薬指導
供給
医薬品・資材・情報を届ける

改訂版『薬剤師のための災害対策マニュアル』(令和6年3月)の枠組みをもとに作成

発災からの時間で、やることは入れ替わります

同じ「災害対応」でも、発災直後と3日目では優先順位が変わります。時間軸で並べておくと、当日に迷いにくくなります。

次の表はマニュアルの各項目を実務上の目安として並べたものです。災害の種類、被害状況、地域の指示によって実施時期は変わります。

時間帯 主にやること つまずきやすい点
発災直後
(〜1時間)
自分と従業員の安全確保/待合の患者さん・家族への声かけと状況説明/必要なら避難誘導 在庫の片付けを先にやってしまう。人の安全が先です
数時間以内 従業員・実習生・家族の安否確認/通信手段の動作確認/被災状況を地域薬剤師会へ報告 連絡先一覧が紙で残っていない。停電で電話帳が見られなくなります
当日中 業務継続の可否を開設者が判断/ライフライン・設備・在庫の確認/麻薬・向精神薬等の保管状況確認 従業員の帰宅可否の判断。薬局内で待機したほうが安全な場合もあります
1〜3日目 処方薬を失った患者さんへの対応/在宅、透析、在宅酸素の患者さんへ連絡/近隣医療機関の診療状況確認/卸へ不足医薬品を依頼 卸への過度な要求。災害拠点病院が優先される場合があります
3日目以降 業務再開の見通しを地域へ広報/救護活動・避難所支援への参加/災害支援薬剤師の受け入れ準備 支援に出たいあまり、自局の業務が回らなくなること

マニュアルでは、薬局・薬剤部が備える在庫の目安を「最低限3日分程度」としています。防災用品も「自立して3〜4日間過ごせるだけの量」が目安です。ただし、必要量は地域の被害想定や供給経路で変わります。自施設のBCPに合わせて見直してください。

①安否確認と指揮系統は、平時に紙で決めておきます

マニュアルが薬局に対して「直ちに取り組むべきこと」として挙げているのは、次のような内容です。

  • 災害時の連絡方法、集合場所、休日・夜間に緊急参集する人をあらかじめ決めておく
  • 薬局内の対応責任者を決めておく
  • 薬剤師個人で出動する場合に備え、開設者から震災時の出動許可をあらかじめ得ておく
  • 安否確認の体制をつくっておく

見落としやすいのは3つ目です。「支援に行ってよいか」を災害が起きてから相談すると、判断が止まりやすくなります。あらかじめ許可を得ておくルールにしておくと、迷いが減ります。

また、開設者と連絡が取れない場合の扱いも決めておきます。マニュアルでは、被災状況により開設者と連絡が取れないときは、あらかじめ決めておいた緊急参集者のうち移動可能な人が原則全員参集し、その中から対応責任者を選ぶ、という考え方が示されています。

②報告先は「地域薬剤師会 → 都道府県薬剤師会」の順です

被災した薬局は、自局の状況を抱え込まずに報告します。報告する内容は次のとおりです。

  • 薬局(店舗)の被災状況(平常・支障・危険など)
  • 業務継続の状況、または再開の予定

報告先は地域薬剤師会(支部薬剤師会)です。地域薬剤師会自体が機能していない場合は、上位組織である都道府県薬剤師会へ直接連絡します。この「上に飛ばしてよい」というルールを知らないと、連絡が取れないまま孤立します。

報告した情報は、都道府県の保健医療福祉調整本部などに集約され、どこへ人や医薬品を送るかの判断材料になります。1薬局からの報告が、地域全体の支援配分につながります。

③業務継続の可否は、4つの資源で判断します

開設者が業務継続の可否を判断するとき、マニュアルは「情報管理」と「資源管理(ヒト、モノ)」の2軸で確認事項を挙げています。実務では、次の4つに整理すると見落としが減ります。

資源 確認すること
ライフライン 通信・電気・水の状況。停電時は非常用電源(自家発電装置、蓄電池、乾電池)と、冷所保管医薬品用の保冷剤の有無を確認します
構造・設備 建物の安全性、調剤機器・器具の状況、薬包紙や薬袋などの消耗品の残量
ヒト 出勤可能な従業員の人数。道路・交通事情から帰宅や翌日以降の出勤の可否も判断します
モノ(医薬品) 使用可能な医薬品、不足医薬品、汚損・破損の有無、冷所保管医薬品のコールドチェーン、麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒物・劇物の保管状況

停電時の冷所保管医薬品は、平時の温度逸脱対応の延長で考えられます。判断の目安は冷所保管医薬品の運用と患者説明で整理しています。患者さん宅の保管についてはインスリン製剤の保管方法もあわせて確認しておくと、避難時の説明がしやすくなります。

④処方薬を失った患者さんへの対応は、法令上の根拠を先に押さえます

ここが災害時にいちばん判断に迷うところです。整理して押さえておきます。

「医師の指示に基づく調剤」と「処方箋なしでの医療用医薬品の販売」は同じ手続きではありません。災害時の事務連絡、医師への連絡可否、薬の区分を確認し、どの根拠で対応したかを記録します。

処方箋医薬品には「正当な理由」の規定があります

処方箋医薬品は、処方箋の交付を受けた人以外へは、正当な理由がなければ販売(授与を含む)できません。この「正当な理由」に何が当たるかを示しているのが、厚生労働省の通知「薬局医薬品の取扱いについて」(平成26年3月18日 薬食発0318第4号)です。

この通知では、正当な理由の第一に次の場合が挙げられています。

大規模災害などで受診や処方箋の交付が難しいときに、患者さんへ必要な処方箋医薬品を販売する場合です。

出典:厚生労働省「薬局医薬品の取扱いについて」(平成26年3月18日 薬食発0318第4号)第1の1(2)①

つまり、大規模災害時等は、処方箋医薬品を処方箋なしで販売できる「正当な理由」の一例として平時から通知に列挙されています。これは処方箋に基づく調剤とは別の取扱いです。ただし「大規模災害時等」「受診が困難」といった判断は、個別の状況によります。自局だけで決めず、地域薬剤師会や保健所の指示、そのときに発出される事務連絡を確認してください。

この通知は、災害時の「正当な理由」による販売でも、次の点を求めています。

  • 可能な限り、医師等による薬局への販売指示に基づく
  • 他の薬局からの購入または譲受けの状況を確認し、必要最小限の数量にする
  • 品名、数量、販売日時などの販売記録を作成し、2年間保存する
  • 薬剤師が必要最小限を分割し、服薬指導と法定表示事項を記した文書などを添付する

「災害だから通常の確認と記録を省いてよい」という規定ではありません。患者さんの継続薬、併用薬、アレルギー、受診可能性を確認し、その災害で発出された事務連絡に沿って対応します。

災害ごとに事務連絡が出ます

実際の運用は、災害のたびに厚生労働省から事務連絡が発出されます。マニュアルの資料編には、阪神・淡路大震災から令和6年能登半島地震までの通知が一覧化されており、次のような論点が繰り返し扱われています。

  • 被保険者証を提示できない場合の保険診療・保険調剤の取扱い
  • 通常の処方箋様式でない、医師の指示などを記した文書を受け付けた場合の取扱い
  • 患者さんが処方箋を持参せずに調剤を求めてきた場合の取扱い
  • 処方箋医薬品のうち、医療用麻薬・向精神薬の取扱い
  • 医療用麻薬の県境移動の取扱い
  • 病院と診療所の間、地方公共団体と薬局の間での医薬品の融通
  • 営業時間や薬剤師数の変更、管理薬剤師が支援活動に行く場合の兼務許可の取扱い

医療用麻薬や向精神薬の提供、医療用麻薬の県境移動などの特例的な取扱いは、災害ごとの事務連絡で確認します。過去の震災でこう扱われたから今回も同じ、と先回りして判断するのは避けてください。通知の探し方は厚労省の告示・通知・疑義解釈の探し方にまとめています。平時の麻薬の帳簿と廃棄の考え方は薬局の麻薬廃棄実務を参照してください。

口頭やメモの処方指示は、後日の処方箋発行までがセットです

マニュアルでは、業務継続が可能な薬局の対応として、処方薬を失った患者さんに対し、主治医の指示の下で調剤と服薬指導を行うことが挙げられています。そのうえで、処方指示が口頭やメモの場合は、後日に処方箋の発行が必要と明記されています。

マニュアルは医療救護所での処方・調剤について、災害の超急性期は診療録に記載された処方に基づいて調剤が行われることが多いとしたうえで、処方箋を用いた処方および調剤が望ましいと記しています。急いでいる場面ほど、いつ・誰の指示で・何を渡したかの記録が後から効いてきます。疑義照会や記録の型は薬剤師の疑義照会 実務ガイドで整理しています。

図2:処方箋を持たない患者さんが来局したときの確認順
1.服薬内容を確認できるか
お薬手帳/薬剤情報提供文書/マイナポータル/災害時医療情報閲覧機能

2.主治医・近隣医療機関に連絡が取れるか
取れる → 指示を受けて調剤・服薬指導

3.連絡が取れない場合
地域薬剤師会・保健所へ確認。そのとき発出されている事務連絡の内容に沿って判断します

4.記録を残す
誰の指示か/何を何日分渡したか/後日の処方箋発行の要否。口頭・メモ指示は後日の処方箋発行が必要です

※判断は個別の状況によります。自局だけで結論を出さず、必ず地域の指示を確認してください

⑤服薬情報を確認する手段は、3つ用意しておきます

患者さんが薬やお薬手帳を持ち出せない場合に備え、確認手段は複数用意しておきます。

手段 内容 注意点
お薬手帳
薬剤情報提供文書
患者さん自身が持ち出せる情報。電子版(eお薬手帳)も含みます 持ち出せるかは平時の啓発次第です
マイナポータル 患者さんのスマートフォンから、診療・薬剤情報や特定健診データを表示。PDF・CSVでの保存も可能です マイナンバーカードと4桁の暗証番号、通信環境が必要です
災害時医療情報
閲覧機能
オンライン資格確認等システムの「緊急時医療情報・資格確認機能」に含まれる機能。マイナンバーカードがなくても、氏名・生年月日・性別・住所等で薬剤情報・診療情報・特定健診情報を閲覧できます 資格確認端末からのみ利用できます。普段使うレセプトコンピュータからは利用できません

3つ目の災害時医療情報閲覧機能(災害時モード)は、被災地域の医療機関と薬局を対象に「緊急時医療情報・資格確認機能」がアクティブ化されることで使えるようになります。対象となる医療機関と薬局の範囲、利用期間は、厚生労働省から発出される事務連絡で示されます。操作は資格確認端末から行い、原則として患者本人から口頭などで同意を得たうえで、医療提供の目的に限って利用します。患者本人から同意を得ることが難しい場合の扱いは、利用規約と災害ごとの事務連絡に従います。利用状況はログで管理されます。平時に、権限を付与したアカウントと利用手順を確認しておいてください。

電子処方箋を導入している薬局では、平時のアラート対応と同様に、確認した内容と判断の記録を残す運用が前提になります。記録の型は電子処方箋アラート対応の5ステップを参考にしてください。

⑥冷所保管医薬品と麻薬、向精神薬は、別枠で見ます

被災後の在庫確認では、次の2つを一般の在庫と分けて扱います。

冷所保管医薬品は、停電でコールドチェーンが切れます。平時から保冷剤を確保し、非常用電源の対象に冷蔵庫を含めておきます。移送する場合も、移動中の温度管理が必要です。

麻薬、向精神薬、覚醒剤原料、毒物、劇物は、保管状況の確認と盗難防止が優先されます。マニュアルでは、業務継続が困難で薬局を閉鎖する場合、薬局から運び出す医薬品(麻薬、向精神薬等)を選別し、あらかじめ定めた盗難防止対策をとることが示されています。

他施設へ医薬品や衛生材料を提供する場合は、供与日・品目・数量・使用期限を記入したリストを作成します。あとから流れを追えるようにしておくためです。

⑦在宅患者と特別な治療を受ける患者さんは、平時にリスト化しておきます

災害時に真っ先に連絡が必要になるのは、服薬が途切れると危険な患者さんです。マニュアルは、平時の準備として次のような患者さんのリスト化を挙げています。

  • 在宅患者
  • 透析、在宅酸素など特別な治療を受けている患者
  • 服薬継続が必要な患者(インスリン、心疾患治療薬、抗HIV薬など)

リストを作るだけでは足りません。医療機関や薬局が機能しなくなった場合の対処方法と緊急連絡先を、あらかじめ患者さんに説明しておくことまでが平時の準備です。

患者さんへの啓発として、マニュアルは次の2点も挙げています。

  • 災害時に持ち出せるよう、薬剤情報提供文書を医薬品と一緒に保管してもらう
  • 慢性疾患の患者さんを中心に、お薬手帳などで自ら服薬管理を行うことを勧める

入院時の持参薬確認と考え方が重なる部分もあります。確認の型は持参薬鑑別の実務マニュアルが参考になります。

⑧救護活動は、個人で被災地に向かわないのが原則です

ここは善意が裏目に出やすいところです。マニュアルには、自らが被災していない薬剤師が救護活動を行う場合について、次のように書かれています。

  • 個人的に被災地へ出動するのではなく、所属の薬剤師会に問い合わせ、その指示に従うことを原則とする
  • 個々の薬剤師がバラバラに被災地へ出動すると、受け入れ側にかえって負担や迷惑をかけることになりかねない

参加する場合の準備も具体的です。家族の同意と薬局開設者の許可を得ること、都道府県薬剤師会または都道府県病院薬剤師会に必要事項を登録して待機すること、安全靴・ヘルメット・ゴーグル・ヘッドライト・マスクなどの個人防護具を準備することなどが挙げられています。

また、被災地の安全が確認できないときは救護活動を慎む、という記載もあります。支援者自身の安全確保が前提です。

薬局BCPは、8つのステップで作れます

災害対策マニュアルとBCP(業務継続計画)は目的が違います。マニュアルの主な目的が「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」であるのに対し、BCPはそこに「いかに業務を継続するか」を加えたものです。

改訂版マニュアルの資料編には、東京都の手引きをもとにしたBCP作成の8ステップが示されています。

STEP 項目 内容
1 基本方針の策定 災害時に何を優先するかを明確にします
2 被害の想定 どの規模の被害を前提に業務継続を検討するかを決めます
3 業務の把握 薬局業務の全体像を整理し、災害時に継続する優先業務を選びます
4 業務資源の把握 優先業務の実施に必要なものを洗い出します
5 リスクの評価 災害時に業務資源が使えるかを、被害想定に照らして評価します
6 業務継続目標の設定 発災後の時間経過の中で、どのサービスレベルを目指すかを決めます
7 対策の検討 目標を実現するための事前対策を検討します
8 BCP文書の作成 危機対応計画や教育訓練計画を含めて文書化します

出典:改訂版『薬剤師のための災害対策マニュアル』資料1-2(原典:東京都福祉保健局『災害時の薬局業務運営の手引き』平成25年3月)

ステップ3で優先業務を絞り込むところが、BCP作成の要点です。すべての通常業務を続ける前提では、優先順位を決められません。自施設の被害想定に照らし、限られた人員と設備で何を残すかを決めます。

あわせて、マニュアルは平時の準備として、患者情報等データの定期的なバックアップ、大型備品の固定、照明器具の落下防止、重要書類の損傷・焼失・水損への対策も挙げています。年1回程度の防災訓練の実施も推奨されています。

災害時の通知を追う準備も、平時に整えます

災害時の取扱いは、その都度発出される厚生労働省の事務連絡が根拠になります。保険調剤の扱い、麻薬の県境移動、営業体制の特例など、判断に直結する内容が短期間で更新されます。

通知や医療ニュースを継続して追える仕組みを、平時に持っておくことが実務の差になります。情報源の選び方の一例として、医療情報サービスの特徴を比較してみてください。

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よくある質問

災害が起きたら、処方箋がなくても薬を渡してよいのですか?

条件を満たす場合は、処方箋医薬品を処方箋なしで販売できることがあります。厚生労働省通知は、大規模災害などで受診または処方箋の交付が難しい場合を「正当な理由」の一つとして示しています。ただし、処方箋に基づく調剤とは別の取扱いです。必要最小限の数量、販売記録、服薬指導などの要件を守り、地域薬剤師会や保健所の指示と、その災害で発出された事務連絡を確認してください。

医療用麻薬も同じように扱えますか?

同じ扱いとは考えないでください。処方箋なしでの医療用麻薬・向精神薬の提供や、医療用麻薬の県境移動は、過去の震災では災害ごとに個別の事務連絡が発出されて対応されています。恒久的に決まった手順ではないため、必ずそのときの通知を確認してください。

お薬手帳がない患者さんの服薬内容は、どうやって調べますか?

被災地域の医療機関と薬局で「緊急時医療情報・資格確認機能」がアクティブ化されている場合、災害時医療情報閲覧機能(災害時モード)により、マイナンバーカードがなくても氏名、生年月日、性別、住所等で薬剤情報等を閲覧できます。ただし、操作は資格確認端末からのみです。この機能が使えない場合は、患者さんのスマートフォンからマイナポータルで服薬履歴を確認する方法もあります。

在庫は何日分あればよいですか?

改訂版マニュアルでは、薬局は最低限3日分程度の医薬品・薬剤関連資材の在庫を持つよう努めることが示されています。防災用品については、自立して3〜4日間過ごせる品目・量が目安とされています。地域の被害想定によって必要量は変わるため、BCPの被害想定と合わせて決めてください。

被災地に支援に行きたいときは、どうすればよいですか?

個人で被災地に向かうのではなく、所属の薬剤師会に問い合わせて指示に従うのが原則です。事前に家族の同意と薬局開設者の許可を得ておき、都道府県薬剤師会または都道府県病院薬剤師会に必要事項を登録して待機する流れになります。

まとめ

災害対応で薬剤師が迷うポイントは、事前にかなりの部分を減らせます。今日の内容を、平時にやっておくことの順番として整理します。

  1. 指揮系統:緊急参集者、対応責任者、開設者と連絡が取れない場合のルールを紙で決めます
  2. 報告先:地域薬剤師会が第一。機能しない場合は都道府県薬剤師会へ直接連絡します
  3. 継続判断:ライフライン・構造設備・ヒト・モノの4点で見ます
  4. 処方箋なし対応:医師の指示による調剤と、正当な理由による販売を分け、災害ごとの事務連絡で確認します
  5. 服薬情報:お薬手帳、マイナポータル、災害時医療情報閲覧機能(資格確認端末から)の3ルート
  6. 要注意在庫:冷所保管医薬品のコールドチェーンと、麻薬、向精神薬の盗難防止を別枠で確認します
  7. 患者リスト:在宅、透析、在宅酸素、服薬継続が必要な患者さんをリスト化し、緊急連絡先を説明しておきます
  8. 救護活動:個人で行かず、所属薬剤師会の指示に従います

すべてを一度に整えるのは大変です。まずは指揮系統と報告先を紙1枚にまとめ、薬局の見える場所に貼るところから始めてみてください。停電してスマートフォンが使えなくなったとき、その紙1枚が効いてきます。

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参考にした情報源

※本記事は薬剤師と医療従事者向けの情報整理です。災害時の具体的な取扱いは、そのときに発出される厚生労働省の通知、事務連絡、および地域の薬剤師会と行政の指示が優先されます。個別の判断は必ず一次情報をご確認ください。

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