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COPD吸入薬の処方監査|適応・ICS上乗せ・デュピルマブを7項目で確認【2026年版】

COPD吸入薬の処方を確認する薬剤師と処方監査7項目

COPDの吸入薬は、喘息の吸入薬と成分やデバイスが重なります。一方、同じブランドでも規格によって適応が異なる製品があり、処方監査では疾患名・規格・成分を分けて確認する必要があります。

たとえば同じ「テリルジー」でも、100エリプタにはCOPDの適応がありますが、200エリプタにはありません。同じ3成分配合でも、エナジアは気管支喘息だけの適応です。成分名だけを見て「3剤入っているから大丈夫」と流してしまうと、適応外の処方をそのまま通してしまうことになります。

この記事では、COPDの吸入薬を7項目で確認する順番を整理します。あわせて、2025年3月にCOPDの適応が追加されたデュピルマブ(デュピクセント®)について、最適使用推進ガイドラインで求められる確認事項もまとめました。

この記事の結論

COPD吸入薬の監査は、次の7項目を上から順に見ていくと漏れが減ります。

  1. その規格にCOPDの適応があるか/同系統の重複投与がないか
  2. ICSが入っているなら、その理由を説明できるか
  3. 1日の吸入回数が製剤と合っているか
  4. デバイスを患者さんが操作できるか
  5. 抗コリン薬の禁忌・注意に該当しないか
  6. 増悪時のレスキューが手元にあるか
  7. デュピルマブなら最適使用推進ガイドラインの6要件を満たすか

COPDの吸入薬は「気管支拡張薬が土台」という骨格を先に押さえる

喘息の薬物療法は吸入ステロイド(ICS)が土台です。一方でCOPDは、長時間作用性の気管支拡張薬(LAMA・LABA)が土台になります。この違いが、そのまま監査の視点の違いにつながります。

GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)の2026年版レポートでは、Group Eの初期治療はLABA+LAMAを優先し、COPDにLABA+ICSの2剤を用いることは推奨していません。ICSの適応がある場合はLABA+LAMA+ICSを優先する考え方です。なお、治療選択は症状、増悪歴、血中好酸球数、喘息合併、既治療への反応を踏まえて個別に判断します。

ただし、治療を一律の段階式で捉えると、患者背景や既治療への反応を見落とします。薬局では、次の7項目を「治療順」ではなく「確認順」として使うのが安全です。

COPD吸入薬の処方監査で確認する適応・ICS・回数・デバイス・禁忌・レスキュー・デュピルマブ
図:COPD吸入薬の処方監査7項目。治療順ではなく確認順として使います。

まず見るのは「その規格にCOPDの適応があるか」です

ここがCOPD監査でいちばん事故が起きやすいところです。同じブランド名でも、規格によって適応が違う製剤があります。

主な吸入薬の適応を一覧にしました。「気管支喘息のみ」の列に印がある製剤は、COPD患者さんへの処方だと疑義照会の対象になります。

製品名 構成 気管支喘息 COPD
テリルジー100エリプタ® ICS+LAMA+LABA
テリルジー200エリプタ® ICS+LAMA+LABA ×
ビレーズトリ エアロスフィア® ICS+LAMA+LABA ×
エナジア® ICS+LAMA+LABA ×
レルベア100エリプタ® ICS+LABA
レルベア200エリプタ® ICS+LABA ×
シムビコート タービュヘイラー® ICS+LABA
アノーロ エリプタ® LAMA+LABA ×
ウルティブロ 吸入用カプセル® LAMA+LABA ×
スピオルト レスピマット® LAMA+LABA ×
ビベスピ エアロスフィア® LAMA+LABA ×

※各製剤の電子添文(2026年8月時点)に基づく整理です。適応や規格は変更されることがあるため、実務では必ず最新の電子添文をご確認ください。

この表で押さえておきたいのは、次の3つのパターンです。

  • 同じブランドで規格違い:テリルジー、レルベアは100にCOPD適応があり、200は気管支喘息のみです
  • 3剤配合でもCOPD適応がない:エナジアは気管支喘息の薬剤です
  • 表に挙げたLAMA+LABA配合剤はCOPD適応:アノーロ、ウルティブロ、スピオルト、ビベスピには、いずれも喘息の適応がありません

喘息とCOPDを併せ持つ患者さん(ACO:喘息とCOPDのオーバーラップ)では、この使い分けがさらに悩ましくなります。処方の意図が読み取れないときは、病名と経過を確認したうえで処方医に照会するのが確実です。

あわせて見たい:同系統の重複投与

配合剤の電子添文には、他の長時間作用性抗コリン薬・長時間作用性β2刺激薬、またはこれらを含む配合剤と同時に使用しない旨が記載されています。たとえばスピオルト レスピマット®の電子添文には、この趣旨の注意が明記されています。

複数の医療機関から吸入薬が出ている場合や、配合剤に切り替わったあとも前の単剤が残っている場合に、LAMAどうし・LABAどうしの重複が起きます。お薬手帳と残薬の確認が、そのまま監査になる場面です。

ICSが入っているなら、上乗せの理由を確認します

COPDにICSを含む製剤が出ているとき、「なぜICSが必要なのか」を説明できる状態にしておきたいところです。COPDでのICSは、喘息のように全例に使う薬ではないからです。

GOLD 2026では、血中好酸球数はICSによる増悪抑制効果を予測する材料として位置づけられています。LABA+LAMA治療中に中等度または重度の増悪があれば、LABA+LAMA+ICSへの変更を検討し、100/μL以上から効果がみられる可能性があり、数値が高いほど効果が期待されやすいとされています。Group Eの初期治療で300/μL以上なら3剤併用を考慮するという実務的推奨もありますが、300/μLはすべての場面に共通する絶対的な閾値ではありません。

図2:ICSが入っている処方を見たときの確認順

① 喘息の合併(ACO)はありますか?

あり → ICSを含む処方は自然な選択です。喘息としての管理が優先されます。
なし → ②へ

② 増悪を繰り返していますか?

全身性ステロイドや抗菌薬が必要になった増悪、入院した増悪の記録を確認します。

③ 血中好酸球数はどれくらいですか?

検査値が共有されていれば、増悪歴と一緒に確認します。300/μL以上ではICSの効果が期待されやすい一方、数値だけで追加・中止を決めません。

④ 肺炎のリスクを見ていますか?

ICS使用中は肺炎に注意が必要です。発熱・膿性痰・息切れの増加があれば早めの受診をお伝えします。

⑤ うがいはできていますか?

口腔カンジダ・嗄声の予防として、吸入後の含嗽を毎回確認します。

なお、COPD単独でLABA+ICSの2剤配合が処方されている場合、GOLD 2026ではこの組み合わせを推奨していません。ただし、既治療で症状と増悪が安定している場合は継続という選択肢も示されています。喘息合併や治療経過を確認せず、一律に変更対象と判断しないことが大切です。

吸入回数の取り違えは、配合剤どうしの変更で起きやすくなります

COPDの吸入薬は、製剤によって1日1回のものと1日2回のものが混在しています。配合剤から配合剤への変更があったとき、回数の説明が前のままになっていないかを確認します。

回数 主な製剤(COPD) デバイス
1日1回 テリルジー100エリプタ®、アノーロ エリプタ®、レルベア100エリプタ®、ウルティブロ®、スピオルト® DPI/SMI
1日2回 ビレーズトリ エアロスフィア®、ビベスピ エアロスフィア®、シムビコート® pMDI/DPI

とくに注意したいのが、エアロスフィア製剤です。ビレーズトリもビベスピも1回2吸入を1日2回という用法で、「1回に2回押す」という点が伝わっていないことがあります。テリルジーやアノーロのような1日1回1吸入の製剤から切り替わった患者さんには、回数と吸入数の両方を確認してください。

デバイスごとの手技や吸気流速の考え方は、こちらで詳しく整理しています。

抗コリン薬を含む製品は、製品ごとの禁忌を確認します

COPDの患者さんでは、前立腺肥大症や緑内障などの併存疾患を確認する場面があります。抗コリン薬を含む吸入薬の禁忌・注意事項は製品ごとに電子添文で確認してください。たとえばテリルジーの現行電子添文では、次の患者が禁忌です。

  • 閉塞隅角緑内障は禁忌です。「緑内障がある」とだけ聞いた場合、開放隅角か閉塞隅角かで扱いが変わるため、眼科での診断名を確認します
  • 前立腺肥大による排尿障害等、排尿障害がある患者も禁忌です。「注意」ではなく禁忌である点を押さえておいてください。排尿困難の訴えがないか聞き取ります
  • 抗コリン作用の重複:併用薬も含めて、口渇、便秘、排尿困難などが悪化していないかを確認します

多剤併用の患者さんでは、吸入薬だけで判断せず、症状の出現時期と併用薬全体を見直します。新たな排尿困難、眼痛、霧視などがあれば、自己判断で中止させず、処方元や眼科への確認につなげます。

増悪時に何を使うかが決まっているかを確認します

この記事で扱うテリルジー100などの長時間作用性吸入薬は、増悪時の急性期治療を目的とする薬剤ではありません。維持薬と、急な息切れに対して医師から指示された薬を分けて確認します。

つまり、息切れが強くなったときに手元で使えるものがあるかどうかは、別に確認しておく必要があります。

  • 短時間作用性β2刺激薬(SABA)や短時間作用性抗コリン薬(SAMA)が処方されているか
  • 使い方と、どのくらい使ったら受診するかの目安を患者さんが知っているか
  • 維持薬の回数を自己判断で増やしていないか

「苦しいときにテリルジーを追加で吸っている」という自己流の使い方は、実際に聞き取りで出てくることがあります。維持薬とレスキューの役割を分けて説明できているかは、指導の質を左右するポイントです。

デュピルマブがCOPDに使えるようになりました(2025年3月)

2025年3月27日、デュピクセント®(デュピルマブ)に「慢性閉塞性肺疾患(既存治療で効果不十分な患者に限る)」の適応が追加されました。現在の効能・用法はPMDAのデュピクセント製品ページで確認できます。

本剤は最適使用推進ガイドラインの対象で、厚生労働省が示す患者選択の要件が定められています。以下は、2025年3月に発出され2025年12月に改訂されたガイドラインの記載内容です。

デュピルマブ(COPD)の患者選択要件

  1. 診療ガイドライン等を参考に、COPDの確定診断がなされている
  2. 気管支拡張薬投与後のFEV1が予測値の30%超70%以下の気流閉塞を伴う
  3. LAMA、LABA及びICS(ICSが禁忌の場合はLAMA及びLABA)を3カ月以上併用している
  4. 中等度の増悪を年2回以上(うち1回は全身性ステロイド薬の投与が必要であった)、または重度の増悪を年1回以上認め、このうち少なくとも1回の増悪は上記併用中に発現している
  5. 血中好酸球数が300/μL以上である
  6. 禁煙、呼吸リハビリテーション等の非薬物療法に関する管理計画が作成され、適切に実施されている

出典:厚生労働省・PMDA「デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン」2025年12月改訂版

用法・用量の面で、薬局・病棟どちらでも押さえておきたい違いがあります。

適応 初回 以降
慢性閉塞性肺疾患 負荷投与なし 300mgを2週間隔

COPDでは負荷投与を行わず、初回から300mgを2週間隔です。デュピルマブは適応、年齢、体重などにより用法が異なるため、他疾患での用法を当てはめず、導入時は対象疾患と製剤規格を電子添文で照合します。また、COPDに使用する製剤は300mgペンまたは300mgシリンジです。

投与にあたっての留意点として、ガイドラインには次のような記載があります。

  • 本剤は既に起きているCOPDの増悪や症状を速やかに軽減する薬剤ではないため、急性の増悪に対しては使用しない
  • 投与中も禁煙・呼吸リハビリテーションなどの非薬物療法を継続し、処方の都度その継続状況を確認する
  • 投与開始後は12週および52週を目安に効果を確認し、効果が認められない場合には漫然と投与を続けない
  • 好酸球増加症があらわれることがあり、好酸球数の推移、血管炎性皮疹、肺症状の悪化、心臓合併症、ニューロパチー等に注意する
  • 投与中の生ワクチン接種は避ける

デュピルマブはアトピー性皮膚炎など他の適応でも使われている薬剤です。作用機序や副作用の全体像は、こちらの記事でも触れています。

海外ガイドラインの記載と日本の適応は分けて考えます

GOLD 2026では、LABA+LAMA+ICSでも増悪が続き、血中好酸球数300/μL以上の場合に、慢性気管支炎を伴う患者ではデュピルマブ、慢性気管支炎の有無を問わずメポリズマブを検討する記載があります。ただし2026年8月時点で、PMDAのヌーカラ製品ページにCOPDの適応はありません。海外ガイドラインの推奨と国内承認は分けて確認します。

患者さんへの説明で、押さえておきたい3つのこと

COPDの吸入薬は「毎日続けること」に価値がある薬です。ただ、患者さんの実感としては効果が見えにくく、自己中断につながりやすい面もあります。次の3点を軸に伝えると、納得が得られやすくなります。

伝えること 説明の例
維持薬とレスキューの役割の違い 「こちらは毎日の空気の通り道を広げておくお薬です。苦しくなったときに追加で吸うお薬ではありません」
調子がよくても続ける理由 「症状が落ち着いていても、自己判断で中止せず、次の受診までは指示どおり続けてください」
受診の目安 「痰の色が変わった、いつもより息切れが強い、発熱があるといったときは、早めに受診してください」

禁煙の話題は、責める形にならないよう注意が必要です。「やめられていない」ことを指摘するより、「次の受診で相談してみませんか」と選択肢を示すほうが、その後の関係が続きやすいと感じています。

2026年度改定で、吸入薬指導加算の要件が変わりました

令和8年度診療報酬改定で、吸入薬指導加算の算定要件が見直されました。厚生労働省の改定概要資料(調剤)には、次のように示されています。

項目 改定前 改定後
対象患者 喘息又は慢性閉塞性肺疾患の患者であって、吸入薬の投薬が行われているもの 吸入薬の投薬が行われている患者(インフルエンザの吸入薬も対象に追加)
点数・頻度 30点/3月に1回まで 30点/6月に1回まで

出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(2026年7月1日版)

算定頻度が3月に1回から6月に1回へと変わっています。COPDの患者さんは長期にわたって同じ吸入薬を継続することが多いため、算定のタイミングを意識した記録運用が必要になります。対象疾患が広がった点とあわせて、薬局内で共有しておきたい変更です。

日本のガイドラインも2026年に改訂されています

日本呼吸器学会は『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2026〔第7版〕』を公開しています。公式の目次では、生物学的製剤、高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)、気管支鏡治療などが独立した項目として設けられています。

本記事は処方監査の入口を整理するもので、第7版の個別推奨を代替するものではありません。実際の判断は原典と最新の電子添文で確認してください。

ガイドライン改訂や適応追加を、遅れずに追いかけるには

適応追加、電子添文改訂、診療・調剤報酬改定は、処方監査や薬局内の標準手順に直結します。制度と医薬品情報を継続して確認できる力は、勤務先が変わっても活用できる薬剤師の実務基盤です。

更新を見落とさないためには、確認する情報源と頻度を決めておく方法があります。m3.comを含む医療情報サービスの特徴を比較し、自分に合う情報収集の仕組みを検討してください。

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よくある質問

COPDで血中好酸球数300/μL以上なら、必ずICSを追加しますか?

いいえ。GOLD 2026では、増悪歴と血中好酸球数を併せて判断します。300/μL以上はICSの効果が期待されやすい目安ですが、すべての場面に共通する絶対的な閾値ではありません。一方、COPDにデュピルマブを使用する際は、国内の最適使用推進ガイドラインで300/μL以上が患者選択要件の一つです。

テリルジー200エリプタをCOPDに使えますか?

2026年8月時点の電子添文では、COPDの適応があるのはテリルジー100エリプタです。200エリプタは気管支喘息のみの適応です。同じブランドでも規格を分けて確認してください。

COPDの維持吸入薬を、息苦しいときに追加吸入してよいですか?

処方医から個別の指示がない限り、自己判断で追加しません。維持薬は急性増悪の治療を目的とする薬ではないため、指示されたレスキュー薬、使用回数、受診の目安を確認します。

まとめ

COPDの吸入薬は、喘息と成分が重なるぶん、「同じように見えて違う」ところに落とし穴があります。今日の内容を、監査の順番として整理しておきます。

  1. 適応と重複:テリルジー200・レルベア200・エナジアにCOPDの適応はありません。LAMAどうし・LABAどうしの重複にも注意します
  2. ICSの理由:喘息合併の有無、増悪歴、血中好酸球数を確認します。300/μLは一律の追加基準ではありません
  3. 回数:エアロスフィア製剤は1回2吸入を1日2回。1日1回製剤からの変更時は要確認です
  4. デバイス:吸気流速と手技が患者さんに合っているかを見ます
  5. 抗コリン:製品ごとの電子添文で禁忌を確認します。テリルジーでは閉塞隅角緑内障と前立腺肥大等による排尿障害が禁忌です
  6. レスキュー:維持薬は急性増悪の治療薬ではありません。手元にSABA/SAMAがあるかを確認します
  7. デュピルマブ:最適使用推進ガイドラインの6要件と、COPDでは負荷投与がない点を押さえます

すべてを一度に確認するのは大変ですが、①の適応確認だけでも習慣にしておくと、防げる疑義照会がひとつ増えます。まずはそこから始めてみてください。

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参考にした情報源

※本記事は医療従事者向けの情報整理です。個々の患者さんへの適用は、必ず最新の電子添文とガイドライン原典をご確認のうえ、主治医の判断に基づいて行ってください。

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