「重複投薬・相互作用等防止加算」は2026年6月1日で廃止になります。代わりに新設されるのが「調剤時残薬調整加算」と「薬学的有害事象等防止加算」の2加算です。
点数は最低30点・最高50点。算定要件も従来とは大きく変わり、かかりつけ薬剤師・在宅対応・お薬手帳活用が高評価される方向に再編されました。
旧加算の感覚のままで6月を迎えると、返戻・算定漏れが続出します。本記事では、廃止される旧加算と新設2加算の違いを、点数表・算定フロー・実務チェックリスト付きで完全解説します。
もくじ
重複投薬・相互作用等防止加算は2026年6月で廃止
2026年(令和8年)6月1日施行の調剤報酬改定で、長年運用されてきた調剤管理料の加算「重複投薬・相互作用等防止加算」と、独立した管理料「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が同時に廃止されます。
旧加算(外来)は、残薬調整以外(重複投薬・相互作用等の防止)が40点、残薬調整に係るものが20点という2区分の一律評価でした。
これが「残薬対策」と「有害事象対策(重複投薬・相互作用等)」に分割され、それぞれ独立した加算へと再編されます。新加算はいずれも調剤管理料の加算として位置づけられます。
背景にあるのは、ポリファーマシー対策と残薬解消を別軸で評価したいという中医協の方針です。一律評価だった従来構造では、かかりつけ薬剤師の介入価値や在宅対応の評価が埋没していたという指摘を反映した形です。
比較表で見る|旧加算 vs 新2加算
まずは全体像を視覚的に把握しましょう。
| 区分 | 旧(〜2026年5月) | 新(2026年6月〜) |
|---|---|---|
| 残薬調整 | 重複投薬・相互作用等防止加算(残薬調整):20点 | 調剤時残薬調整加算:30〜50点 |
| 重複・相互作用 | 重複投薬・相互作用等防止加算(残薬調整以外):40点 | 薬学的有害事象等防止加算:30〜50点 |
| 評価軸 | 残薬調整かそれ以外かの2区分 | 在宅・かかりつけ薬剤師を高く評価する4区分 |
| 位置づけ | 調剤管理料の加算 | 調剤管理料の加算(同じ) |
| 施設基準 | 特になし | お薬手帳活用実績が相当程度ある薬局のみ |
※「相当程度」の目安は手帳提示率50%超とされています。詳細は施設基準告示を要確認。
旧加算の最高40点が、新加算では最低でも30点、条件によっては50点まで上振れする設計です。一見すると点数アップに見えますが、施設基準と算定要件は厳格化されている点に注意してください。
新設①「調剤時残薬調整加算」を解説
残薬対策に特化した加算です。患者やその家族から残薬の情報を得て、処方医に照会のうえ処方日数を変更した場合に算定します。
点数体系(4区分)
- イ:50点|在宅患者への処方箋交付前に相談・提案が反映された場合
- ロ:50点|在宅患者で調剤日数を変更した場合
- ハ:50点|かかりつけ薬剤師が日数変更した場合
- ニ:30点|上記以外(一般外来など)
算定要件のキモ
基本は「残薬確認 → 処方医の指示 → 7日分以上相当の処方日数変更」という3ステップです。
「7日分以上相当」の数え方は剤形ごとに定義されています。
- 内服薬:調剤日数を7日以上減らした場合
- 屯服薬:7回分以上減らした場合
- 外用薬:使用量で判断(一律基準なし)
6日以下でも算定できるケース
「7日分以上」が原則ですが、薬剤師の専門的判断で必要と認められる場合は、レセプトに理由と変更医薬品名を記載すれば6日以下でも算定可能です。
具体的に認められる理由は次のようなケースです。
- 高額医薬品で患者の経済的負担を軽減する必要がある
- 認知機能の低下など薬学的専門的観点から必要
逆にNG理由として、「患者が意図的に残薬を生じさせている場合」「処方医の同意のみで薬学的根拠がない場合」は算定できません。
減数調剤との連動
2026年改定で処方箋様式が見直され、医師がチェック欄に印を付けるだけで減数調剤が可能になりました。残薬調整加算は、この減数調剤と連動して算定できるのが大きな実務ポイントです。
ただし、調剤日数や数量を「0」にすることはできない点に注意してください。
新設②「薬学的有害事象等防止加算」を解説
こちらは残薬以外の薬学的問題(重複投薬・相互作用・ポリファーマシー等)に介入した場合の加算です。
点数体系(4区分)
- イ:50点|在宅患者への処方箋交付前に相談・提案が反映された場合
- ロ:50点|在宅患者で処方変更が行われた場合
- ハ:50点|かかりつけ薬剤師による照会で処方変更された場合
- ニ:30点|上記以外(一般外来など)
旧加算(残薬調整以外40点)と比較すると、一般ケース(ニ)は40点→30点と10点減、かかりつけ・在宅は40点→50点と10点増となります。介入の質で点数が上下する設計です。
算定要件のキモ
「薬剤服用歴・電子処方箋等で重複投薬や相互作用を確認 → 処方医に照会 → 実際に処方変更が行われた」が成立条件です。
対象となる介入は次の通りです。
- 併用薬との重複投薬の確認
- 相互作用の確認・回避
- その他、薬学的観点から必要な事項(用量調整・剤形変更など)
残薬調整は対象外で、それは前述の「調剤時残薬調整加算」で算定します。
算定制限・算定不可のケース
- 調剤管理料を算定していない処方箋では算定不可(本加算は調剤管理料の加算であるため)
- 同時に複数の処方箋を受けても1回限りの算定
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定中の患者は原則対象外(訪問指導料の中で評価される)
- お薬手帳活用実績が相当程度認められない薬局(目安として提示率50%以下)は算定不可
共通施設基準と注意点
お薬手帳活用実績が必須
新2加算とも、適切なお薬手帳の活用実績が相当程度あると認められる保険薬局でなければ算定できません。提示率50%超が一つの目安です。
これまで手帳算定を軽視してきた薬局は、5月末までに手帳提示率を上げる運用を整備しないと、6月以降に新加算を取りこぼします。
レセプト記載要領
新2加算ともに、レセプト摘要欄に「連絡・確認を行った内容の要点」を記載する必要があります。レセプト電算処理システム用コードは新加算用のものを使用するため、厚生労働省告示・通知の最新版で該当区分のコードを必ず確認してください。
調剤時残薬調整加算で6日以下の日数変更を行った場合は、理由と変更医薬品名の記載が追加で必須です。
6月施行に向けた薬局の実務対応チェックリスト
5月中に整備すべき実務対応を、薬剤師目線でまとめました。
📋 5月末までに完了させる実務チェックリスト
特に①のレセコン更新と②の手帳提示率の確保は、6月初日からの算定可否を直接左右します。最優先で着手してください。
よくある質問
Q1. 5月31日までに受け付けた処方箋はどう扱う?
5月31日受付分までは旧加算(重複投薬・相互作用等防止加算)の40点・20点で算定します。6月1日受付分から新2加算へ切り替わると理解しておけば実務上問題ありません。経過措置は設定されていない見込みです。
Q2. かかりつけ薬剤師指導料を算定していない患者でも50点(ハ)は取れる?
取れません。かかりつけ薬剤師指導料の同意を得ている患者に対する介入のみが「ハ」の対象です。同意がない患者の場合は「ニ」の30点です。
Q3. 在宅訪問指導料を算定中の患者は除外なのに、なぜ「ロ」で在宅患者50点が設定されているの?
「ロ」が想定するのは、訪問薬剤管理指導料を算定していない在宅患者(外来通院困難で家族が来局する場合など)です。訪問指導料を算定中の患者については、その指導料の中で重複投薬・相互作用等への対応が評価される構造になります。なお、従来あった「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」も2026年6月で同時に廃止されるため、新加算と切り分けて理解する必要があります。
Q4. 減数調剤と残薬調整加算は併算定できる?
減数調剤は調剤行為の様式変更であり、残薬調整加算はその結果として算定する加算です。要件を満たせば併算定可能で、6月以降の主要な算定パターンになります。
まとめ|算定機会を取りこぼさないために
2026年6月1日から、長年慣れ親しんだ「重複投薬・相互作用等防止加算」は姿を消し、「調剤時残薬調整加算」と「薬学的有害事象等防止加算」に分割再編されます。
ポイントは3つです。
- 残薬と有害事象を明確に分けて算定する
- かかりつけ薬剤師・在宅対応を50点で評価、それ以外は30点
- お薬手帳活用実績が施設基準として必須
5月のうちに、レセコン更新・手帳提示率の確保・疑義照会テンプレ整備の3点を完了させてください。これだけで6月以降の算定機会取りこぼしは大幅に防げます。
2026年6月改定の全体像と他の主要変更点は、以下の記事でまとめています。
📖 あわせて読みたい|2026年6月改定 関連記事
改定対応の準備を効率よく進めるなら、まずは全体像をつかむのが近道です。
※本記事の点数・要件は2026年5月時点の公開情報をもとに執筆しています。算定にあたっては、必ず厚生労働省告示・通知の最新版および日本薬剤師会の解釈通知をご確認ください。

