「テープ剤とパップ剤、結局どう違うの?」「肩に貼るならどっち?」「かぶれが出やすいのはどちら?」――処方箋カウンターで頻繁に尋ねられる質問です。両者は一見似ていますが、基剤・使用感・適応・かぶれリスクに明確な違いがあります。
本記事では、テープ剤とパップ剤の違いを、基剤・薬物動態・かぶれリスク・部位別の使い分け・代表製剤までを薬学的に整理しました。患者説明にそのまま使える伝え方の例文も掲載しています。
結論を先に言えば、「動く部位・夏場・長時間効かせたい」ならテープ剤、「貼り心地・冷感・関節以外の広い範囲」ならパップ剤が一般的な使い分けの目安です。
もくじ
テープ剤・パップ剤とは|貼り薬の2大カテゴリ
| 項目 | テープ剤 | パップ剤 |
|---|---|---|
| 基剤 | 非水系(ゴム・アクリル系) | 含水性(水分を含む膏体) |
| 厚さ | 薄い(0.5〜1mm程度) | 厚い(2〜3mm程度) |
| 粘着力 | 強い・剥がれにくい | 中程度・剥がれやすい |
| 使用感 | 密着感あり・ややムレ | ひんやりする・心地良い |
| 持続時間 | 長い(24時間製剤多い) | 短め(12時間製剤が多い) |
| かぶれ | 密着のため接触皮膚炎・光線過敏に注意 | 水分蒸発でムレ少なめ・全体としては低リスク |
| 夏場の汗 | 剥がれにくい | 剥がれやすい |
| 主な部位 | 関節・腰・肩など動く部位 | 体幹・膝・肩など広い面積 |
基剤の違い|「水を含むかどうか」が最大の差
テープ剤の基剤
テープ剤は非水系基剤(ゴム系またはアクリル系の粘着剤)で薬剤を保持します。水を含まないため薄く・粘着力が強く・剥がれにくいのが特徴。汗をかいてもズレにくく、関節や動く部位に向きます。
パップ剤の基剤
パップ剤は含水性ゲル基剤(水分を含む膏体)。水分の気化熱でひんやり感じる「冷感作用」が特徴です。厚みがあるため緩衝作用もあり、打撲・捻挫直後の冷却用途にも好まれます。一方で水分蒸発による剥がれ・粘着低下は弱点です。
使い分けの基本|部位・症状・季節で選ぶ
📍 部位・症状別の使い分け
関節・腰・動く部位
→ テープ剤。粘着力が強く剥がれにくい。
広い面積・冷感ほしい
→ パップ剤。冷感と心地よさで使用感◎。
夏場・汗をかく
→ テープ剤。汗で剥がれにくい。
高齢者・皮膚薄い
→ パップ剤。剥がす時の皮膚負担が小さい。
急性期・冷やしたい
→ パップ剤。受傷直後の冷却補助に。
慢性期・長時間効かせたい
→ テープ剤。24時間製剤が多い。
代表的な製剤の比較
NSAIDs外用テープ剤
- ロキソニンテープ(ロキソプロフェン):1日1回・薄型でかぶれにくい
- モーラステープ(ケトプロフェン):1日1回・光線過敏症の警告に注意
- ロコアテープ(エスフルルビプロフェン):1日1回・経皮吸収率が高く全身性副作用に注意
- セレコックステープ・フルルビプロフェンテープ:各種展開
NSAIDs外用パップ剤
- モーラスパップ(ケトプロフェン):冷感あり・1日1回または2回
- ロキソニンパップ:冷感あり・薄型化された冷感シップ
- インテバンクリーム / シップ(インドメタシン):従来から定番
- ボルタレンサポ・ジクトル外用:剤型のバリエーション
かぶれ・接触皮膚炎の予防
かぶれが起こりやすい場面
- 同じ部位に連日貼り続ける
- 剥がす時に皮膚を強く引っ張る
- テープ剤を入浴直後の濡れた肌に貼る
- 毛深い部位で粘着剤と皮脂が反応
かぶれ予防のコツ
- 毎回少しずらして貼る(同部位の連用を避ける)
- 剥がす時は「皮膚を押さえながら、シールに沿ってゆっくり剥がす」
- 入浴後は皮膚をしっかり乾かしてから貼る
- 毛深い部位は事前にハサミで毛をカット(剃ると傷つく)
- かぶれが出たらその部位を1〜2週間休むか別部位に変更
光線過敏症|ケトプロフェンの重要警告
モーラステープ・モーラスパップ(ケトプロフェン)は、光線過敏症の重要な警告があります。貼った部位が紫外線に当たると、強い赤み・水疱・色素沈着を起こすことがあります。
患者指導のポイント
- 貼った部位は衣服やサポーターで遮光
- 剥がした後も4週間以上は紫外線を避ける
- 夏場の屋外活動・海水浴・スキー(雪面反射)に注意
- UV-Aは曇天・室内(窓際)でも届くので油断禁物
遮光が難しい部位(顔・手の甲)への使用は避けるのが無難です。
全身性副作用|「外用=安全」ではない
NSAIDs外用剤も経皮吸収で全身循環に到達します。広範囲・長期間の使用、ロコアテープなど吸収率の高い製剤では、内服NSAIDs同様の副作用が起こりえます。
注意したい副作用
- 消化管障害(潰瘍・出血)
- 腎機能悪化
- 気管支喘息発作(NSAIDs過敏症患者)
- 妊娠後期は禁忌(動脈管早期閉鎖リスク)
処方時のチェック
- 内服NSAIDsとの併用:合計用量を意識
- 腎機能・消化管リスクの高齢者:使用面積・期間を制限
- 気管支喘息既往:他の鎮痛手段(アセトアミノフェン)への変更検討
- 妊婦:妊娠後期は禁忌
正しい貼り方の手順
- 患部・周囲をきれいに拭く(汚れ・汗・皮脂を除去)
- 水分を完全に乾かす(湿ったままだと粘着力低下・かぶれリスク)
- 包装から取り出し、フィルムを剥がす(粘着面に触れない)
- 皮膚に密着させる(中央から外側に向かってシワを伸ばす)
- 剥がす時はゆっくり、皮膚を押さえながら
- 使用済みは折りたたんで廃棄(粘着面を内側に)
パップ剤・テープ剤を貼ってはいけない場所
- 傷口・湿疹・水疱のある皮膚
- 目・口・粘膜の周辺
- 放射線治療を受けた皮膚
- 過去に同剤でかぶれを起こした部位
ジェネリック・OTC品の注意点
近年は同成分の後発品・OTC品が多数発売されています。添加剤の違いでかぶれ感・粘着力に差が出ることがあります。後発品で皮膚反応が強い場合、別の後発品や先発品への変更を提案します。
患者から多い質問への答え方
Q:「お風呂で剥がれちゃう」
A:「入浴の30分前に剥がし、上がって体を完全に乾かしてから新しいものを貼ると剥がれにくいです。テープ剤は防水ではありません」
Q:「2枚重ねて貼ってもいい?」
A:「避けてください。吸収量が増えて全身性副作用が出やすくなります。1枚で効果不十分な場合は医師に相談を」
Q:「貼ったまま運動してもいい?」
A:「テープ剤なら可能です。ただしモーラスは紫外線で皮膚障害が出るため、屋外運動では衣服でしっかり覆ってください」
Q:「シップを貼ったら赤くなった」
A:「かぶれの可能性があります。剥がして経過観察。発疹・かゆみが続くようなら受診してください。再使用時は別の製剤に変更を検討します」
よくある質問(FAQ)
Q1. 24時間貼って大丈夫?
1日1回製剤(ロキソニンテープ等)なら24時間貼り続けて構いません。ただし同部位への連用はかぶれリスクがあるため、貼る位置を毎回少しずらしてください。
Q2. 妊娠中・授乳中の貼り薬は?
妊娠後期はNSAIDs外用剤も禁忌です。授乳中はアセトアミノフェン主体の製剤が比較的安全とされますが、必ず医師・薬剤師に相談してください。
Q3. 子どもに使ってもいい?
製剤・年齢・部位により異なります。15歳未満では使用できない製剤も多く、必ず添付文書の小児への投与の項を確認してください。
Q4. 痛みがある時、シップとアセトアミノフェン内服どちらがいい?
軽症で局所的な痛みなら外用、広範囲・全身的な痛みなら内服が第一選択。NSAIDsとアセトアミノフェンの違いを参考に医師・薬剤師と相談してください。
Q5. シップで赤みが出たら冷やすべき?
軽度なら剥がして経過観察。強い赤み・水疱・かゆみが続くなら受診。冷却は症状の緩和に役立ちますが、根本的にはかぶれの原因(テープ剤・パップ剤)の使用を中止します。
Q6. 保管はどうすればいい?
未開封は室温・直射日光を避ける。パップ剤は乾燥に弱いので、開封後の袋はしっかり閉じて保管してください。
まとめ|「動くなら テープ・冷やすなら パップ」
テープ剤とパップ剤は「動くならテープ・冷感ほしいならパップ・夏場はテープ・高齢者の薄い皮膚はパップ」が大まかな使い分けの目安です。NSAIDs外用剤は経皮吸収で全身性副作用も起こり得るため、安易に「貼り薬は安全」と思わず、内服との合計量・腎機能・喘息既往を意識することが重要です。
またケトプロフェン製剤の光線過敏症は、薬剤師として患者に必ず伝えるべき重要な指導事項です。「外用=安全」と思っている患者ほど、しっかり説明して理解してもらう必要があります。
※本記事は薬剤師の服薬指導支援を目的とした情報提供であり、特定の患者・症例への臨床判断を保証するものではありません。製剤ごとの用法・禁忌・注意事項は、最新の添付文書・医師の指示に従ってください。


