調剤ベースアップ評価料は、令和8年度診療報酬改定の中でも、薬局の人件費対応に直結するテーマです。ただ、実務では「誰が対象なのか」「パートはどう考えるのか」「管理薬剤師は入るのか」「定期昇給と何が違うのか」が特に迷いやすいです。
この評価料は、単に4点を算定する制度ではなく、対象職員の範囲を整理し、賃金改善を説明できる形で運用する制度と考えると理解しやすいです。
この記事は、2026年4月10日時点で確認できる厚生労働省の概要資料、賃上げ関係資料、特設ページをもとに、薬局向けに詳しく整理したものです。とくに対象職員の考え方は、公式に確認できた範囲と、まだ一律に言い切りにくい範囲を分けて書いています。
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もくじ
まず結論
調剤ベースアップ評価料は、保険薬局の賃金改善体制を評価する新設項目です。令和8年6月からは処方箋受付1回につき4点、令和9年6月以降は原則その2倍(8点)になる予定です。対象職員については、2026年4月10日時点で確認した公式資料では、40歳未満の薬局の勤務薬剤師や事務職員は対象に含める方向が示される一方、40歳以上の薬局薬剤師、業務委託、経営者・法人役員は除外と整理されています。雇用形態や役職名だけで一律に判断せず、公式様式と通知に合わせて確認することが大切です。

| 論点 | 2026年4月10日時点で公式に確認できたこと | 実務での見方 |
|---|---|---|
| 薬局の勤務薬剤師 | 40歳未満は対象に含める方向、40歳以上は除外と読める資料あり | 年齢の線引きを確認する |
| 事務職員 | 対象に含める説明がある | 実際の賃金改善計画に落とし込む |
| 業務委託 | 除外と明記 | 外注スタッフは分けて考える |
| 経営者・法人役員 | 除外と明記 | 役員報酬は対象外として整理する |
| 管理薬剤師などの役職 | 今回確認資料では一律除外の明記までは見当たらない | 役職名だけで除外せず、役員該当性を確認する |
| 雇用形態 | 制度全体資料では常勤・非常勤の考え方に触れるが、調剤で一律線引きの明記は慎重に確認したい | 最新版様式と厚生局案内に沿って扱う |
調剤ベースアップ評価料の基本
厚生労働省の賃上げ関係資料では、調剤報酬において薬局の薬剤師及び事務職員等の確実な賃上げを図る観点から、調剤ベースアップ評価料を新設すると整理されています。制度の趣旨は、薬局の利益を上乗せすることではなく、賃上げを診療報酬で後押しし、その実績を報告で確認することにあります。
また、ベースアップ評価料等についての特設ページでは、薬局向けの届出様式、算定開始スケジュール、中間報告・実績報告の流れが案内されています。つまり、算定して終わりではなく、賃金改善を継続して確認する制度です。
対象職員は誰か? 公式に確認できた範囲
ここが一番大切です。厚生労働省の賃上げ対応の全体資料では、対象となる職員について、当該保険医療機関に勤務する職員であり、40歳以上の医師・歯科医師・薬局薬剤師、業務委託により勤務する者を除き、経営者・法人役員を含まないと整理されています。あわせて、40歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師、事務職員等を対象拡大の例として示しています。
さらに、中医協の賃上げ資料でも、令和6年度改定で原資配分の対象だった職種として40歳未満の薬局の勤務薬剤師と事務職員に触れています。
| 職種・立場 | 公式資料の読み方 | 記事での整理 |
|---|---|---|
| 40歳未満の薬局の勤務薬剤師 | 対象に含める方向が明記されている | 対象として扱う前提で確認 |
| 40歳以上の薬局薬剤師 | 除外と読める記載がある | 対象外として整理するのが安全 |
| 事務職員 | 対象拡大の対象として明記 | 薬局事務も候補に入る |
| 業務委託スタッフ | 除外と明記 | 派遣・請負・外注の契約形態を要確認 |
| 経営者・法人役員 | 除外と明記 | 役員報酬は含めない |
対象職員の整理は、「薬局で働いているから全員対象」と考えず、年齢・雇用関係・役員該当性を先に仕分けるのが実務的です。
雇用形態はどう考える?
雇用形態については、2026年4月10日時点で私が確認した公式資料では、少なくとも業務委託により勤務する者は除外と明記されています。これはかなり重要で、外注や委託の形で関わる人は、まず対象外として分けて考える必要があります。
一方で、薬局の勤務薬剤師や事務職員について、正社員だけが対象、あるいはパートは一律対象外といった書き方は、今回確認した資料では明確には見つかっていません。
ただし、制度全体の賃金改善算定基礎額の説明では、40歳未満の医師・歯科医師は常勤・非常勤(22時間以上)別、また事務職員等は常勤・非常勤(週22時間以上)の考え方が示されています。したがって、薬局実務でも雇用形態をまったく見なくてよいという意味ではなく、最新の届出様式や厚生局の案内に沿って確認するのが安全です。
現時点で言い切れるのは、業務委託は除外、そして薬局職員の雇用形態の細かな線引きは様式ベースで最終確認する必要がある、という点です。
年齢はどこまで関係する?
年齢については、今回の資料でかなりはっきりしています。賃上げ関係資料では、対象拡大の例として40歳未満の薬局薬剤師が挙げられ、別の整理では40歳以上の薬局薬剤師を除くと明記されています。したがって、薬局薬剤師については、少なくとも現時点の資料の読み方として、40歳未満かどうかは重要な線引きです。
なお、ここでいうベースアップは、単に年齢が上がったから給与が増えることを指しません。厚生労働省の資料では、ベースアップとは同じ年齢・職位の者の給与が前年度より引き上がることを意味し、年齢や勤続年数が増えたことによる給与の引上げ(定期昇給)は含まれないとされています。
役職はどう考える?
役職について、2026年4月10日時点で公式に除外が確認できるのは、経営者と法人役員です。これは資料に明記があります。
疑義解釈にて、賃金改善の対象職員に管理薬剤師(管理者)は含まれないことが正式に示されました。
また、役職が上がったことによる昇給は、さきほどのベースアップの定義から考えると、そのままではベースアップ評価料による賃上げとは整理しにくい点に注意が必要です。
| 役職・立場 | 公式に確認できたこと | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 経営者 | 除外 | 対象外として整理 |
| 法人役員 | 除外 | 役員報酬は含めない |
| 管理薬剤師 | 除外 | 対象外として整理 |
| 主任・店長など | 一律除外の明記は今回確認できず | 役職手当とベアを分けて考える |
兼務職員・出向職員の取り扱い(疑義解釈その2で明確化)
令和8年4月1日の疑義解釈(その2)で、現場で迷いやすい二つのケースに答えが示されました。公式様式に合わせて対象職員を整理する際の判断軸として、あわせて押さえておきましょう。
兼務職員(本部・エリア管理業務を兼ねる薬剤師)
調剤業務を主として実施している月に限り、対象職員として扱って差し支えないとされました。ただし、複数の保険薬局で勤務する薬剤師を、重複して対象職員にカウントすることはできません。
出向職員
出向元が賃金を支払っているケースでも、出向先の薬局が賃金額と改善額を把握していれば、出向先の賃金改善実績に含めて差し支えありません。ただし、ベースアップ評価料で得た収入を出向先から出向元へ精算するなど、両者の合議で調整することが条件です。
「この人は対象に入れていいのか?」で迷ったら、まず疑義解釈(その2)を確認する癖をつけておくと安心です。
届出と報告で見たいポイント
厚生労働省の特設ページでは、令和8年6月から算定を始める保険薬局は、令和8年5月7日から6月1日(必着)の間に様式103を提出し、8月に様式104による中間報告・実績報告を行う流れが示されています。以前の記事では「5月中」と整理していましたが、今回は薬局向けの案内資料に合わせて、より具体的な期間に寄せて確認できるようにしました。
対象職員の整理があいまいなまま届出を出すと、後で報告の整合が取りにくくなります。とくに、年齢線引きのある薬局薬剤師、事務職員の扱い、役員該当性、業務委託の除外は、届出前にそろえておくと安心です。
届出そのものは、薬局の所在地を管轄する地方厚生(支)局都道府県事務所ごとの専用メールアドレスに、Excelファイルを添付して送信する形式です。郵送ではなく電子提出が基本のため、担当者のメール環境と様式のExcelが最新版かどうかを、提出前に必ず確認しておきましょう。
関連して読みたい記事
参考にしたい公式情報
- 厚生労働省 ベースアップ評価料等について
- 厚生労働省 賃上げ・物価対応に係る全体像
- 中医協 賃上げについて(その2)
- 厚生労働省 個別改定項目について
- 厚生労働省 令和8年6月以降に初めてベースアップ評価料の算定を始める保険薬局
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について
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まとめ
調剤ベースアップ評価料を実務で見るときは、4点という点数だけでなく、対象職員の線引きがとても大切です。2026年4月10日時点で確認した公式資料では、40歳未満の薬局の勤務薬剤師や事務職員を含める方向、40歳以上の薬局薬剤師、業務委託、経営者・法人役員、管理薬剤師を除外する方向が示されています。
迷いやすいのは、雇用形態と役職です。ここは一律に決めつけず、役員該当性と最新様式を確認しながら、説明できる賃金改善計画に落とし込むことがいちばん大切です。


