2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(通称:フリーランス新法)。フリーランスとして働く薬剤師にとって、この法律を知っているかどうかで、取引先との関係や自分の権利の守り方が変わります。
この記事では、フリーランス薬剤師が特に押さえておきたい4つのポイントをわかりやすく整理します。

もくじ
まず結論:フリーランス新法で何が変わったか
フリーランス新法は「フリーランス(個人事業主)が安心して仕事を受けられる環境を整える」ための法律です。主な変化は次の4点です。
- ① 契約の書面明示が義務化:業務内容・報酬・支払期日を発注者が明示しなければならない
- ② 報酬の支払い保護:支払い期限が60日以内に制限・不当な減額禁止
- ③ ハラスメント対策の義務化:発注者にハラスメント防止措置の義務
- ④ 育児・介護への配慮義務:発注者が配慮する義務が明記
法律の対象者と対象取引
まず、この法律が適用されるのかを確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象のフリーランス | 従業員を雇用していない個人事業主(一人親方・フリーランス) |
| 対象の発注者 | 業務委託でフリーランスに仕事を発注する事業者 |
| 対象外 | 法人で受注している場合・雇用関係にある場合 |
| 施行日 | 2024年(令和6年)11月1日 |
薬局・病院・調剤センターからスポット業務・在宅業務委託・研修講師などを個人で受けている場合は、この法律の対象になります。
① 契約の書面明示義務:何を確認すべきか
発注者は、仕事を依頼する際に次の事項を書面(電子でも可)で明示する義務があります。
| 明示が必要な事項 | 具体例 |
|---|---|
| 業務の内容 | 「○○薬局での調剤補助業務」など具体的に |
| 報酬の額 | 時給・日給・案件単価など |
| 支払期日 | 「業務完了の翌月末払い」など |
| 業務の期間 | 単発か継続かを含めて明示 |
口頭のみの依頼や「詳細は追って連絡」という取引は、法律上問題になりうります。受注する前に書面での確認を求めることが自衛につながります。
② 報酬の支払い保護:60日以内・不当減額禁止
フリーランス新法では、報酬の支払いに関して次のルールが設けられています。
- 支払い期限:業務完了から60日以内に支払う義務がある
- 不当な報酬減額の禁止:発注後に一方的に報酬を下げることは違法
- 返品の禁止:成果物を正当な理由なく返品することは禁止
- 買いたたきの禁止:市場価格より著しく低い報酬での発注は問題になりうる
「後払い・期日不明」な取引は今後改善が求められます。フリーランス薬剤師として取引するときは、事前に契約書で支払い条件を確認しましょう。
③ ハラスメント対策:発注者側に義務が課される
フリーランスはこれまで、ハラスメントを受けても「雇用関係にない」ため保護が弱い状況でした。フリーランス新法では、発注者側に次の義務が課されます。
- ハラスメントを行わないための措置(研修・方針の策定)
- フリーランスからのハラスメント相談に対応する体制の整備
- 相談したことを理由とした不利益取扱いの禁止
薬局や病院でのスポット勤務中に理不尽な対応を受けた場合でも、法的な根拠をもって相談・申し出ができるようになりました。
④ 育児・介護への配慮義務
フリーランスが育児や介護の状況を申し出た場合、発注者には配慮の義務が生じます。
- 申し出に対して配慮を行う義務(具体的な措置の義務ではなく「配慮」の義務)
- 申し出を理由とした取引打ち切りや不利益取扱いの禁止
育児や介護との両立でフリーランス薬剤師として働く方にとって、法的な根拠を持てるようになりました。
フリーランス薬剤師が今すぐできること
- 既存の業務委託契約を見直す:報酬・支払い期日・業務内容が書面で明記されているか確認
- 新規の仕事を受ける前に書面確認を求める:口頭のみの依頼には書面化を要請する
- トラブル相談先を確認しておく:フリーランストラブル110番(公正取引委員会の窓口)に相談できる
- 実績・契約書をファイルとして管理する:万一の紛争に備えてエビデンスを整理しておく
副業・独立の準備については、薬剤師が副業から独立する方法の記事も参考にしてください。
まとめ:フリーランス新法は「知っているかどうか」が大きい
フリーランス新法は、フリーランスとして働く人の権利を守るための法律です。知らないまま不当な取引を続けるより、法律を知ったうえで正当な取引を求めるほうが、長期的に安定した働き方につながります。
法律の詳細は厚生労働省のフリーランス新法ページでも確認できます。


