「この症状は薬の副作用だろうか」と相談を受けたとき、JADERの報告件数だけで答えを出すことはできません。
JADERに収録されているのは、副作用や有害事象が疑われた報告です。
薬との因果関係が確定した症例の一覧でも、服用者全体を分母にした発生率の資料でもありません。
薬局では、電子添文などで患者対応を確認したうえで、JADERを「国内でどのような疑い報告が公表されているか」を確かめる補助資料として使います。
もくじ
JADERで分かることと分からないこと
JADERは、PMDAが公開する医薬品副作用データベースです。
ラインリスト形式の検索結果とCSVデータを合わせてJADERと呼びます。
2026年7月24日に確認したPMDAページでは、製造販売業者から報告された国内の副作用報告と、医療機関などから厚生労働省またはPMDAへ報告された国内の副作用または副反応症例のうち、PMDAが調査した報告が公開されています。
現在の公開対象は、2004年4月から2026年3月までにPMDAが受理した報告です。
CSVファイルには、公開の4か月前までに受理した症例が含まれます。また、追加情報や訂正によって、公開済みの過去分も更新されます。
| 確認できること | JADERだけでは判断できないこと |
|---|---|
| 公表された疑い報告の薬剤名、有害事象名、患者背景、転帰など | 薬剤と症状の因果関係 |
| 国内でどのような報告が存在するか | 副作用の発生率 |
| 電子添文や文献を追加確認するための手掛かり | 薬剤間、製品間の安全性の優劣 |
| 個別症例の時系列や併用薬を読むための情報 | 目の前の患者の診断や処方変更の要否 |
報告件数は、投与された患者数、医薬品の特性、製造販売業者などの情報入手状況によって、薬剤や製品ごとに異なります。
そのため、「A薬はB薬より報告が多いので危険」とは比較できません。
薬局ではラインリスト検索とCSVを使い分ける
JADERには、ウェブ画面で症例を探す方法と、CSVデータを取得して解析する方法があります。
| 方法 | 向いている目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| ラインリスト検索 | 一つの薬剤と症状について、公表症例の有無や個別情報を確認する | 表示件数を発生率や危険度に置き換えない |
| CSVデータ | 研究計画に沿って集計する、複数条件を再現可能な形で解析する | データ構造、重複、改訂履歴、MedDRA/Jを理解して扱う |
日常の副作用相談で一症例ずつ確認するなら、まずラインリスト検索を使う方が確認しやすいでしょう。
CSVは対象期間内のすべてのデータが毎回更新されるため、前回からの差分データではありません。
集計結果を再現できるように、取得日と対象期間を記録します。
JADERの4テーブルを読む
CSVデータは、症例一覧、医薬品情報、副作用情報、原疾患の4テーブルに分かれています。
| ファイル | 主な内容 | 実務で見る項目 |
|---|---|---|
| demo | 症例一覧 | 識別番号、報告回数、年齢、性別、報告時期、報告者資格 |
| drug | 医薬品情報 | 医薬品の関与、一般名、販売名、投与経路、投与期間、使用理由 |
| reac | 副作用情報 | 有害事象、転帰、発現日 |
| hist | 原疾患 | 原疾患等 |
4表には共通して「識別番号」と「報告回数」が含まれます。
PMDAのER図では、症例一覧テーブルの主キーは識別番号です。
医薬品情報、副作用情報、原疾患の各テーブルには、識別番号に加えて、それぞれの連番があります。
表を結合するときは、識別番号を軸にします。
報告回数は各表に収載される別項目であり、主キーとしては扱いません。
さらに、一つの報告に複数の薬剤と複数の有害事象が含まれる場合があります。
drugテーブルの行数やreacテーブルの行数を、そのまま患者数として数えることはできません。

薬局DIで使う5つの確認
1.確認したい問いを一文にする
最初に「薬剤名」「症状」「確認する目的」を一文にします。
「薬Aを開始後に症状Bが出た患者について、国内の疑い報告と電子添文上の対応を確認する」のように、対象を狭めます。
薬剤名だけで検索して件数の多い症状を眺めると、患者の訴えから離れやすくなります。
2.患者対応を電子添文などで先に確認する
患者に症状がある場合は、JADER検索より先に現在の状態、発現時期、重症度、服薬開始日、増減量日、併用薬を確認します。
そのうえで、最新の電子添文、患者向医薬品ガイド、RMP、安全性速報などから、中止や受診、検査、処方医への連絡に関する記載を探します。
JADERは急性期対応を決める資料ではありません。
3.一般名と有害事象名で公表症例を探す
ラインリスト検索では、一般名と販売名の両方を確認します。
有害事象名はMedDRA/Jの基本語で表示されるため、患者が使った言葉と一致しないことがあります。
例えば、日常語と医学用語の候補を分けて検索し、検索語をDIメモに残します。
4.一件ずつ時系列と背景を読む
報告件数だけで終わらず、投与開始日、有害事象の発現日、医薬品の処置、併用薬、原疾患、転帰を確認します。
同一症例が複数の報告者から重複して報告される場合もあります。
識別番号が違う重複は、識別番号だけの処理では除けません。
集計研究では、事前に重複処理と採用基準を決める必要があります。
5.分かることと分からないことを分けて記録する
薬歴やDIメモには、JADERだけから因果関係や発生率を判断していないことが分かる形で残します。
JADER確認メモの例
- 確認日:2026年○月○日
- 問い:薬A開始後の症状Bについて国内報告を確認
- 検索語:一般名、販売名、MedDRA/Jの有害事象名
- 確認結果:疑い報告あり。因果関係は未評価。報告件数は発生率ではない
- 患者情報:開始日、症状の発現日、重症度、併用薬、原疾患
- 一次情報:電子添文、RMP、安全性情報の確認箇所
- 対応:患者説明、処方医への情報提供、受診案内、経過確認
記録の中心は「JADERに何件あったか」ではなく、「患者情報と一次情報をどう照合し、誰に何を伝えたか」です。
患者説明では報告件数を前面に出さない
患者へ「JADERに○件あります」とだけ伝えると、発生率や因果関係が確定しているように受け取られるおそれがあります。
説明は、目の前の症状と次の行動を中心にします。
説明例
「この症状は薬を使った方から疑い報告が出ていますが、この情報だけで薬が原因とは決められません。症状が出た時期とほかの薬を確認し、電子添文の注意点と照らして処方医へ共有します」
患者の自己判断による中止を促す表現は避けます。
緊急性が疑われる症状では、データベースの確認より受診や処方医への連絡を優先します。
Excelで開けば解析できるとは限らない
PMDAはデータセットを一括または分割CSVで提供しています。
一部のファイルをExcelで確認することはできますが、目視で4表を行き来すると、結合漏れや重複集計が起きやすくなります。
継続的な集計では、Power Query、データベース、R、Pythonなどを使い、次の条件を固定します。
- データ取得日と公開対象期間
- 使用した一般名、販売名、有害事象名
- 「医薬品の関与」の採用条件
- 識別番号、各テーブルの連番、報告回数の扱い
- 重複症例の確認方法
- 欠測値と日付精度の扱い
コードを書けないこと自体は問題ではありません。
単発の確認はラインリスト検索で行い、集計が必要な案件はDI担当者や解析担当者と手順を共有します。
公表するときは利用規約を確認する
JADERの解析結果を論文発表などで公表する場合、PMDAの利用規約は事前通知を求めています。
公表文書には、JADERを利用した結果であることを明記します。
データベース自体の二次的な販売や頒布は、改変の有無にかかわらず原則として認められていません。
院内や薬局内のDIメモ、外部向け資料、研究発表では目的が異なるため、作成時点の利用規約を毎回確認してください。
電子添文、JADER、文献の確認順
| 情報源 | 薬局で確認する内容 | 使う順番 |
|---|---|---|
| 電子添文、患者向医薬品ガイド、RMP | 既知のリスク、患者対応、検査、注意事項 | 患者対応のため最初に確認 |
| PMDAの安全性情報 | 改訂指示、安全性速報、適正使用情報 | 最新の行政対応を確認 |
| JADER | 国内で公表された疑い報告の内容 | 追加の手掛かりとして確認 |
| PubMed、医中誌Web | 研究デザイン、発生率、比較、機序 | JADERだけで答えられない問いを確認 |
この順番を薬局内で共有すると、副作用相談の回答が「報告があったか」だけで終わりません。
薬局DIメモの作り方では、一次情報を短い記録へ落とす型を紹介しています。
添付文書改訂を継続して追う場合は、電子添文改訂の更新ログと朝礼メモも参照してください。
安全性情報を継続して確認する入口
m3.comなどの医療情報サービスは、改訂や安全性情報に気づく入口として使えます。
最終判断では、PMDAと厚生労働省の原資料、採用品目の最新電子添文を確認します。
よくある質問
JADERの報告件数は副作用の発生率ですか
発生率ではありません。
実際に薬剤を使用した患者数が分母として分からず、薬剤ごとに報告されやすさも異なります。
識別番号が同じなら一つの症例ですか
JADERの4表は、識別番号を軸に症例情報を対応させます。
報告回数は各表に収載される別項目で、主キーではありません。
ただし、同じ症例が複数の報告者から別々に報告される場合があるため、識別番号だけで重複を完全には除けません。
患者の症状が副作用かどうかをJADERで判断できますか
JADERだけでは判断できません。
症状の経過、開始日、併用薬、原疾患を確認し、電子添文などの一次情報と照合して処方医へ共有します。
CSVはExcelだけで扱えますか
分割ファイルの内容確認は可能ですが、4表の結合や重複処理を伴う集計には向きません。
単発確認はラインリスト検索、集計は手順を固定した解析環境と使い分けます。
JADERを使った記事や研究結果を公開できますか
公表前にPMDAへ通知し、公表文書にJADERを利用した結果であることを明記する必要があります。
公開時点の利用規約とPMDAの案内を確認してください。
JADER確認の持ち帰りメモ
- JADERは因果関係や発生率を示す資料ではない
- 患者対応は電子添文などで先に確認する
- 日常の個別確認はラインリスト検索から始める
- CSVの4表は識別番号を軸にし、連番と報告回数を別項目として確認する
- 報告件数より、時系列、併用薬、原疾患、転帰を読む
- 公表前通知と出典表記を利用規約で確認する
副作用情報を扱う力は、データを多く集めることではなく、資料の限界を示したうえで患者情報と結び付け、必要な連絡と記録へ変えることに表れます。
一次情報
- PMDA「副作用が疑われる症例報告に関する情報」
- PMDA「データセットのダウンロードページで提供する情報について」
- PMDA「JADERのER図」
- PMDA「医薬品副作用データベース利用規約」
- PMDA「副作用が疑われる症例報告ラインリスト検索」
本記事は2026年7月24日にPMDAの現行ページを確認して作成しました。JADERの公開期間、利用規約、検索画面は更新されるため、利用時に最新情報を再確認してください。

