2026年7月14日、厚生労働省は、PPIとボノプラザンを含む製剤の使用上の注意に「低マグネシウム血症」を追記するよう指示しました。長期投与時の血中マグネシウム濃度測定が「重要な基本的注意」に加わり、「重大な副作用」にも低マグネシウム血症が新設されています。
薬局では、「PPIを服用している」だけで一律に疑義照会するのではなく、処方目的、投与期間、症状、併用薬と患者背景を順に確認します。本文では、厚生労働省の改訂指示とPMDAの調査結果を、薬局で使う確認順に置き換えます。
一次情報の確認日:2026年7月23日
PMDAの製品別ページでは、タケキャブ、タケプロン、パリエットなどに2026年7月14日版の電子添文が掲載されています。一方、ネキシウムの製品別ページには同日版PDFが掲載されているものの、「改訂指示反映確認中」と表示されています。反映状況は製品ごとに異なるため、実務では改訂指示通知を起点にし、採用製品の最新電子添文も個別に確認してください。
先に押さえる4点
- 改訂対象は経口のPPI・ボノプラザンだけでなく、注射剤、配合剤、除菌パック、要指導医薬品も含む
- 長期投与時は定期的な血中マグネシウム濃度測定が求められる
- 改訂通知は「長期」の一律の期間や測定間隔を示していない
- 副作用報告数は発現率ではなく、成分間の危険度比較にも使えない
もくじ
2026年7月改訂で追加された内容
改訂の中心は、長期投与時の検査と、疑わしい症状が出たときの対応です。厚生労働省の改訂案では、次の2点が明記されました。
| 項目 | 追加された内容 | 薬局での確認 |
|---|---|---|
| 重要な基本的注意 | 長期投与で低マグネシウム血症が現れることがあるため、長期投与時は定期的に血中マグネシウム濃度を測定する | 投与開始時期と直近の検査情報を整理する |
| 重大な副作用 | QT延長、痙攣、しびれ等を伴う低マグネシウム血症。低カルシウム血症、低カリウム血症等を伴う場合がある | 症状、血中Mg・Ca・K、心電図など、患者ごとの情報を処方医へつなぐ |
改訂通知は、定期測定を求める一方で、「6か月以上」などの固定期間や、3か月ごとといった測定間隔は示していません。処方目的、投与継続の必要性、症状、検査歴を揃えた上で、処方医が患者ごとに判断します。
対象製剤は経口PPI・P-CAB以外にもある
調査結果と改訂通知で確認できる対象を、剤形と製剤単位で整理すると次のとおりです。
| 区分 | 対象 | 確認時の注意 |
|---|---|---|
| 経口剤 | エソメプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾール、ボノプラザン | 先発品だけでなく後発品も含む |
| 注射剤 | オメプラゾールナトリウム、ランソプラゾール注射剤 | 経口剤とは別紙で改訂指示が出ている |
| 配合剤 | アスピリン・ボノプラザン配合剤、アスピリン・ランソプラゾール配合剤 | 配合目的と投与期間を分けて記録する |
| H. pylori除菌パック | ボノプラザンを含む一次・二次除菌パック | 除菌用の短期パックと、継続中の胃酸分泌抑制薬を混同しない |
| 要指導医薬品 | オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾール含有製剤 | 「一般用医薬品」ではなく、薬剤師が使用者本人へ対面等で情報提供する要指導医薬品 |
除菌パックや配合剤も改訂対象ですが、PMDAの調査報告では、単剤で因果関係を否定できない症例が複数確認されたため、パック剤・配合剤ごとの症例集積状況は確認されていません。改訂対象であることと、その製剤自体で症例数が集積していることは分けて読みます。
症例数の読み方
PMDAは、副作用等報告データベースから、CTCAE version 6.0のGrade 3以上で、PPI中止後に複数時点の血中マグネシウム値が測定された症例を抽出しています。この集積数には処方人数という分母がないため、発現率や成分間の安全性差は評価できません。PMDAは、PPI含有製剤と低マグネシウム血症との因果関係を否定できない症例が集積したことを、改訂理由としています。
低マグネシウム血症を疑うときの5つの確認
厚生労働省の通知は、発現機序や高リスク併用薬の一覧を示していません。特定の機序や併用薬だけで結論を出さず、患者ごとの事実を次の順で揃えます。

1.処方目的
逆流性食道炎、消化性潰瘍、低用量アスピリンやNSAIDs使用時の再発抑制など、まず投与目的を確認します。処方を続ける利益を無視して、薬局判断で一律に中止を勧める改訂ではありません。
2.投与期間
薬歴で初回処方日をたどり、他院処方や要指導医薬品の使用も含めて継続期間を確認します。通知に固定の月数はありません。「6か月を超えたら一律に対象」とするのではなく、開始日、中断日、再開日を記録します。
3.症状
医療用医薬品の改訂案には、QT延長、痙攣、しびれ等が明記されました。要指導医薬品の改訂案では、吐き気、嘔吐、食欲不振、倦怠感、筋肉のぴくつき、意識の低下、しびれ、めまい、動悸、失神等が例示されています。
失神、意識障害、痙攣、強い動悸などがある場合は、次回受診まで待たず、患者の状態に応じた迅速な受診につなげます。症状がない患者に対しても、「何もないから検査は不要」とは言い切れません。
4.併用薬と患者背景
低マグネシウム血症をPPIだけの影響と決めつけないために、全併用薬の開始・中止・変更、下痢や食事摂取の状況、腸管・腎に関わる病歴、直近のMg・Ca・K値を確認します。改訂通知は高リスク併用薬を指定していません。特定の薬名だけで原因を決めず、確認できた薬名、投与量、変更日と患者背景を情報提供書に残します。
5.記録と処方医への連絡
情報提供では、「PPI長期のためMg測定を希望」だけでなく、処方目的、投与開始時期、新しく出た症状と発現日、併用薬の変更、確認できた検査値を記載します。緊急性がある場合は電話等で連絡し、非緊急の継続確認はトレーシングレポートなど、薬局の連携手順に合わせます。
窓口で使える患者説明
症状がない患者へ
「この胃薬は、長く使うと血液中のマグネシウムが下がることがあるため、定期的な血液検査について注意書きが追加されました。自分で中止せず、次の受診で検査歴を確認しましょう」
症状がある患者へ
「しびれ、強い動悸、失神、筋肉がぴくつくなどの症状は、血液中のマグネシウムが下がったときにも起こることがあります。薬の中止や検査は医師の判断が必要なので、症状の出た日と程度を確認して連絡します」
「長く飲んでいると危険です」とだけ伝えると、必要な治療の自己中断につながります。改訂の事実、確認する症状、検査や継続可否を判断する人を分けて説明します。
要指導医薬品の販売時に確認すること
2026年7月の改訂対象は、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾールを含む「要指導医薬品」です。厚生労働省の要指導医薬品一覧では、オメプラールS・サトプラール、パリエットS・パリエット10、タケプロンsが確認できます。販売時は薬剤師が使用者本人から、症状、処方薬や他の胃腸薬との重複、PPIの使用期間、治療中の疾患を確認します。
要指導医薬品PPIは短期使用が前提です。確認した現行の製品文書では、3日間服用しても症状が改善しない場合は服用を中止して医師または薬剤師へ相談し、症状が改善しても、他のPPIの使用期間と合わせて2週間を超えて続けて服用しないよう示されています。
2026年7月14日の改訂指示では、低マグネシウム血症の症状が新たに注意喚起されました。ただし、PMDAで公開される製品文書の反映時期は製品ごとに異なります。販売時点の最新文書を確認し、低マグネシウム血症が疑われる症状がある場合は、文書に従って服用を中止し、医師または薬剤師への相談や受診につなげます。医療用医薬品を服用中の患者への説明と混同しないよう、処方薬か要指導医薬品かを先に確認します。
薬局内の朝礼メモに残す5項目
- 改訂日と対象:2026年7月14日、経口剤・注射剤・配合剤・除菌パック・要指導医薬品
- 確認順:処方目的→投与期間→症状→併用薬・背景→記録・連絡
- 固定値なし:長期の月数と測定間隔は通知で一律に定義されていない
- 緊急度:失神、意識障害、痙攣、強い動悸は迅速な受診につなぐ
- 禁止事項:症例報告数で薬剤間の危険度を比較しない
電子添文の改訂を店舗内で共有する方法は、電子添文改訂の読み解き方|薬局で使える更新ログと朝礼メモで、薬剤ごとの違いはPPI・P-CAB・H2ブロッカーの使い分けで確認できます。
安全性情報の更新を見逃さないために
m3.comなどの医療情報サービスは、改訂に気づく入口として便利です。最終確認は厚生労働省・PMDAの通知と最新電子添文で行いましょう。m3.comを薬剤師の情報収集に使う方法もまとめています。
よくある質問
「長期投与」は何か月以上ですか?
2026年7月14日の改訂通知は、長期の一律の月数を定義していません。固定の6か月基準などは置かず、処方目的、開始日、中断歴、症状、検査歴を整理します。
長期服用者全員に同じ間隔で血中Mg測定が必要ですか?
通知は長期投与時の定期測定を求めていますが、一律の間隔は示していません。実際の測定時期は、患者の投与状況や症状、検査歴を踏まえて処方医が判断します。
タケキャブ(ボノプラザン)も対象ですか?
はい。ボノプラザンフマル酸塩と、これを含む配合剤・パック剤も改訂対象です。ただし、PMDAの症例集積数から、他成分より発現リスクが高いとは判断できません。
市販のPPIも対象ですか?
改訂指示の対象は、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾールを含む要指導医薬品です。販売時は薬剤師が使用者本人へ情報提供します。3日間で改善しなければ中止・相談し、他のPPIと合わせて2週間を超えて続けないことを確認した上で、販売時点の最新文書も読み合わせます。
まとめ
- 2026年7月14日、PPI・ボノプラザン含有製剤に低マグネシウム血症の注意が追記された
- 長期投与時は定期的な血中Mg測定が求められるが、一律の長期定義や測定間隔は示されていない
- 薬局では処方目的、投与期間、症状、併用薬・背景、記録・連絡の順で確認する
- 集積症例数を発現率や成分間の危険度比較として読まない
- 要指導医薬品PPIは短期使用が前提で、3日で改善しなければ中止・相談し、他のPPIと合わせて2週間を超えて続けない
- 製品別の電子添文・説明文書は反映状況が異なるため、販売・調剤時点の最新版を確認する
一次情報
- PMDA:2026年度使用上の注意の改訂指示通知
- 厚生労働省:「使用上の注意」の改訂について(令和8年7月14日 医薬安発0714第1号)
- PMDA:プロトンポンプインヒビター含有製剤(医療用)の改訂内容
- PMDA:プロトンポンプインヒビター含有製剤(医療用)の調査結果
- PMDA:ボノプラザン含有除菌パックの改訂内容
- PMDA:タケキャブ錠の最新電子添文情報
- PMDA:ネキシウムの最新電子添文情報
- 厚生労働省:要指導医薬品一覧
- PMDA:オメプラールS説明文書

