令和8年度診療報酬改定は、薬局に関係する論点がかなり広く、調剤基本料、体制加算、在宅、かかりつけ薬剤師評価、医療DX、選定療養、ベースアップ評価料まで、同時に押さえる必要があります。資料の量が多く、しかもそれぞれがつながっているため、個別論点だけ見ていると全体像を見失いやすいです。
今回の改定は、薬局の立地や規模だけではなく、地域で薬を安定供給できるか、個人宅や重症患者を支えられるか、継続支援を実際に行っているかまで、より具体的に評価する方向へ進んだ改定です。
この記事は、2026年4月11日時点で確認できる厚生労働省資料をもとに、薬局・薬剤師に関係する主な変更点を、全体像がつかみやすい形で整理したものです。細かな算定可否は、最終的に告示・通知・届出様式・疑義解釈で確認してください。
もくじ
まず結論
令和8年度改定で薬局がまず押さえたいのは、1. 調剤基本料の見直しと門前薬局等立地依存減算、2. 地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算の統合、3. 在宅と対人業務の実績評価強化、4. 医療DXや電子的情報連携の再編、5. ベースアップ評価料や選定療養など患者説明・経営対応の実務、の5本柱です。点数の増減だけでなく、どの行動が評価され、どの体制が求められるかをつかむことが重要です。

| テーマ | 主な変更 | 最初に確認したいこと |
|---|---|---|
| 調剤基本料 | 基本料見直し、門前薬局等立地依存減算、医療モールの集中率計算変更 | 自局の立地・集中率・経過措置 |
| 体制加算 | 地域支援・医薬品供給対応体制加算へ再編 | 後発割合85%、安定供給体制、区分1〜5 |
| 在宅 | 在宅薬学総合体制加算の見直し、週1回算定、医師同時訪問・複数名訪問の新設 | 単一建物1人、在宅協力薬局、夜間対応 |
| 対人業務 | かかりつけ薬剤師指導料等の廃止、フォローアップ・訪問・残薬調整の新設 | 継続支援をどう記録するか |
| 医療DX | 電子的調剤情報連携体制整備加算へ再編 | 電子処方箋・情報共有体制の運用 |
| 患者説明 | 選定療養、バイオ後続品、長期処方・残薬関連の説明機会増 | 説明文の統一と相談導線 |
| 経営・人件費 | 調剤ベースアップ評価料、物価対応 | 対象職員、届出、賃金改善の説明責任 |
1. 調剤基本料は「立地」と「集中率」の見直しが大きい
調剤基本料1、2、3ハなどの点数見直しに加え、門前薬局等立地依存減算(▲15点)が新設されました。指定地域に所在し、周囲の薬局状況や特定医療機関への集中率85%超などを満たす新規薬局、あるいは同一敷地・同一建物内の高集中薬局が対象になります。
さらに、医療モール内の複数医療機関は集中率計算上1つの医療機関とみなされるため、これまでより集中率が高く出る薬局もあります。一方で、令和8年5月31日時点の既存薬局には当面の経過措置があります。
この論点は、薬局の出店戦略や既存店舗の基本料区分に直結するため、個別確認の優先順位が高いです。
2. 地域支援・医薬品供給対応体制加算は「供給」と「実績」を一緒に見る
旧・地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算は統合され、地域支援・医薬品供給対応体制加算になりました。共通の土台として、地域における安定供給体制と、後発医薬品割合85%以上が重要です。そのうえで、調剤基本料1かどうか、地域医療への貢献体制と実績の高さで区分1〜5に分かれます。
施設基準通知の方向性として、16平方メートル以上の調剤室、セルフメディケーション関連機器、薬剤一元管理による疑義照会や残薬調整の実績なども示されており、供給だけでなく対人業務の質も見られます。旧・後発医薬品調剤体制加算の届出薬局には経過措置もあります。
3. 在宅は「個人宅」「夜間対応」「重い患者対応」がより重要に
在宅薬学総合体制加算1は30点へ、加算2は単一建物診療患者・居住者が1人の場合100点、その他50点へ整理されました。加算2では、単一建物1人の訪問割合、麻薬調剤、無菌製剤処理、常勤換算薬剤師数なども見られます。
在宅患者訪問薬剤管理指導料は、中6日以上の要件が廃止され、週1回算定可能となりました。また、在宅協力薬局の情報を含めた夜間の連絡先を患者さんに知らせることも要件化されます。さらに、医師同時訪問150点、複数名訪問300点が新設され、重い在宅患者に対応する場面が明確に評価されます。
4. かかりつけ薬剤師評価は「名前」より「行動」へ
かかりつけ薬剤師指導料と包括管理料は廃止されます。その代わり、服薬管理指導料の中で、かかりつけ薬剤師による継続支援が個別に評価されます。代表的なのは、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点と、かかりつけ薬剤師訪問加算230点です。
また、残薬確認に基づく調剤時残薬調整加算や、重複投薬・相互作用などへの介入を評価する薬学的有害事象等防止加算も新設されました。今後は、同意取得中心の運用より、電話等フォロー、患家訪問、残薬調整、処方提案をどう記録するかが重要になります。
5. 医療DXは「導入」より「情報を使える体制」が大切
医療DX推進体制整備加算は廃止され、電子的調剤情報連携体制整備加算へ再編されました。電子処方箋、調剤情報共有、マイナ保険証の活用などを通じて、薬局が安全に情報を活用できる体制が重視されています。
この論点は、単独で終わるものではなく、重複投薬確認、残薬調整、かかりつけ支援、在宅連携にもつながります。設備や届出だけでなく、受付から調剤、疑義照会、患者説明までの運用フロー整備が必要です。
6. 患者説明では選定療養、バイオ後続品、残薬が要注意
2026年6月以降、長期収載品の選定療養の負担説明は引き続き大きなテーマです。また、バイオ後続品の使用促進や残薬調整の見直しも、患者さんからの質問が増えやすい論点です。制度が複雑なほど、薬局内で説明の言い回しをそろえておくことが役立ちます。
選定療養の変更点 / 選定療養の患者説明Q&A / バイオシミラーの基本記事
7. ベースアップ評価料は人件費対応の実務そのもの
調剤ベースアップ評価料は、保険薬局の賃金改善体制を評価する新設項目です。令和8年6月から4点、令和9年6月以降は原則2倍になる予定で、特設ページでは届出様式、賃金改善中間報告・実績報告の流れも整理されています。
2026年4月11日時点で確認できる資料では、40歳未満の薬局の勤務薬剤師や事務職員を対象に含める方向が示される一方、40歳以上の薬局薬剤師、業務委託、経営者・法人役員は除外と整理されています。雇用形態や役職は、様式や通知に合わせて丁寧な確認が必要です。
薬局で先にやっておきたいこと
- 自局の調剤基本料区分、集中率、経過措置の対象かどうかを確認する
- 地域支援・医薬品供給対応体制加算の区分判定に必要な後発割合と実績項目を整理する
- 在宅では単一建物1人、麻薬、無菌、夜間連絡、在宅協力薬局の運用を見直す
- かかりつけ支援では、電話等フォロー、患家訪問、残薬調整、処方提案の記録を整える
- ベースアップ評価料では対象職員、届出、賃金改善説明の流れを決める
- 患者説明が増える制度は、薬局内の説明文をそろえる
個別に読みたい記事
- 調剤基本料の見直しと門前薬局等立地依存減算
- 地域支援・医薬品供給対応体制加算の見直し
- 在宅薬学総合体制加算と訪問薬剤管理指導の見直し
- かかりつけ薬剤師評価の見直し
- 調剤ベースアップ評価料
- 医療DX推進体制整備加算の記事
- 電子処方箋の記事
- 長期収載品の選定療養の記事
- バイオシミラーの基本記事
参考にしたい公式情報
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定説明資料等について
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】
- 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】
- 厚生労働省 個別改定項目について
- 中医協 パブリックコメントに寄せられた主な意見
- 厚生労働省 賃上げ・物価対応に係る全体像
- 厚生労働省 ベースアップ評価料等について
- 厚生労働省 保険薬局向けベースアップ評価料算定スケジュール
まとめ
令和8年度診療報酬改定で薬局に関係する項目は、調剤基本料、体制加算、在宅、対人業務、医療DX、選定療養、ベースアップ評価料まで広く及びます。今回は、個別項目ごとに点数が動いたというより、薬局の機能をより具体的に評価する方向が強まった改定です。
まずは全体像をつかみ、自局に影響の大きい論点から順に深掘りし、届出・患者説明・記録運用まで落とし込むことが、今回の改定対応ではいちばん大切です。



