同じジアゼパムでも、内服薬と坐剤では保険上の投薬日数の上限が異なります。「向精神薬は30日まで」と薬効だけで覚えると、剤形の違いや新薬の例外を見落としかねません。
確認する順番は、製品を特定し、告示の成分名と剤形を照合してから、新薬の期間・例外と処方全体を見ることです。この記事では、薬剤師が根拠を残すための7項目に整理します。確認日:2026年10月6日。
保険上の上限は、患者さんに必要な投薬量を決める唯一の基準ではありません。療担規則は、予見できる必要期間に応じた投薬を原則としています。上限までの長期処方を一律に勧めるものではありません。
もくじ
投薬日数の上限を確認する7項目

| 項目 | 確認すること | 記録する内容 |
|---|---|---|
| 1 製品を特定 | 販売名、規格、成分名、剤形 | 内服薬・外用薬・注射薬の区分 |
| 2 告示を照合 | 第十第二号の14日・30日・90日の指定 | 該当する項と成分・剤形 |
| 3 新薬の期間を確認 | 薬価収載日、起算点、制限の終了時期 | 収載時の通知と確認日 |
| 4 例外条件を確認 | 除外品目、日数条件、品目別の通知 | 例外の適用条件を省略しない |
| 5 実際の用法と照合 | 1回量、使用間隔、総量、電子添文の期間制限 | 日数と錠数・枚数を区別 |
| 6 リフィル対象を確認 | 日数制限のある薬など、対象外の薬がないか | 処方内容と必要な照会 |
| 7 疑義を確認し共有 | 上限超過、用法不明、資料間の不一致 | 照会内容、回答、根拠資料 |
この表は実務上の確認メモです。個別の請求可否を自動判定する表ではありません。告示・通知の探し方は、厚労省の告示・通知・疑義解釈を確認する手順も参考にしてください。
1.根拠は療担規則と掲示事項等告示
保険医療機関及び保険医療養担当規則第20条第2号ヘ・トが、指定された薬について1回14日分・30日分・90日分の上限を定めています。具体的な対象は、掲示事項等告示(平成18年厚生労働省告示第107号)の第十第二号で確認します。
- 14日の区分には、30日・90日の区分に該当しない麻薬・向精神薬と、一定期間内の新医薬品が規定されています。
- 30日・90日の区分は、告示に掲げる成分・配合剤と剤形で照合します。
- 新医薬品には、除外や品目別の条件があります。基本の3区分だけで判断を終えません。
「麻薬・向精神薬・新医薬品のどれでもなければ、必ず上限なし」と逆算するのも避けます。例えば告示の30日の区分は、コデインリン酸塩などを含有する内服薬を指定しています。麻薬としての取扱いと保険上の日数は、別々に確かめる必要があります。
2.同じ成分でも剤形を変えると再確認が必要
告示は内服薬、外用薬、注射薬を分けて指定しています。代表例は次のとおりです。個別製品では新薬の条件や電子添文も併せて確認します。
| 成分 | 内服薬 | 外用薬 | 注射薬 |
|---|---|---|---|
| ジアゼパム | 90日 | 14日 | 14日 |
| フェノバルビタール | 90日 | 14日 | 14日 |
| フェンタニル/フェンタニルクエン酸塩 | 舌下錠・バッカル錠は14日 | 告示で指定する外用薬は30日 | フェンタニルクエン酸塩を含有する注射薬は30日 |
| ブプレノルフィン(塩酸塩を含む) | 本表では扱わない | 14日 | 30日 |
この表は処方日数の比較で、同じ列の薬が同じ目的に使えるという意味ではありません。成分が同じだからといって剤形を置き換えられるわけでもありません。
3.新薬は「収載翌月から制限が始まる」と読まない
新医薬品の原則14日制限は、薬価収載日の属する月の翌月初日から起算して1年を経過していないものが対象です。これは終了時期を数える規定であり、収載した月だけ長期処方が自由になるという意味ではありません。厚生労働大臣が別の期間を指定する場合や、除外もあります。
例えば2026年8月に収載された対象薬なら、通常は2027年8月末までを確認します。ただし、同じ有効成分の既収載品との関係など、収載時の通知で14日制限を適用しない旨が示される製品もあります。販売開始日だけで計算せず、通知を確認してください。
4.例外は「制限なし」とは限らない
例外には日数の条件があります。2026年8月12日の厚労省通知では、マルシロン配合錠について、原則14日の制限を特例的に20日として扱うことを示しています。
マルシロン配合錠の電子添文25.2にも、2027年8月末日までは1回20日分が限度と記載されています。治療で連続服用する期間と、1回に処方できる量の上限を混同しないことがポイントです。
除外品目を固定した総数で覚えるより、実際の製品が該当するかを最新の告示・収載通知で確認します。法令等データベース本文に改正が反映される前でも、個別の改正通知が先に掲載されていることがあります。
5.日数と個数、保険と電子添文の制限を分ける
日数の上限を、錠数や貼付枚数へそのまま置き換えないようにします。特に頓用、複数規格の併用、数日ごとに使う製剤では、処方された用法と総量を確認する必要があります。
例えば、使用間隔が長い貼付剤も、上限の日数だけから「必ず○枚まで」とは決められません。規格と1回に使う枚数を含む処方内容を確認します。用法が不明なときは、薬局側の推測だけで使用日数を決めず、処方医へ確認します。
また、保険上の14日・30日・90日の指定がなくても、電子添文に投与期間や継続時の注意がある場合があります。エーザイのルネスタに関する公式Q&Aは、投薬期間制限が定められていないことと、漫然とした長期使用を避ける注意を併記しています。「制限なし」を「依存性の心配がない」「自己判断で続けてよい」と説明しないでください。
6.日数制限がある薬はリフィルの対象外
掲示事項等告示第十の二と、2026年3月27日付の留意事項通知(訂正反映版)第10の2は、投薬期間に上限のある医薬品をリフィル処方箋で処方できない対象としています。
同通知は、一定の鎮痛・消炎の効能・効果を持つ貼付剤も対象外としています。すべての貼付剤が一律に対象外という意味ではありません。受付時には、リフィル可の表示だけでなく、実際の薬剤も確認します。
7.上限を超える処方は、理由と根拠を照会する
処方日数に疑義があれば、まず製品・剤形・用法と照合し、根拠資料を示して処方医へ確認します。端数の日数だから意図的、ほかの薬と同じ日数だから誤り、といった推測では決めません。特殊な事情による取扱いを検討する場合も、対象薬と適用条件、必要な記載を請求担当者などと確認します。
「この製品は、確認した告示では1回の投薬量に上限があります。今回の用法と日数、処方のご意図を確認させてください。参照した資料は○年○月の○項です。」
照会後は回答だけでなく、確認した告示・通知の版、該当項目、調剤内容への反映まで残すと、次の担当者が判断を追いやすくなります。
よくある質問
ダイアップ坐剤も、ジアゼパムなので90日ですか
ジアゼパムの90日指定は内服薬です。坐剤は同じ区分に含まれず、原則14日分の区分で確認します。頓用の個数をどう評価するかは、処方された用法と併せて確認してください。
新薬は1年たてば、必ず日数制限がなくなりますか
新薬としての期間制限と、麻薬・向精神薬などの指定による制限は別です。新薬の期間が終わっても、別の指定に該当すればその上限が残ります。
90日の区分なら、毎回90日処方してよいですか
上限の日数と、患者さんに必要な処方期間は別です。療担規則の必要期間の原則に加え、患者さんの状態、電子添文、残薬、重複処方などを確認します。
制度の確認を、相談できる仕組みにする
薬剤師として経験を積むときには、日数を暗記するだけでなく、根拠を探し、照会し、変更点を共有する力も振り返りたいところです。資料を調べる時間、相談する担当者、改正を共有する場所を職場で決めておくと、個人の記憶に頼りきらない運用を考えられます。
情報収集の方法を増やしたい方は、m3.comの薬剤師向け情報サービスを紹介した記事も参考にしてください。ニュースで気づいた変更は、最終的に公式の告示・通知で適用日と条件を確かめます。
参考資料と確認範囲
- 療担規則第20条第2号ヘ・ト、第3号ロ。
- 掲示事項等告示第十第二号、第十の二。本文のリンク先と、2026年8月12日付の収載通知を併用。
- 保医発0327第6号、2026年3月27日付(厚労省の2026年度改定ページにある7月30日訂正反映版)、第10の4・第10の2。
- マルシロン配合錠の電子添文25.2。ルネスタの製造販売元Q&A(ページ更新表示2023年8月24日)。
本記事は確認方法と代表例の解説であり、全医薬品の一覧や全数集計ではありません。個別の保険請求は、処方内容と最新の通知を照合し、判断に迷う場合は請求担当者や審査支払機関等へ確認してください。

