「この薬、食後でいいですか」と聞かれたときは、処方された飲み方と、その製剤の電子添文を確認します。
同じ成分でも剤形で食事の条件が変わり、用法の欄とは別の場所に注意点が書かれていることもあります。
服用タイミングは、電子添文の6項だけで判断せず、7項と14項も併せて確認します。
食事との間隔、就寝や起床の時刻、水量、他の薬との間隔を分けて読み、患者の生活の中で実行できるかを確かめます。
2026年9月21日に、PMDAの電子添文24製剤を読み比べました。
服用条件の違いを示すために選んだ例であり、医薬品全体の分布を示す調査ではありません。
表中の販売名から、確認した電子添文PDFを開けます。
電子添文の探し方は、PMDAで電子添文を検索する方法にまとめています。
もくじ
食前と食後、食間の目安
日本薬剤師会の「くすりの正しい使い方」一般向けスライドでは、次のように説明されています。
これは一般的な目安です。製剤固有の条件と処方時の指示を、一般的な目安に置き換えないでください。
| 用語 | 一般的な目安 |
|---|---|
| 食前 | 食事の30分から1時間前 |
| 食後 | 食事を終えてから30分以内 |
| 食間 | 前の食事から約2時間後。食事をしている最中ではありません。 |
| 就寝前 | 一般向け資材では就寝の30分から1時間前。ただし、就寝直前と指定される薬には、その条件を優先します。 |
「食直前」「食直後」「空腹時」は、薬ごとの説明も確認します。
例えばグルファスト錠の毎食直前は、電子添文7.1で食事の5分以内前とされています。
リベルサス錠では、空腹時という条件に加えて、水量と服用後の待機時間が定められています。
6項と7項、14項を併せて読む理由
厚生労働省の電子添文の記載要領では、6項は承認された用法と用量、7項はその範囲内で必要な条件や調節上の注意を記載する項目です。
記載要領の留意事項では、14.1「薬剤交付時の注意」に患者への指導事項を記載するとされています。
| 確認する場所 | 服用タイミングに関する例 |
|---|---|
| 6. 用法及び用量 | グルファスト錠の毎食直前、ベルソムラ錠の就寝直前など。 |
| 7. 用法及び用量に関連する注意 | グルファスト錠の5分以内、ベルソムラ錠の食直後回避、リベルサス錠の水量など。 |
| 14. 適用上の注意 | ミカルディス錠14.1.2の、食後に飲んでいる患者への継続した食後服用の指導など。 |
記載場所は、注意を守る重要度の順位ではありません。
6項に時刻があっても、7項に追加条件がある薬があります。
処方箋にどこまで書かれるかも項番だけでは決まりません。実際の処方箋と患者が受けた説明を確認します。
必要に応じて、2項の禁忌、10項の相互作用、16項の薬物動態も読みます。

24製剤で確認した服用条件
以下は服用条件を確認するための表です。投与量や適応別の用法を網羅した処方一覧ではありません。
販売名にある規格は確認対象を示し、1回量を意味しません。
処方監査では対象の適応、年齢、用量、剤形まで確認してください。
| 確認した製剤と電子添文 | 食事や時刻の記載 | 併せて確認する点 |
|---|---|---|
| ベイスン錠0.2 | 6項:毎食直前 | グルファスト錠の「5分以内」という記載を、そのまま本剤の添文記載として引用しない。 |
| グルファスト錠5mg | 6項:毎食直前/7.1:5分以内 | 食後では効果が減弱し、早すぎる服用では食事開始前の低血糖のおそれがある。 |
| イトリゾールカプセル50 | 6項:食直後 | 回数は適応や治療法で異なる。内用液との切り替えには7.1の注意もある。 |
| イトラコナゾール内用液1%「VTRS」 | 6項:空腹時 | カプセルと同じ条件で説明しない。 |
| ブイフェンド錠50mg | 6項:食間 | 成人と小児、初日と2日目以降などで投与量を確認する。 |
| リファジンカプセル150mg | 6項:原則として朝食前空腹時 | 適応別の回数や併用療法も確認する。 |
| ボナロン錠5mg | 6項:毎朝起床時 | 水量、飲食と他剤の待機時間、横にならない条件を併読する。 |
| ベネット錠2.5mg | 6項:起床時 | 7項の立位または坐位での服用なども確認する。 |
| リカルボン錠1mg | 6項:起床時 | 水またはぬるま湯。飲食、他剤、姿勢の条件を併読する。 |
| ラミシール錠125mg | 6項:食後 | 肝障害などの警告や検査も別途確認する。 |
| オフェブカプセル100mg | 6項:朝食後と夕食後 | 規格と1回量を混同しない。通常量と減量時の用量がある。 |
| メトグルコ錠250mg | 6項:食直前または食後 | 適応別の用量を確認し、患者が実際に指示された用法と照合する。 |
| ザイザル錠5mg | 6項:成人は就寝前、7歳以上15歳未満は朝食後と就寝前 | 年齢と用量を確認する。小児用のシロップと混同しない。 |
| ムコスタ錠100mg | 6項:胃潰瘍では朝、夕、就寝前 | 胃炎の胃粘膜病変では同じ時刻指定ではない。 |
| ベルソムラ錠 | 6項:就寝直前/7.2:食事と同時、食直後を避ける | 服用時刻と食事の条件を両方確認する。 |
| デエビゴ錠 | 6項:就寝直前/7.3:食事と同時、食直後を避ける | 一般的な就寝前の目安で説明を置き換えない。 |
| リベルサス錠 | 7.1:その日最初の食事や飲水の前、空腹時 | 水量、服用後30分以上の待機、他剤との間隔も確認する。 |
| ミカルディス錠 | 14.1.2:食後に服用している患者は毎日食後に | 食後から空腹時へ自己判断で変更しない。 |
| チラーヂンS錠50μg | 6項に食事や時刻の指定なし | 吸収への影響や相互作用がないという意味ではない。 |
| ジャヌビア錠25mg | 6項に食事や時刻の指定なし | 現在の処方と患者の服用方法を確認する。 |
| フォシーガ錠5mg | 6項に食事や時刻の指定なし | 適応と患者の状態に応じた処方監査は必要。 |
| クレストール錠2.5mg | 6項に食事や時刻の指定なし | Cmaxの変化だけで時刻を変更しない。 |
| アムロジン錠2.5mg | 6項に食事や時刻の指定なし | 同じ降圧薬という理由で他剤へ一般化しない。 |
| タケキャブ錠10mg | 6項に食事や時刻の指定なし | 除菌療法などでは併用する薬の用法も確認する。 |
この24製剤では、6項に食事または時刻の指定がある例は16製剤です。
ベルソムラ錠とデエビゴ錠には6項の就寝直前と7項の食事条件が併存するため、「7項だけに服用タイミングがある薬」には分類できません。
残る8製剤には、リベルサス錠、ミカルディス錠、表の末尾6製剤が含まれます。
この件数から、処方箋の記載不足や見落としの割合を推計することはできません。
イトラコナゾールは剤形ごとに確認
カプセルは食直後、内用液は空腹時です。
内用液の電子添文には、空腹時に服用した内用液と食直後に服用したカプセルの成績を比較し、内用液のバイオアベイラビリティが高かったと記載されています。
両剤形の同等性を示す結果ではありません。
服用時刻を変えるだけで、両剤形を同じように使えるわけではありません。
カプセルの7.1では、内用液からカプセルへの切り替えは血中濃度が低下することがあり、所定の場合を除いて原則行わないとされています。
変更処方では、剤形、適応、用量、変更理由、食事条件を処方医と確認します。
就寝直前と食直後の回避は別の条件
ベルソムラ錠とデエビゴ錠は、6項で就寝直前の服用を指定しています。
それに加えて7項では、入眠効果の発現が遅れるおそれがあるため、食事と同時または食直後の服用を避けるよう求めています。
遅い夕食の直後に寝る患者では、両方の条件をどう満たすか確認が必要です。
「食後から一律に何時間空ける」と、この記載だけで数字を決めることはできません。
夕食時刻と就寝時刻を聞き、必要に応じて処方医に相談します。
夜間に起きて活動する可能性がある場合の注意も確認してください。
薬剤選択や他の注意点は、睡眠薬の種類と使い分けで整理しています。
リベルサスの水量と待機時間
リベルサス錠の7.1では、その日最初の食事や飲水の前に、空腹の状態で、約120mL以下の水とともに処方された規格を1錠服用するよう指定されています。
服用時と服用後少なくとも30分は、飲食と他の薬の経口摂取を避けます。
分割、粉砕、かみ砕きもできません。
「空腹時に飲む」だけでは説明が足りません。
朝に飲む他の薬も確認し、同時に服用しないように説明します。
ビスホスホネートなど、先に服用する条件が重なる薬がある場合は、単純な順番をこの記事から決めず、処方医と服用計画を調整します。
糖尿病治療薬全体は、2型糖尿病治療薬の使い分けを参照してください。
起床時の3製剤は水量と姿勢も確認
ボナロン錠5mg、ベネット錠2.5mg、リカルボン錠1mgは、いずれも起床時に服用する毎日製剤です。
週1回や月1回の製剤へ、そのまま条件を当てはめないでください。
| 確認点 | ボナロン錠5mg | ベネット錠2.5mg | リカルボン錠1mg |
|---|---|---|---|
| 飲む液体 | 水約180mL | 水約180mL | 水またはぬるま湯、約180mL |
| 飲食と他の内服薬 | 服用後少なくとも30分は避ける(水を除く) | 服用後少なくとも30分は避ける(水を除く) | 服用後少なくとも30分は避ける(水を除く) |
| 横にならない条件 | 服用後少なくとも30分。7.2では最初の食事を終えるまで横にならない。 | 服用後少なくとも30分。7項には立位または坐位での服用も記載。 | 服用後少なくとも30分。 |
| 起床前や就寝時 | 服用しない | 服用しない | 服用しない |
いずれも、少なくとも30分間上体を起こしていられない患者に関する禁忌があります。
「坐位」という単語の有無だけで、寝たまま飲める薬と判断しないでください。
食道障害や嚥下状態も確認します。
リカルボン錠には「ぬるま湯」が明記されています。
他の2製剤の「水」という表現だけから、白湯の温度による可否までは断定できません。
温度や飲みやすさの相談がある場合は、製造販売元の説明も確認します。
治療全体については、骨粗鬆症治療薬の使い分けを参照してください。
薬物動態の数字だけで用法を変えない
Cmaxは最高血中濃度、AUCは血中濃度を時間で積分した指標です。
AUCは薬への曝露の程度を示し、吸収量そのものと常に同じ意味ではありません。
| 電子添文の例 | 食後と空腹時の比較 |
|---|---|
| フォシーガ錠 | 10mg単回投与の外国人データ。食後/空腹時の幾何平均比はCmax 0.550、AUCinf 0.973。 |
| ジャヌビア錠 | 50mg単回投与。食後のCmaxは37%増加し、AUCとTmaxには差なし。 |
| クレストール錠 | 食後のCmaxは20%低下、AUCは空腹時の94%。 |
これらの6項に食事時刻の指定がないことは確認できます。
ただし、「AUCが変わらないから食事指定は不要」という一般ルールを導くことはできません。
試験条件、有効性、安全性、作用発現の速さなども関わります。
電子添文の条件を変更する判断は、CmaxやAUCの一つの値だけで行いません。
チラーヂンS錠も6項に食事時刻の指定はありませんが、相互作用や吸収への影響の確認が不要になるわけではありません。
具体的な確認点は、甲状腺薬3成分の処方監査にまとめています。
ミカルディスは現在の食後服用も確認
ミカルディス錠の14.1.2は、食後に服用している患者に対し、毎日食後に服用するよう注意を与えるとしています。
空腹時には食後より血中濃度が高くなり、副作用が現れるおそれがあるためです。
「毎日同じなら、どの飲み方でも問題ない」とは説明できません。
今の処方と食事の取り方を確認し、欠食する日がある場合の対応も相談しておきます。
6項に食事の記載がなくても、14項の指導事項が必要な例です。
薬局で使う服用条件の共有シート
添文の項番、患者が実行できる条件、説明後の確認をつなぐための記録例です。
薬局内の薬歴や共有様式に合わせて使います。
| 確認すること | 記録する内容 |
|---|---|
| 製剤と処方 | 販売名、規格、剤形、適応、処方された用量と用法 |
| 一次資料 | 電子添文の改訂年月、確認した項番、食事と時刻の条件 |
| 追加の条件 | 水量、姿勢、待機時間、併用薬との間隔 |
| 生活との照合 | 食事時刻、欠食、就寝時刻、現在の飲み方、実行の難しさ |
| 確認と説明 | 処方医への確認内容と回答、患者に説明した飲み方 |
| 次回確認 | 実際にできたか、飲み忘れ、副作用が疑われる症状など |
電子添文の記載要領を理解し、製剤ごとの条件を生活に合わせて説明する力は、服薬指導やDI業務の基礎になります。
確認した根拠と対応を記録すれば、担当者が替わったときの引き継ぎや、薬局内の教育にも使えます。
よくある質問
食間は食事中ですか。
食事中ではありません。一般的には前の食事から約2時間後を指します。製剤固有の条件と処方時の説明も確認してください。
食事指定がない薬なら、好きな時刻に飲めますか。
6項に指定がないだけでは判断できません。7項、14項、相互作用、現在の処方、他の薬との組み合わせを確認します。自己判断で服用時刻を変えないよう案内します。
ビスホスホネートは白湯で飲めますか。
リカルボン錠1mgはぬるま湯も明記されています。他の製剤は個別に確認します。「水」との表記だけで温度の可否を断定せず、必要に応じて製造販売元に確認してください。
一包化した薬の服用時刻を変えてよいですか。
袋に入った全製剤の条件を確認します。処方された用法の変更や疑義がある場合は、処方医に確認し、確認内容を記録します。一包化の対象を考える際は、一包化が向く患者と向かない患者も参考になります。
24製剤の件数から薬全体の傾向がわかりますか。
わかりません。記載の違いを示すために選んだ製剤です。服用タイミングが処方箋に書かれる割合や、薬局での見落とし率を表す数字ではありません。
改訂情報を説明と記録につなぐ
電子添文は改訂されるため、過去に覚えた条件だけで説明せず、最新の記載を確認します。
電子添文の更新ログと朝礼メモを使い、変更点を薬局内で共有してください。
専門情報の収集先を検討する場合は、m3.comの特徴と薬剤師向けの使い方も参考になります。
配信記事で疑問が生じた場合も、判断の根拠は電子添文や公式資料に戻って確認します。
参考一次情報
製剤別の電子添文は上の24製剤表から参照できます。
PMDAの医療用医薬品情報検索で、最新の改訂状況も確認してください。
- 厚生労働省「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」(2021年6月11日、薬生発0611第1号)
- 厚生労働省「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項について」(2017年6月8日、2023年2月17日最終改正の掲載資料)
- 日本薬剤師会「くすりの正しい使い方」一般向けスライド
本記事は薬剤師向けの確認資料です。個々の患者の服用方法は、処方医と担当薬剤師の指示に従ってください。

