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制吐薬の使い分け|ドンペリドン、メトクロプラミドとCINVの処方監査

制吐薬の使い分け。不整脈と血糖管理を確認する薬剤師

2026年8月25日、ナウゼリン(ドンペリドン)とプリンペラン(メトクロプラミド)の「重大な副作用」に「重篤な不整脈」が追記されました。
改訂の理由は、匿名医療保険等関連情報データベースを用いたリスク評価で、両剤に重篤な不整脈のリスクが示唆されたことでした。

制吐薬は「吐き気止め」とひとくくりにされがちですが、実際には作用する受容体も、適応も、注意すべき患者背景も薬剤ごとに異なります。
慢性胃炎の消化器症状と、シスプラチンによる悪心や嘔吐の予防では、処方の目的と確認事項が異なります。

薬剤師の処方監査では、原因の確認に加えて、症状が出たときの頓服か、予防のために決められた日数を使う薬かを区別します。
薬剤ごとの電子添文と学会資料を基に、比較表、監査7項目、患者説明の例を整理しました。
改訂全体は8月25日の使用上の注意改訂記事を参照してください。

📌 この記事でわかること

  • 嘔吐に関わる経路と、制吐薬の作用を理解するための整理
  • 2026年8月25日改訂でドンペリドンとメトクロプラミドに追記された内容と、両剤の差
  • 抗がん薬による悪心、嘔吐(CINV)の4剤併用と、オランザピンの位置づけ
  • オランザピンの糖尿病の扱いが「効能ごとに分かれた」という2026年8月の変更点
  • オピオイド開始時、乗り物酔い、小児、妊娠期それぞれの考え方
  • 処方監査で確認する7項目と、服薬指導での伝え方

制吐薬を確認する順序

悪心や嘔吐の原因は、薬剤、消化管の病気、前庭系の刺激、不安などさまざまです。
複数の原因が重なることもあり、受容体の対応だけで処方を決めることはできません。

  1. 原因と処方目的を確認する。
    頓服、消化管症状の治療、抗がん薬治療に伴う予防を区別する。
  2. 製品と剤形の適応、用法を照合する。
    同じ成分でも錠剤、注射剤、坐剤では記載が異なる。
  3. 患者背景と併用薬を確認する。
    禁忌、心疾患、腎機能、年齢、妊娠、糖尿病などを照合する。
制吐薬の確認順。
処方目的、製品と剤形、患者背景、患者説明を確認する
確認順を整理した図です。
個別の処方判断は、電子添文と治療計画を照合して行います。

嘔吐に関わる経路と薬の作用

嘔吐には、血中の刺激を受けるCTZ(化学受容器引き金帯)、消化管などからの神経刺激、前庭系、大脳皮質や辺縁系が関わります。
以下は作用を理解するための簡略な整理です。

主な経路、場面 作用の整理 実務上の注意
CTZへの刺激 ドパミンD2受容体などが関与。
ドンペリドンとメトクロプラミドはD2遮断作用を持つ。
血中の薬剤などによる嘔吐でも、原因薬の評価を省かない。
消化管運動の低下、消化管からの刺激 2剤とも消化管運動を改善する。
メトクロプラミドには5-HT4受容体刺激作用などの関与も示唆される。
CINVでは5-HT3受容体も治療標的となる。
消化管出血、閉塞、穿孔など、運動亢進が不適切な病態を確認する。
前庭系の刺激、乗り物酔い H1受容体やムスカリン受容体への作用を利用する。 市販の酔い止めは製品ごとに成分と相談事項を確認する。
不安や過去の治療体験に伴う予期性悪心 抗がん薬投与前から生じる悪心では、抗不安薬などを補助的に用いることがある。 急性期と遅発期の悪心を十分に予防することも大切。
一般的な吐き気に抗不安薬を勧める趣旨ではない。

出典:ナウゼリン錠5/10の電子添文(2026年8月、第3版)プリンペラン錠5の電子添文(2026年8月、第4版)日本癌治療学会の2023年版ガイドライン英語版(2024年公表)米国国立がん研究所の悪心と嘔吐に関する医療者向け解説
海外資料は機序の説明に限り参照し、国内の適応と用法は電子添文で確認します。

2026年8月25日の改訂でドンペリドンとメトクロプラミドは何が変わったか

2026年8月25日付で、ドンペリドンおよび塩酸メトクロプラミド、メトクロプラミドの使用上の注意が改訂されました。
改訂の内容は2点です。

⚠️ 2026年8月25日改訂の内容(PMDA公表資料より)

  1. 「8. 重要な基本的注意」の項に重篤な不整脈に関する注意を追記
  2. 「11. 副作用」の「11.1 重大な副作用」の項に「重篤な不整脈」を追記

改訂の理由は、匿名医療保険等関連情報データベースを用いたドンペリドンまたはメトクロプラミドによる致死性不整脈イベント発現のリスク評価の結果、両剤において重篤な不整脈のリスクが示唆されたと判断されたためです。

電子添文(電子化された添付文書)に実際に追記された文言のうち、薬局の実務に直結するのは「必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しないこと」という一文です。
ドンペリドンの電子添文(8.3)とプリンペラン錠5の電子添文(8.4)に、いずれも同じ趣旨で記載されています。

両剤とも、必要な範囲で使用して漫然と継続せず、不整脈を疑う症状があれば速やかに受診するよう説明すること、症状に応じて心電図などの検査を行うことが記載されています。
すべての患者に一律の日数制限や定期心電図検査の間隔を定めたものではありません。

出典:PMDAの改訂理由と対象製剤ナウゼリン錠5/10の電子添文(2026年8月、第3版)の8.3、プリンペラン錠5の電子添文(2026年8月、第4版)の8.4。

ドンペリドンとメトクロプラミドの違いを整理する

比較対象はナウゼリン錠5/10とプリンペラン錠5です。
下表は主な相違点であり、注意事項の全項目を示すものではありません。

項目 ドンペリドン(ナウゼリン) メトクロプラミド(プリンペラン)
血液脳関門の通過 通過しにくい。
ただし錐体外路症状は重大な副作用として記載されている。
中枢性の抗ドパミン作用に注意。
錐体外路症状や長期投与での遅発性ジスキネジアがある。
禁忌 成分過敏症、消化管出血、機械的イレウス、消化管穿孔、プロラクチン分泌性の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ) 成分過敏症、褐色細胞腫またはパラガングリオーマの疑い、消化管の出血、穿孔、器質的閉塞
心疾患のある患者 9.1.1にQT延長への注意がある。
心疾患とQT延長の注意自体は2016年からの記載で、今回の新設ではない。
心疾患を特定した9.1項の記載はないが、8.4と11.1.6に重篤な不整脈の注意がある。
記載の差は心疾患患者への安全性を保証しない。
重大な副作用(抜粋) ショック、アナフィラキシー、錐体外路症状、意識障害、痙攣、重篤な不整脈 ショック、アナフィラキシー、悪性症候群、意識障害、痙攣、遅発性ジスキネジア、重篤な不整脈
代謝、排泄 主にCYP3A4で代謝。
強力または中程度の阻害薬との併用に注意する。
腎機能障害、肝機能障害にも注意がある。
主に腎排泄(腎機能障害で高い血中濃度が持続するおそれ)
小児の注意(抜粋) 1歳以下は用量に注意、3歳以下は7日以上の連用を避ける 過量投与にならないよう注意、錐体外路症状が発現しやすい
パーキンソン病 レボドパ製剤投与時の消化器症状に適応あり(1回5〜10mgを1日3回食前) 中枢のD2遮断により症状を悪化させうるため、処方意図の確認が必要

ナウゼリンのQT延長の注意は協和キリンのナウゼリン改訂履歴の2016年7〜8月の記録でも確認できます。
2026年8月は、重篤な不整脈について8項、11項などの注意が追加、整備された改訂です。

プリンペラン錠5は、1錠中メトクロプラミド3.84mg(塩酸メトクロプラミドとして5mg)です。
電子添文の通常成人用量はメトクロプラミドとして1日7.67〜23.04mgを2〜3回に分けて食前に服用し、製剤量では1日2〜6錠です。
製品名の「5」と成分量の換算を混同しないようにします。
年齢や症状による調整は処方指示で確認してください。

パーキンソン病患者に吐き気止めが出たときの考え方は、この表の最終行が基本になります。心疾患や併用薬も合わせて確認します。
ドンペリドンは血液脳関門を通過しにくく、レボドパ製剤投与時の消化器症状という効能を持っています。
一方でメトクロプラミドは中枢のドパミンD2受容体を遮断するため、同じ「吐き気止め」でも役割が異なります。

制吐薬の副作用対応そのものについては、パーキンソン病治療薬の処方監査シートでも併用の観点を整理しています。
あわせて確認してください。

抗がん薬による悪心、嘔吐(CINV)の考え方

CINV(抗がん薬による悪心、嘔吐)の予防は、治療計画であるレジメンの催吐性リスクと患者背景を踏まえて組みます。
以下は日本癌治療学会2023年版ガイドラインの英語版に基づく、注射抗がん薬の主な分類です。
頻度は予防制吐薬を使わない場合の、主に投与後24時間以内の嘔吐の目安で、予防治療後の発現率ではありません。

催吐性リスク 嘔吐発現頻度の目安 代表的な薬剤
高度(HEC) 90%を超える シスプラチン、AC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド)
中等度(MEC) 30%超〜90% カルボプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン
軽度 10〜30% パクリタキセル、ゲムシタビン、フルオロウラシル
最小度 10%未満 ベバシズマブ、ブレオマイシン

第3版では、高度催吐性リスクに対して5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾン、オランザピンの4剤併用が標準的な予防制吐療法として位置づけられました。
オランザピンの併用が難しい場合は、従来の3剤併用が選択肢として残ります。

中等度リスクでは5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの2剤が基本です。
カルボプラチンの目標AUCが4以上の場合はNK1受容体拮抗薬を加えた3剤を用いるなど、薬剤とレジメンによる違いがあります。
表中の単剤分類だけで、すべての併用療法の制吐処方を決めないようにします。

根拠:日本癌治療学会の2023年版ガイドライン英語版(2024年公表)のTable 4、BQ1、BQ3。
投与日数やデキサメタゾンの用量は、併用薬と治療計画を含めて確認します。

各系統の代表的な薬剤は次のとおりです。

  • 5-HT3受容体拮抗薬:グラニセトロン(カイトリル)、パロノセトロン(アロキシ)、ラモセトロン(ナゼア)
  • NK1受容体拮抗薬:アプレピタント(イメンド)、ホスアプレピタント(プロイメンド)、ホスネツピタント(アロカリス)
  • コルチコステロイド:デキサメタゾン
  • 多受容体作用抗精神病薬:オランザピン

オランザピンの糖尿病の扱いは2026年8月に効能ごとへ分かれた

オランザピンをめぐって、2026年8月に実務上の大きな変更がありました。
従来「糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者」は効能を問わず禁忌でしたが、改訂後の電子添文では禁忌の記載が効能別に分かれています。

効能 糖尿病患者への扱い(2026年8月改訂第4版)
統合失調症
双極性障害における躁症状、うつ症状の改善
禁忌のまま(2.5「糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者」)
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐) 糖尿病の患者とその既往歴のある患者について、当該効能では禁忌の対象から外れ、警告1.3で厳格な管理が求められる。
「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外は投与しないこと」とされ、投与前および投与期間中は毎日頻回の血糖モニタリング、投与後も血糖値が安定するまでモニタリングを継続、緊急時に十分対応できる体制を整えた上で投与、などの条件がある。

「オランザピンは糖尿病でも使えるようになった」とだけ覚えると、統合失調症の処方で判断を誤ります。
条件が緩和されたのはCINVの効能に限られ、しかも無条件ではありません。
9.1.10には「血糖コントロールが良好な患者にのみ投与すること」とあり、関連学会の最新のガイドライン等を参考にした上で患者の状態に応じて判断する旨が記載されています。

電子添文の条件に加えて、学会の運用上の注意も確認します。
日本癌治療学会の速報発信のお知らせ(2026年8月25日)では、糖尿病またはその既往がある患者は血糖が安定していることを確認し、入院下で血糖値に応じたインスリン調整(スライディングスケール)を行いながら化学療法を実施することが示されています。
糖尿病の新規判明や管理不良時、管理が難しかった後の次コース開始前には、内分泌内科や糖尿病内科へ相談します。

退院後も血糖が高い状態が続く場合は、観察する症状と緊急連絡先を患者に明示し、血糖管理を継続します。
薬局では「誰が測定結果を確認するか」「異常時にどこへ連絡するか」まで共有します。
具体的な血糖値の基準や管理方法は、最新の学会資料と治療施設の方針を確認してください。

血糖上昇の警告1.1、患者と家族への説明1.2は効能共通です。
CINV以外の吐き気への使用まで禁忌が解除されたと解釈せず、糖尿病のない患者でも高血糖や低血糖の観察が必要です。
その他の禁忌と併用禁忌もジプレキサ錠の電子添文(2026年8月、第4版)で確認してください。

用法についても確認しておきます。
CINVの効能では、他の制吐剤との併用において通常成人にオランザピンとして5mgを1日1回経口投与し、1日量は10mgを超えません。
7.2では、原則として抗がん薬の投与前に使用し、各サイクルの投与期間は6日間までを目安としています。
また5(効能又は効果に関連する注意)では、強い悪心、嘔吐が生じる抗悪性腫瘍剤の投与の場合に限り使用するとされています。

なお、ここで解除されたのは経口剤のCINV効能についてです。
抗精神病薬としてのオランザピンの処方監査は、抗精神病薬の処方監査で別途整理しています。

改訂情報の継続学習には、公式資料に加えて医療情報サービスを補助的に使う方法もあります。
m3.comの薬剤師向け利用案内も参考にしてください。
個別の処方判断は製品の電子添文と治療計画で照合します。

CINV以外の場面をどう考えるか

オピオイド開始時の悪心

日本緩和医療学会『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版』のCQ18は、「オピオイドが原因で、悪心、嘔吐のあるがん患者に対して、制吐薬の投与は推奨されるか」という問いに対し、制吐薬の投与を推奨する(推奨の強さ1、エビデンスの確実性C)としています。

ここで読み落としたくないのは、対象が「悪心、嘔吐のある患者」である点です。
同ガイドラインのデルファイ過程では、プロクロルペラジン、メトクロプラミド、ドンペリドンの錐体外路症状(アカシジア、パーキンソニズム)を重視して、オピオイド開始と同時に制吐薬を投与しないか、行っても短期間にとどめるという意見が多数あったことが記載されています。
全例への予防的な定期併用を推奨したものではありません。
特定薬の一律の第一選択や予防投与の中止を指示する記述でもありません。

制吐薬を投与しても悪心、嘔吐が緩和しないときは、CQ19として他のオピオイドへの変更や投与経路の変更が条件付きで推奨されています。
薬局で「吐き気止めを飲んでも吐き気が続く」と相談されたら、制吐薬を足す方向だけでなく、オピオイドスイッチングの選択肢を医師と共有する場面だと考えられます。
がん疼痛の全体像はがん性疼痛コントロール完全ガイドにまとめています。

乗り物酔い、前庭性のめまい

前庭器からの刺激による嘔吐には、H1受容体とムスカリン受容体をブロックする薬が使われます。
ジフェンヒドラミンなどを含む製品が使われます。
ドンペリドンやメトクロプラミドの電子添文には、乗り物酔いの適応はありません。
抗がん薬用の制吐薬を、そのまま市販の酔い止めの代わりと考えないようにします。

OTCでは成分と注意事項を製品ごとに確認します。
例えばエーザイのトラベルミン(大人用)製品情報では、緑内障や前立腺肥大の診断を受けた人、排尿困難の症状がある人などは服用前の相談対象です。
「相談すること」と「してはいけないこと」を混同せず、併用薬、年齢、妊娠、運転の予定も確認します。
抗ヒスタミン薬の世代別の性格は抗ヒスタミン薬の使い分けで詳しく整理しています。

小児の嘔吐

ドンペリドンは小児の周期性嘔吐症などに適応がありますが、適応と用量は剤形ごとに異なります。
錠剤の小児適応には周期性嘔吐症、上気道感染症、抗悪性腫瘍剤投与時の消化器症状があり、ドライシロップや小児用坐剤には乳幼児下痢症も含まれます。
錠剤の用量を坐剤へそのまま換算しないようにします。
ただし電子添文9.7には、特に1歳以下の乳児には用量に注意し、3歳以下の乳幼児には7日以上の連用を避けると明記されています。
脱水状態や発熱時には投与後の状態に特に注意することも記載されています。

小児では錐体外路症状、意識障害、痙攣が発現することがあるため、保護者に「けいれん、目が上を向いたまま戻らない、体のこわばりが出たら中止して受診」と具体的に伝えておくと動きやすくなります。
坐剤の扱い方は坐薬の使い方完全ガイドも、製品の説明書と照合して患者説明に活用できます。

妊娠期の悪心、嘔吐

ドンペリドンの電子添文9.5には、妊婦または妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること、動物実験(ラット)で臨床用量の約65倍の投与量(体表面積換算)で骨格、内臓異常等の催奇形作用が報告されていることが記載されています。
メトクロプラミドも同じく有益性投与の位置づけです。

妊娠悪阻の薬物療法は個別性が高く、この記事で「この薬なら安全」と断じられる領域ではありません。
実際の判断は産科主治医と情報を共有した上で行う必要があります。
相談を受けたときの整理の仕方は妊娠、授乳中の薬剤対応完全ガイドを参照してください。

処方監査で確認する7項目

下表は電子添文と学会資料を薬局の確認順に並べた編集上のチェックシートです。
正式な評価尺度ではありません。

確認項目 確認と共有の内容
1. 原因、適応、禁忌 処方目的を確認。
消化管出血、閉塞、穿孔などの禁忌を先に照合する。
メトクロプラミドは褐色細胞腫やパラガングリオーマの疑い、ドンペリドンはプロラクチノーマにも注意。
嘔吐の症状が隠れる可能性も確認する。
2. 製品、剤形、用量 年齢、体重、処方量、服用時刻を確認。
メトクロプラミドの成分量と塩換算、小児の剤形別用量を照合する。
妊娠や授乳の有無も確認。
3. 投与目的と期間 頓服と予防投与を区別し、開始日、継続理由、終了予定を確認。
長期処方を一律に否定せず、必要性を処方医と共有する。
4. 心疾患と症状 心疾患、心電図異常の既往、動悸や失神などの症状を確認。
両剤の不整脈注意を踏まえ、必要時は処方医へ連絡する。
5. 相互作用とパーキンソン病 CYP3A4阻害薬、QT延長が問題になる薬、抗ドパミン薬の重複を照合。
レボドパなどの治療内容も確認する。
阻害薬を薬効群だけで一律判定しない。
6. 腎機能、肝機能、脱水 メトクロプラミドの腎機能低下時の蓄積、ドンペリドンの肝機能障害と腎機能障害に注意。
高齢者、小児、脱水時の状態を確認する。
7. オランザピンの効能と血糖管理 CINVの目的か、糖尿病または既往があるかを確認。
投与量と日数、血糖測定、緊急対応、入院と退院後の管理計画を治療施設と共有する。

記録は「確認項目/患者から得た情報/処方医に照会した内容/回答/次回確認日」の形にすると引き継ぎやすくなります。
腎機能の整理には腎機能チェックシートも使えます。

服薬指導で何を伝えるか

服用を続ける日と、症状が出たときの対応を分けて説明します。
下記は薬剤師が処方指示を確認したうえで使う説明例です。

場面 説明例
頓服、定期服用、予防投与 「この薬はどの場面で飲むかを一緒に確認しましょう。
吐き気がない日も、予防のために決められた日数飲む薬があります。
自己判断で中止したり、手元の薬を追加したりせず、指示を確認してください。」
不整脈を疑う症状 「動悸、脈の乱れ、強いめまいや気を失うなどの症状があれば、速やかに医療機関へ連絡し受診してください。
意識を失うなど緊急の症状では救急対応が必要です。」
オランザピンと血糖の異常 「強いのどの渇き、水を多く飲む、尿が増える、冷汗や震えなどの症状が出たら、服用を中断してすぐに医師の診察を受けてください。
症状がなくても、決められた血糖測定を続けてください。」
服用時刻と運転 「薬袋に記載された時刻と日数を確認しましょう。」メトクロプラミドとオランザピンでは運転などの危険な機械操作を避ける指導が必要。
ドンペリドンも眠気やふらつきと運転への注意を説明する。

ナウゼリン錠の患者向医薬品ガイドでも、体調がよくなったという自己判断で中止、増減しないよう案内されています。
必要最小限の使用とは、治療上の必要性を医療者が見直すことであり、症状が消えたら一律に中止するという意味ではありません。
出典:ナウゼリン錠の患者向医薬品ガイド(2026年9月作成)プリンペラン錠5の電子添文(2026年8月、第4版)ジプレキサ錠の電子添文(2026年8月、第4版)

よくある質問

吐き気がなくなったら制吐薬をやめてもよいですか?

頓服か、定期服用か、予防投与かで異なります。
抗がん薬治療では症状がない日にも予防目的で使うことがあるため、終了日を含めて処方指示を確認します。

糖尿病があってもオランザピンを使えますか?

CINVの承認効能では、血糖が良好に管理され、治療上の利益が危険性を上回ると医師が判断する場合に限り検討されます。
頻回の血糖確認と緊急対応体制などが必要です。
統合失調症や双極性障害では、糖尿病とその既往は引き続き禁忌です。

ドンペリドンのQT延長への注意は今回初めて追加されたのですか?

いいえ。
心疾患のある患者のQT延長への注意は2016年の改訂履歴にもあります。
今回の改訂では、重篤な不整脈について重要な基本的注意と重大な副作用などの記載が整備されました。

改訂内容を職場で共有する

改訂日だけを伝えるより、「どの処方で、何を確かめるか」を監査表や患者説明の文面に反映すると、担当者が変わっても確認を引き継げます。
がん薬物療法に関わる薬剤師は、治療施設と血糖管理や連絡方法を共有する役割も担います。
こうした記録を症例検討や研修に用いることが、専門性を高める材料になります。

次の処方では、開始日、処方目的、終了予定を確認し、必要な患者背景と併用薬を電子添文へ戻って照合してください。

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参考情報

※2026年9月14日に確認した資料に基づく薬剤師向けの整理です。
個別の診断、処方変更、投与継続の判断は、最新の電子添文と治療施設の方針を確認して行ってください。

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