DOACの処方箋は、薬品名と用量を見ただけでは監査を終えられません。
心房細動に対する処方なのか、静脈血栓塞栓症(VTE)の治療なのかによって、同じ製剤でも用法が変わるからです。
退院後の初回処方であれば、治療を始めた日や維持量へ切り替える日も確認します。
薬局で迷ったときに手元で確認できるよう、2026年7月18日時点の国内電子添文と学会ガイドラインをもとに、監査の順序と薬歴に残したい項目を整理しました。
- 適応
- 開始日と治療段階
- 年齢、体重、CCr
- 併用薬と出血兆候
- 電子添文の改訂日
もくじ
処方箋と一緒に確認したい情報
最初に確認するのは、何の治療に使われているかです。
処方箋から適応を読み取れないときは、患者への聞き取り、診療情報提供書、処方元への照会で補います。
VTEでは治療開始日も必要です。
リバーロキサバンとアピキサバンには初期用量から維持量へ切り替える時期があり、エドキサバンでは非経口抗凝固薬による先行治療を確認します。
腎機能や体重は、処方時点に近い数値を使います。
退院時の検査値しか分からない場合は、その値を確認した日も薬歴に残しておくと、次回の処方監査で再評価しやすくなります。
DOACの国内適応
| 薬剤 | NVAF | VTE治療と再発抑制 | 確認したいこと |
|---|---|---|---|
| ダビガトラン | ○ | 国内適応なし | 海外のVTE用法と混同していないか |
| リバーロキサバン | ○ | ○ | VTEでは治療開始から何日目か |
| アピキサバン | ○ | ○ | VTEでは治療開始から何日目か |
| エドキサバン | ○ | ○ | 非経口抗凝固薬による先行治療があるか |
| ワルファリン | ○ | ○ | PT-INR、併用薬、食事内容に変化がないか |
※成人の主な適応を監査用に抜粋しています。エドキサバンには整形外科手術後のVTE発症抑制など、アピキサバンには特定の抗がん薬併用時のVTE発症抑制に関する適応と注意があります。
ダビガトランは、2026年7月18日時点の国内電子添文ではVTE治療の適応がありません。
海外の文献やガイドラインを参照したときに混同しやすいため、国内の処方監査ではPMDAの電子添文へ戻って確認します。
心房細動では減量基準を製品ごとに見る
| 薬剤 | 通常用量 | 減量時の確認 |
|---|---|---|
| ダビガトラン | 1回150mg(75mgカプセルを2カプセル)、1日2回 | 出血リスクが高い場合は1回110mg(110mgカプセルを1カプセル)、1日2回を考慮。CCr 30mL/min未満は禁忌 |
| リバーロキサバン | 15mg、1日1回、食後 | CCr 30〜49mL/minは10mg。CCr 15〜29mL/minでは、適応を慎重に判断したうえで10mg |
| アピキサバン | 5mg、1日2回 | 80歳以上、体重60kg以下、血清Cr 1.5mg/dL以上のうち2項目以上で2.5mg、1日2回 |
| エドキサバン | 体重60kg以下は30mg、60kg超は60mg、1日1回 | 体重60kg超でも腎機能とP-gp阻害薬を確認。CCr 15mL/min未満は禁忌 |
アピキサバンの減量基準は「3項目のうち2項目以上」です。
一方、エドキサバンは体重を起点に用量を見たうえで、腎機能とP-gp阻害薬の併用を確認します。
減量基準を「DOAC共通」として覚えると取り違えやすいため、製品ごとに電子添文と照合するほうが確実です。
VTEでは開始日が監査項目になる
| 薬剤 | 成人VTEの国内用法 | 薬局で確認する日付 |
|---|---|---|
| ダビガトラン | 国内適応なし | 適応を確認 |
| リバーロキサバン | 15mgを1日2回、食後、3週間。その後15mgを1日1回、食後 | 発症日、開始日、3週間後の切り替え日 |
| アピキサバン | 10mgを1日2回、7日間。その後5mgを1日2回 | 開始日、7日後の切り替え日 |
| エドキサバン | 適切な非経口抗凝固薬による初期治療後、体重60kg以下は30mg、60kg超は60mgを1日1回 | 先行治療の薬剤と期間、切り替え日 |
退院時の処方で初期用量が出ていても、処方日だけでは維持量へ切り替える日を判断できないことがあります。
その場合は発症日と治療開始日を確認し、次回の処方予定と合わせて薬歴に残します。
2025年VTEガイドラインでは、リバーロキサバンとアピキサバンを単剤で始める方法と、非経口抗凝固薬による初期治療後にエドキサバンへ切り替える方法を分けて記載しています。
ガイドラインで治療方針を確認し、国内の適応と用法用量は電子添文で照合します。
海外ガイドラインで示される減量継続法が、日本の承認用法と同じとは限りません。国内電子添文と異なる用量を見つけたときは、処方の背景を確認します。

薬歴は次回の監査で使える形にする
DOACの薬歴には、今回確認した内容だけでなく、次に確認する条件も残します。
- 適応:NVAF、VTE、その他の承認適応
- 治療日程:発症日、開始日、維持量への切り替え日
- 患者情報:年齢、体重、血清Cr、必要に応じてCockcroft-Gault式のCCr
- 処方内容:用量、回数、食事条件
- 安全性:併用薬、出血兆候
- 確認した資料:製品名、電子添文の改訂日、確認日
- 再確認の条件:脱水、体重変化、腎機能低下、入退院、併用薬の変更
腎機能別用量調整の確認手順と書式をそろえておくと、薬局内で見返しやすくなります。
検査値だけを記録するのではなく、「いつの値か」「次に何が変わったら再確認するか」まで書いておくのが実務上のポイントです。
退院処方を共有するときの記載例
- 適応:VTE
- 発症日:7月12日
- 薬剤:アピキサバン
- 初期用量の開始日:7月12日
- 維持量への切り替え予定日:7月19日
- 次回確認:処方量、用量、出血兆候、腎機能
- 参照資料:当該製品の電子添文(確認日を併記)
適応と日付を一緒に書くと、次に処方箋を受け取った薬剤師が治療段階を判断できます。
症例を朝礼や共有表に載せる場合は、院内と薬局内の規程に従い、共有に不要な個人情報を含めないようにします。
患者説明は製品ごとに確認する
出血が止まりにくい、黒色便、血尿、急な強い頭痛などがみられたときの連絡先と、自己判断で服用を中断しないことは、DOACを服用する患者に共通して伝えます。
一方、飲み忘れ時の対応、食事条件、カプセルの扱いは製品と用法によって異なります。
患者向医薬品ガイドなどを確認し、別のDOACで使っている説明をそのまま当てはめないようにします。
電子添文の改訂を継続して追うには、医療従事者向け情報サービスも利用できます。
m3.comの医療ニュースや医薬品情報を確認する場合も、処方監査の根拠はPMDAの最新版電子添文で確認してください。
ワルファリン処方で確認すること
DOACが広く使われるようになった現在も、ワルファリンを使う場面は残っています。
機械弁置換術後や高リスクの抗リン脂質抗体症候群など、DOACが適さず、ワルファリンが選ばれる場面があります。
腎機能が低下している患者では、薬剤や適応によって使用できる範囲と用量が異なります。腎機能と適応を確認したうえで、使える薬剤を判断します。
処方監査ではPT-INRだけでなく、抗菌薬などの併用薬や食事内容の変化も確認します。
DOACとは見る項目が異なるため、薬局の監査表では別欄にしておくと確認しやすくなります。
よくある質問
DOACの腎機能評価はeGFRだけでよいですか?
用量基準がCCrで示される製品では、Cockcroft-Gault式によるCCrを確認します。
高齢者や小柄な患者ではeGFRとCCrに差が出ることがあるため、参照している数値の種類を区別します。
ダビガトランは国内でVTE治療に使えますか?
2026年7月18日時点の国内電子添文では、ダビガトランの効能または効果は、NVAF患者における虚血性脳卒中と全身性塞栓症の発症抑制です。
国内ではVTE治療の適応がないため、海外の用法と混同しないようにします。
VTEの切り替え日は処方箋だけで分かりますか?
処方箋だけでは分からない場合があります。
発症日、治療開始日、入院中の先行治療を、患者への聞き取り、診療情報提供書、処方元への照会で確認します。
ガイドラインと電子添文はどう使い分けますか?
ガイドラインでは治療方針と推奨の根拠を確認し、電子添文では国内の承認適応、用法用量、禁忌を確認します。
監査で迷ったときの戻り先
DOACの用量に迷ったら、適応と治療段階を確認し、製品ごとの電子添文へ戻ります。
年齢、体重、CCr、併用薬を照合し、VTEでは開始日と切り替え日も記録します。
この順序を薬歴と共有表に残しておけば、次回の監査で同じ情報を一から集め直さずに済みます。
参考資料
- PMDA プラザキサカプセル 電子添文
- PMDA イグザレルト錠 電子添文
- PMDA エリキュース錠 電子添文
- PMDA リクシアナ錠 電子添文
- PMDA ワルファリンカリウム 製品情報
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会 2024年フォーカスアップデート版不整脈治療ガイドライン
- 日本循環器学会ほか 2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン
本記事は薬剤師の情報整理を目的としたもので、個別患者の診断や治療を代替するものではありません。電子添文とガイドラインは改訂されるため、実務では最新版をご確認ください。


