卸から自主回収のFAXが届き、文書に「クラスII」と書かれていたら、まず対象品と回収理由を確認します。
クラスは健康への危険性を判断する手がかりですが、それだけで患者への連絡や服用継続の可否まで決まるわけではありません。
回収連絡を受けたら、対象ロットを照合し、該当在庫を隔離するとともに、交付済みの患者への対応を確認します。
厚生労働省の分類の考え方、2026年度の掲載件数、実際の回収理由を確認したうえで、薬局の初動を7項目に整理します。
対応中の確認には薬局の初動7項目を利用してください。
実際の回収範囲と対応期限は、最新の回収文書と製造販売業者の案内を優先します。
もくじ
クラス分類が示す危険性と判断の手順
回収のクラス分類は、製品の使用などによって生じ得る健康への危険性の程度に応じた区分です。
厚生労働省の通知「医薬品・医療機器等の回収について」は、安全性だけでなく、期待される効果が得られないといった有効性への影響も含めて判断するよう定めています。
一方、分類を決める手順では、基本的にクラスIIに該当すると考えることが出発点です。
健康被害の原因になるとはまず考えられない積極的な理由があればクラスIIIへ、クラスIIより重篤な健康被害のおそれがあればクラスIへ分類します。
クラスIまたはIIIとする場合などには、理由を明確にして都道府県の薬務主管課等から厚生労働省へ事前に相談する扱いです。
この手順を「クラスIIは評価せずに付けられた記号」と読み替えることはできません。
同じクラスIIでも回収理由や対象範囲は異なるため、クラスと回収文書の具体的な記載を合わせて読む必要があります。
クラスI、II、IIIの違い
| 区分 | 健康への危険性(通知の要約) | 薬局で確認すること |
|---|---|---|
| クラスI | 使用などが重篤な健康被害または死亡につながり得る状況 | 管理者等へ速やかに共有し、交付済みも含めた回収範囲と必要な対応を確認する |
| クラスII | 一時的または医学的に治癒可能な健康被害の可能性がある状況、あるいは重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況 | 理由、対象ロット、想定される健康被害、患者対応の指示を確認する |
| クラスIII | 使用などが健康被害の原因になるとはまず考えられない状況 | 対象品の確認と回収への協力を行う。「対応不要」とは扱わない |
出典:厚生労働省の回収通知第2の3。
クラスは個別回収に付く区分であり、薬そのものの恒久的な安全性評価ではありません。
2026年度の回収一覧を集計すると
PMDAの2026年度一覧を2026年9月3日に確認し、回収番号1件を1件として集計しました。
対象は「医薬品(体外診断用医薬品を含む)、医薬部外品、化粧品」の3クラスの一覧です。
医療機器等の別一覧は含めていません。
| 区分 | 掲載件数 | 内訳 |
|---|---|---|
| クラスI | 34件 | 医薬品34件。全件が日本赤十字社の輸血用血液製剤 |
| クラスII | 88件 | 医薬品49件(うち体外診断用医薬品12件)、化粧品36件、医薬部外品3件 |
| クラスIII | 22件 | 医薬品16件(うち体外診断用医薬品14件)、化粧品6件 |
出典:PMDAの2026年度クラスI一覧、クラスII一覧、クラスIII一覧を当サイトで集計。
回収終了と表示されたものも含め、訂正履歴は別件として数えていません。
1件に複数の販売名やロットが含まれる場合があるため、品目数、ロット数、被害件数とは異なります。
掲載や訂正により件数は変わります。
クラスIの34件と「※」の意味
クラスIの内訳は、新鮮凍結人血漿25件、人血小板濃厚液6件、人赤血球液3件でした。
すべてに「※」があり、一覧の注記は、献血後情報に基づく未使用品の回収等で、同種他製品に不良が及ばず、当該品が使用されないことが確実な事例を示しています。
この集計は掲載品の内訳を示すもので、保険薬局に届く回収連絡の頻度を調べたものではありません。
「クラスIは保険薬局に関係しない」「クラスIIだけ見ればよい」とは判断できません。
取扱品に関係する回収は、クラスにかかわらず確認します。
クラスIIにも複数の種類の医薬品が含まれる
クラスIIの医薬品49件から体外診断用医薬品12件を除くと37件です。
この37件には医療用医薬品だけでなく一般用医薬品なども含まれ、すべてが保険調剤の対象品という意味ではありません。
クラスIIIに体外診断用医薬品が多いことも、それらを薬局が一律に扱わない根拠にはなりません。
例えば、クラスIIにはモビコール配合内用剤LDとHDが掲載されています。
次の比較では、この回収と炭酸水素ナトリウム静注の回収を取り上げ、同じクラスでも理由が異なることを確認します。
同じクラスIIでも異なる回収理由
次の2件はいずれも2026年8月31日が回収開始日です。
PMDAへの掲載日は、モビコールが8月31日、炭酸水素ナトリウム静注が9月1日です。
資料作成日、掲載日、回収開始日を混同しないようにします。
| 確認項目 | モビコール配合内用剤LD、HD | 炭酸水素ナトリウム静注7%PL「イセイ」 |
|---|---|---|
| 製造販売業者 | EAファーマ | コーアイセイ |
| 対象 | 5ロット。記載された出荷時期は2024年7月から2026年8月の範囲 | 6ロット。記載された出荷時期は2024年7月から2026年8月の範囲 |
| 回収理由の要約 | 一部ロットで、配合電解質に不均一な無機塩が混入した事象を確認 | 製剤製造所のGMP適合性調査申請に関する法令上の手続きに不備を確認 |
| 公表時点の業者の評価 | 主成分は規格内で有効性への影響はないと判断。電解質の量を踏まえ、重篤な健康被害のおそれはないと評価 | 出荷試験と安定性試験が規格内であることを確認し、重篤な健康被害のおそれはないと評価 |
| 原文の確認先 | PMDA回収番号2-12942、EAファーマのお知らせ | PMDA回収番号2-12946 |
健康被害に関する記述は製造販売業者が公表した評価の要約です。
当サイトが個々の患者の安全性を保証するものではありません。
対象ロットの全一覧を転載した表ではないため、実物との照合には必ず最新の原文を使用してください。
製品の成分に関する問題と、法令上の手続きの不備では、患者に説明する内容も異なります。
いずれも「クラスIIだから大丈夫」で済ませず、何が判明し、何を根拠に評価されているかを分けて伝えます。
両社は納入先を把握して通知、回収すると説明しています。
ただし、薬局への連絡がいつ届くかを保証する記載ではありません。
公表情報で自局の取扱品に気付いた場合は、卸からのFAXを待たずに対象の確認を始めます。
回収と供給に関する連絡を区別する
| 連絡の種類 | 意味と確認点 |
|---|---|
| 回収 | 製造販売業者等による製品の引き取りなど。通知上は医療機器等の改修や患者モニタリングも含みます。薬局では対象品と対応方法を確認します |
| 在庫処理 | 製造販売業者等がまだ販売していない品や直接管理下にある品の引き取りなど。薬局の棚にある未販売品ならすべて該当する、という意味ではありません |
| 現品交換 | 保健衛生上の問題が生じず、他製品にも同様の不良が及ばないことが明らかな場合の交換など。通知の定義を満たすものは回収に含みません |
| 限定出荷、供給停止 | 供給量や供給状況の情報。回収と同時に起こる場合もあるため、理由と対象在庫の使用可否を別に確認します |
| 販売中止、経過措置 | 販売予定や薬価上の取扱いに関する情報。「手元の薬は必ず使える」とは判断せず、使用期限、品質上の案内、薬価の経過措置期限を確認します |
| 安全性速報、緊急安全性情報 | 適正使用のための注意喚起。回収の有無とは別に、処方確認や服薬指導に反映します |
PMDAの掲載有無だけで、届いた回収連絡の有効性を決めないようにします。
掲載前の連絡や更新の時間差も考え、疑問があれば発行元へ確認します。
供給情報は医薬品安定供給状況等管理システムの使い方、安全性情報はブルーレター対応の確認事項に分けて整理しています。
薬局の初動7項目
製造販売業者等が行う回収の着手、状況等の報告と、薬局が回収先として行う確認は別の役割です。
薬機法第68条の9第2項は、薬局開設者や薬剤師等に、製造販売業者等が行う危害防止措置への協力に努めることを求めています。
次の表は、その対応を自局の手順に落とし込むための実務例です。すべてが一律の法定様式や期限という意味ではありません。

| 項目 | 確認すること | 記録する内容の例 |
|---|---|---|
| 1 文書と指示 | 販売名、規格、クラス、回収理由、健康被害、回収範囲、対応期限、改訂の有無 | 回収番号、確認日時、参照文書の版 |
| 2 対象ロット | 製造番号、包装、出荷時期を実物と照合。CSVも原文と突合する | 該当ロット、確認できない点 |
| 3 在庫と隔離 | 調剤棚、備蓄棚、分包機、持ち出し分等を確認。該当品は通常在庫から分け、誤使用を防ぐ表示をする | 数量、保管場所、確認担当者 |
| 4 交付済み | 仕入れ記録と調剤録、薬歴等を照合。ロット不明の場合は、確定できない範囲を残して相談する | 確認対象期間、追跡の根拠、未確認事項 |
| 5 患者対応 | 患者の症状と残薬、文書の指示を確認。メーカーと処方元へ連絡し、回収や受診案内の方針を合わせる | 確認先、回答、連絡状況。患者固有情報は適切な薬歴等へ |
| 6 治療継続 | 代替品の確保、処方変更の要否、次の服用等までの時間を確認する | 処方元の指示、調達状況、次に確認する時刻 |
| 7 回収と記録 | 返品方法、引渡数量、未回収分、業者への回答を確認する | 完了日、担当者、回答文書の控え、残った課題 |
対象ロットの出荷時期は、薬局に入荷した日や患者に交付した日と同じではありません。
例えばモビコールの5ロットは、出荷時期が2024年7月から2026年8月の範囲に分かれています。
出荷時期だけで患者を「対象外」と決めず、仕入れ記録等で範囲を確認します。
ロットを特定できない場合は、その不確かさもメーカーや処方元へ伝えます。
麻薬や向精神薬は、通常の返品手順だけで処理しないようにします。
該当する区分の法令と回収案内を確認し、卸や都道府県の担当部署に取扱方法を相談してください。
麻薬と向精神薬を同じ譲渡、廃棄手続きとして扱わないことも必要です。
回収は調剤過誤と同じではありませんが、担当者、確認内容、未完了事項を残す考え方は共通します。
記録と連絡の整理には、調剤事故や過誤の初動対応フローも参照できます。
患者への連絡と治療継続をどう確認するか
患者への連絡範囲や緊急性は、回収クラス、具体的な健康被害、交付状況、患者の症状、製造販売業者等の指示を合わせて判断します。
「重篤な健康被害のおそれはない」との記載だけで、連絡不要や継続使用可能と決めることはできません。
- 回収文書:患者からの回収、使用中止、交換、受診等について具体的な指示があるかを確認します。
- 交付状況と患者の状態:対象品を使用した可能性、残薬、症状、治療中断による影響を確認します。
- メーカーと処方元の回答:不明点を相談し、連絡範囲と治療継続の方法を合わせます。
報道の有無は、患者連絡が必要かどうかの医学的な基準にはなりません。
報道されていない場合でも必要な対応を行い、報道された場合は問い合わせに備えて説明内容を共有します。
患者への説明例:「お渡しした薬が回収対象か確認しています。お手元の薬と包装を残していただき、使用については回収の案内と処方元の指示を確認してご連絡します。症状がある場合は、待たずにお知らせください。」
実際には当該回収の指示と患者の状態に合わせて説明を変えます。
自己判断による一律の服用中止を勧める説明は避けますが、緊急の使用中止指示や症状への対応を遅らせないようにします。
重い症状がある場合は速やかな受診や救急対応を優先し、メーカーへの問い合わせだけで待機させないことが必要です。
副作用等が疑われ、危害の発生や拡大を防ぐために必要と判断した場合には、薬剤師等による副作用等報告も別に検討します。
これは製造販売業者の回収報告とは別の制度で、因果関係が明確でない場合も報告対象になり得ます。
詳細はPMDAの医薬関係者向け報告制度を確認してください。
回収情報の確認先とCSVの注意点
- PMDAの回収情報:年度別、クラス別一覧から、販売名、対象ロット、理由、健康被害、連絡先を確認します。
- 製造販売業者の案内:回収方法や患者対応、対象範囲の追加、訂正を確認します。
- GTINとロットのCSV:原文との照合を補助するデータです。すべての回収が含まれるわけではありません。
PMDAは、回収概要の「GTIN及び該当ロット」が掲載されている情報のみCSVに出力すると説明しています。
入力できない記号が他の文字に置き換えられている可能性もあるため、CSVに見当たらないことを対象外の根拠にしないようにします。
一覧の備考欄では、回収終了や訂正履歴も確認できます。
長期間の回収では対象範囲の追加訂正を確認し、確認日を記録します。
同じ考え方で安全性情報を管理するには、電子添文の更新ログと朝礼メモも利用できます。
よくある質問
薬局に回収の報告義務はありますか
他社の医薬品を調剤、販売する薬局が回収先となる通常の場面では、薬機法第68条の11に基づく回収の着手、状況等の報告は製造販売業者等が行います。
薬局自身が製造販売業者として回収する場合まで除外する説明ではありません。
回収への協力、業者から求められた回答、医薬関係者としての副作用等報告は、それぞれ別に確認します。
クラスIIIなら何もしなくてよいのですか
いいえ。
健康被害の原因になるとはまず考えられない区分でも、回収対象であることは変わりません。
対象品と回収方法を確認し、該当在庫の隔離や返品等を進めます。
患者がすでに使い始めている場合はどうしますか
対象品を使用した可能性、残薬、症状を確認し、回収文書の指示と処方元の方針に沿って対応します。
緊急の指示や症状への対応を優先しつつ、必要な交換や代替治療を調整します。
卸から連絡が来る前に気付く方法はありますか
PMDAの一覧の確認に加え、PMDAメディナビの利用が選択肢です。
PMDAは医薬品等のクラスI、II回収情報をメール配信すると案内しています。
クラスIIIを含む全情報が同じ条件で配信されるとは考えず、一覧と製造販売業者の情報も確認します。
クラス分類はあとから変わることがありますか
通知には、状況の変化により分類の変更が妥当と考えられる場合の相談手順も定められています。
初回の文書だけで固定せず、最新の分類と対象範囲を確認します。
情報収集と担当者不在時の対応を決めておく
回収情報を日々確認する担当者と、その担当者が不在のときに対応する人を決めておきます。
情報を受け取るだけでなく、在庫確認、患者対応、回答のどこまで終わったかを引き継げる形にすると、次の担当者が未完了事項を確認できます。
厚生労働科学研究の「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(平成30年改訂版)は、第8章で企業の自主回収等への対応を取り上げています。
これは手順の見直しに用いる参考資料であり、すべてをそのまま自局の義務と読み替えるものではありません。
自局の実情に合わせて、連絡先、担当、記録の置き場所を確認します。
回収情報は公式の案内を基準にする
PMDAの回収情報とメディナビの案内から、確認方法を決めておきます。
医療ニュースを広く読む補助的な情報源を検討する場合は、m3.comの利用を検討するときの確認事項も参照できます。
m3.comがすべての回収情報を配信する、あるいは公式の通知を代替するという意味ではありません。
回収への協力という制度上の役割は、担当者の配置や引継ぎの体制にも関わります。
管理業務を担う場合や職場の体制を確認する場合は、回収対応を一人で抱え込まずに進められるかを確認すると具体的です。
役割の範囲は管理薬剤師になる前のチェック表で整理しています。
回収連絡を受けた日の確認事項
- クラスは健康への危険性に基づく分類です。具体的な対応は回収文書と合わせて確認します。
- 一覧の掲載件数は、被害件数や薬局への連絡頻度ではありません。
- 対象ロットを照合して該当在庫を隔離し、交付済みも含めた対応範囲を確認します。
- 患者の症状や治療継続への影響を確認し、回収の指示と処方元の方針に沿って対応します。
- 回収報告、回収への協力、副作用等報告を分けて考え、未完了事項まで記録します。
参考にした一次情報
2026年9月3日確認。個別回収の内容は公表後に変更されることがあります。
- 厚生労働省 医薬品等回収関連情報(分類、危害防止措置、回収報告)
- 厚生労働省 「医薬品・医療機器等の回収について」の一部改正(平成30年2月8日。平成26年11月21日通知の改正後全文を収載)
- PMDA 回収情報、2026年度のクラスI、クラスII、クラスIII
- PMDA モビコールの回収概要(令和8年8月26日作成)、炭酸水素ナトリウム静注の回収概要(令和8年8月31日作成)
- EAファーマ モビコールの一部製品自主回収のお知らせ(2026年8月31日)
- PMDA 医薬品医療機器等法に関する報告の制度について
- 厚生労働科学特別研究 「医薬品の安全使用のための業務手順書」作成マニュアル(平成30年改訂版、第8章、本文28~29ページ)

