「後発医薬品に変えれば、選定療養費はかかりません」——この一文を患者にすぐ説明できますか?
2026年6月1日から、先発品を選んだ場合の差額負担が2倍になります。「選定療養費が発生する条件」と「後発医薬品との関係」を整理しておくと、窓口での患者説明がぐっとシンプルになります。
この記事では、選定療養費が発生・しないケース・後発医薬品に切り替えるとどう変わるか・患者への説明フレーズを薬剤師向けにまとめています。
もくじ
「後発医薬品」と「選定療養費」——そもそも何が違うのか
まず前提を整理します。
- 後発医薬品(ジェネリック)=「薬の選択肢」の話。先発品と同成分で薬価が低い。
- 選定療養費=「費用負担の仕組み」の話。先発品を患者希望で選んだ場合に差額が追加でかかる。
つまり後発品に変えること自体が、選定療養費をゼロにする唯一の方法です。この関係を患者に伝えるだけで、「じゃあ後発品にします」と納得してもらえるケースが増えます。
後発医薬品(ジェネリック)とは
先発医薬品の特許が満了した後、同一の有効成分・規格・投与経路で製造・承認された医薬品です。生物学的同等性試験で先発品との同等性が確認されており、国(PMDA)が「治療学的に同等」と認めています。開発コストがかからない分、薬価は先発品より低く設定されるため、患者の窓口負担が下がる可能性があります。
選定療養費とは
後発医薬品があるのに、医療上の必要性なく患者の希望で先発医薬品(長期収載品)を選んだ場合に、後発医薬品(複数ある場合は最高薬価の後発品)との薬価差額の一部を患者が追加で負担する制度です。2024年10月に導入され、2026年6月1日からは負担割合が引き上げられます。
「先発品を使いたければ差額分は自己負担してください」というのが制度の趣旨で、公的医療保険の財政適正化が目的です。
なお、選定療養費の対象となるのは後発医薬品が存在する先発品(長期収載品)に限られます。後発品のない先発品や、再審査期間中の新薬は対象外です。対象品目は厚生労働省が定期的に更新・公表しています。
▶ 厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」(対象品目一覧・最新リストはこちらで確認)
【図解①】後発医薬品 vs 選定療養費 早見表
| 項目 | 後発医薬品 | 選定療養費 |
|---|---|---|
| 何の話か | 薬の種類・選択肢 | 費用負担の仕組み |
| 対象 | 特許満了後の先発品と同成分の医薬品 | 後発品があるのに先発品(長期収載品)を患者希望で選んだ場合 |
| 費用 | 先発品より薬価が低い(通常は窓口負担↓) | 差額の2分の1が追加で全額自己負担(2026年6月〜) |
| 患者への影響 | 変更すると窓口負担が下がる可能性 | 先発品を希望すると追加料金が発生 |
| 保険の扱い | 通常通り保険適用 | 差額分は保険対象外(全額自己負担) |
| 開始時期 | 特許満了後 | 2024年10月〜(負担増:2026年6月1日〜) |
選定療養費が発生するケース・しないケース
発生するケース
- 後発医薬品がある先発品(長期収載品)を、患者が先発品を希望して調剤した場合
- 処方箋の「患者希望」欄にチェックがある場合
- 一般名処方・銘柄名処方で、薬局での変更提案に対して患者が先発品を選んだ場合
発生しないケース
- 医師が「医療上必要」と判断し、処方箋の変更不可欄に「(医療上必要)」と記載した場合
- 対象の後発医薬品が供給不足など、入手できない状況にある場合
- 患者が後発医薬品への変更に同意した場合(後発品で調剤すれば差額負担自体が発生しない)
- 後発医薬品がない先発品(選定療養の対象外品目)の場合
2026年6月1日からの処方箋様式の変更
処方箋の様式が変わり、薬局での判断がより明確になりました。
- 「変更不可(医療上必要)」欄:チェックあり → 選定療養費なし、保険適用
- 「患者希望」欄(新設):チェックあり → 患者が先発品を選択 → 選定療養費が発生
どちらにもチェックがない場合(一般名処方・銘柄名処方のみ)は、薬局で患者に後発品への変更を提案し、患者が最終的に先発品を希望した場合に選定療養費が発生します。
▶ 選定療養の2026年改定全体:【2026年6月改定】選定療養の変更点まとめもあわせてご確認ください。
2026年6月改定で何が変わるのか
患者負担:差額の4分の1 → 2分の1 に引き上げ
最大の変更は患者負担割合の倍増です。2024年10月の導入時は「差額の4分の1(プラス消費税)」だったものが、2026年6月、1日から「差額の2分の1(プラス消費税)」に変わります(厚生労働省告示・2026年2月中医協答申)。
【図解②】選定療養費の計算例(2026年6月以降)
💊 具体的な計算例
条件
- 先発品:1錠 100円
- 最高薬価の後発品:1錠 60円
- 差 額:40円
患者が先発品を希望した場合の追加負担
差額40円 × 2分の1 × 消費税1.1
= 追加負担 22円(税込み・全額自己負担)
※通常の保険自己負担(1〜3割)が別途かかります
※後発品が複数ある場合は最高薬価の後発品との差額で計算します
▶ 計算方法の詳細:選定療養の負担額計算方法|計算式・具体例・処方箋判定
患者への影響は薬剤数・薬価差によって大きく変わります。1回の処方で数百円〜数千円の差が出るケースもあり、窓口での丁寧な説明がこれまで以上に重要です。
患者から聞かれたときの説明フレーズ3選
①「後発薬に変えると安くなりますか?」
「はい、後発医薬品は先発品と同じ有効成分で、薬価が低く設定されていますので、通常は窓口でのお薬代が安くなります。有効成分・効き目は同等と確認されていますが、添加物や剤形が異なる場合もあります。変更を希望される場合はお気軽にお伝えください。」
②「選定療養費って何ですか?」
「後発医薬品(ジェネリック)があるお薬を、先発品で希望される場合に、先発品と後発品の薬価の差額の2分の1を、通常の保険自己負担とは別にお支払いいただく仕組みです。2026年6月から負担額が引き上げられました。後発品に変更していただければ、この追加料金はかかりません。」
③「選定療養費を払わないようにするには?」
「方法は2つあります。①後発医薬品に変更する(追加料金ゼロ)。②かかりつけの先生にご相談いただき、医療上の必要性があると判断されれば、処方箋に『医療上必要』と記載していただくことで選定療養費がかからなくなります。」
▶ より詳しい説明トーク事例:選定療養の患者説明トーク例文集|シナリオ別にそのまま使えるフレーズ
よくある誤解とQ&A
Q. 後発医薬品に変えれば必ず安くなる?
A. 基本的には安くなります。ただし、後発品の種類・薬価によっては差が小さいこともあります。レセコンで算定前に確認するのが確実です。
Q. 「長期収載品」と「先発品」は同じ意味?
A. ほぼ同義として使われますが、制度上の「長期収載品」は「再審査期間が終了し、後発医薬品が薬価収載された先発医薬品」を指します。選定療養費の対象となるのはこの「長期収載品」です。
Q. 選定療養費の対象品目はどこで確認できる?
A. 厚生労働省が公表する「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」ページで確認できます。薬価基準収載品目リストと合わせて定期的に確認しましょう。
Q. 医師に「医療上必要」と書いてもらうにはどうすれば?
A. 薬局からは処方医に疑義照会または情報提供(トレーシングレポート等)で連絡する形になります。患者から直接かかりつけ医に相談するよう促すのが実務的な対応です。
まとめ
- 後発医薬品は「薬の選択肢」。先発品と同成分で薬価が低い。変更すると窓口負担が下がる。
- 選定療養費は「費用負担の仕組み」。医療上の必要性なく先発品を希望した場合の差額追加負担。
- 2026年6月1日から差額負担が4分の1→2分の1に引き上げ。患者への説明機会が増える。
- 処方箋の「医療上必要」欄・「患者希望」欄の確認で選定療養費の有無が判断できる。
- 患者への最短の回答:「後発品に変えれば追加料金はかかりません」。
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