「6月から薬代が変わるって聞いたけど、うちはどうなるの?」
2026年6月1日の調剤報酬改定施行以降、こんな質問が窓口で増えています。
変わるのは薬の成分や効果ではなく、調剤技術料(薬局が計算するサービス料)の部分です。患者さんの立場からすれば「急に値段が上がった」と感じる場面もあるため、正確な理由を丁寧に説明できるかどうかが薬剤師の腕の見せどころです。
この記事では、患者から「なぜ値段が上がるの?」と聞かれたときに使える説明フレーズと、2026年6月から変わる窓口負担の4つの理由をわかりやすく解説します。
もくじ
2026年6月から薬代が変わる4つの理由
患者の窓口負担に影響する変更は、大きく4つあります。まず全体像を把握しましょう。
① 調剤基本料の引き上げ(最大2点増)
調剤基本料とは、処方箋を受け付けて薬を調製するための基本的な技術料です。2026年6月から以下のとおり引き上げられました。
- 調剤基本料1(多くの薬局が該当):45点 → 47点(+2点)
- 調剤基本料2(門前薬局等):29点 → 30点(+1点)
3割負担の方なら、1回の受付で約6円の増加です。「ほんのわずかだけ増える」というイメージで問題ありません。
② 調剤ベースアップ評価料(4点)と調剤物価対応料(1点)の新設
薬局スタッフの賃上げと物価高騰に対応するため、2つの新加算が設けられました。
- 調剤ベースアップ評価料:処方箋受付1回につき4点(届出薬局のみ算定)
- 調剤物価対応料:処方箋を受け付けた際に1点を算定(同一患者への算定は3か月に1回まで。届出不要・全保険薬局が対象)
ベースアップ評価料を算定している薬局では、3割負担の方で1回あたり約12円増えます。調剤物価対応料(1点)は届出不要で全薬局が対象ですが、同一患者への算定は3か月に1回のため、患者から見ると「3か月に1回、約3円増える」というイメージです。「スタッフの賃上げや物価高騰への対応で国が決めた加算」と伝えると患者の理解を得やすいです。
③ 服薬管理指導料の再編(患者によって異なる)
2026年6月から、「かかりつけ薬剤師指導料」が廃止され、服薬管理指導料に一本化されました。
- 3か月以内の再来局・お薬手帳持参時:45点
- 上記以外(初来局・手帳なし等):59点
以前にかかりつけ薬剤師制度(76点)を利用していた患者さんは点数が変わる場合があります。ただし、新設されたフォローアップ加算(50点)や訪問加算(230点)の算定状況によって、患者ごとに異なります。
④【最重要】長期収載品の選定療養費が実質2倍に
4つの変更のなかで最も影響が大きいのがこれです。
後発医薬品(ジェネリック)がある先発品(長期収載品)を「医療上の必要性なく」希望する場合、後発品との価格差の一部を患者が負担する「選定療養費」という制度があります。
この自己負担割合が、2026年6月1日から「差額の4分の1」→「差額の2分の1」に引き上げられました。仮に先発品と後発品の差額が600円の場合、選定療養費はこれまで150円だったものが300円に倍増します。
📊 2026年6月の薬代変化まとめ(3割負担の患者)
| 変更項目 | 5月まで | 6月から | 患者負担増(3割) |
|---|---|---|---|
| 調剤基本料1 | 45点 | 47点 | 約+6円 |
| 調剤ベースアップ評価料 | なし | 4点(新設) | 約+12円 |
| 調剤物価対応料 | なし | 1点(患者単位・3か月に1回) | 約+3円(3か月ごと) |
| 長期収載品の選定療養費 | 差額の4分の1 | 差額の2分の1 | 実質2倍に増加 |
※ベースアップ評価料は厚生局への届出が必要(届出薬局のみ算定可)。物価対応料は届出不要で全保険薬局が対象(患者単位で3か月に1回)。選定療養は医療上必要な場合や後発品変更不可処方箋の場合は対象外。出典:令和8年度調剤報酬改定(2026年6月1日施行)、厚生労働省・日本薬剤師会
患者タイプ別・窓口説明フレーズ集
「急に値段が上がった」と感じるのは当然の反応です。患者のタイプに応じた説明フレーズを準備しておきましょう。
パターン①「なんで値段が上がるの?」と聞かれたとき
基本原則:「薬局の独自値上げではない」を最初に伝える
🗣 フレーズ例
「2026年6月から国の調剤報酬改定が実施されまして、スタッフの賃上げや物価高騰に対応するための新しい加算が設けられました。当薬局が独自に値上げしたわけではなく、全国の保険薬局に適用される制度変更です。1回あたり数十円程度の増加になりますが、ご不便をおかけして申し訳ございません。」
パターン②「先発品(ブランド品)のままでいい」と言われたとき
選定療養費の倍増を事前に伝え、ジェネリック切り替えの選択肢も提示する
🗣 フレーズ例
「6月から、後発医薬品(ジェネリック)があるお薬で先発品をご希望の場合、後発品との価格差の2分の1を追加でご負担いただく制度になりました(これまでは4分の1でした)。もしジェネリックに変えていただければ、この追加負担がなくなります。先生から医療上先発品でなければならないとご指示がある場合は対象外になりますので、処方箋を確認しますね。」
パターン③「私は何も変わらないよね?」と確認する患者
選定療養の対象外(ジェネリック使用中・医療上先発品が必要な患者)には安心感を与える
🗣 フレーズ例
「○○さんはすでにジェネリックをお使いなので、選定療養費の追加負担はありません。調剤の技術料がわずかに増加しますが、数十円程度の変化です。」
🔀 患者タイプ別 対応フロー
💊 ジェネリック使用中
選定療養費なし
技術料のみ微増
✅ 安心して伝える
💊 先発品を希望中
選定療養費が4分の1→2分の1
実質2倍に増加
⚠️ 事前説明が必須
💊 後発品変更不可処方箋
選定療養の対象外
医師の指示で保険適用
✅ 対象外と伝える
窓口掲示・事前周知のポイント
6月を迎える前から患者に周知しておくことで、当日のトラブルを大幅に減らすことができます。
- 5月中に掲示物を設置:「6月から調剤料金の一部が変更されます」という案内を待合室に貼る
- 厚生労働省の患者向けチラシを活用:公式チラシは制度変更の正当性を示す根拠になり、「薬局が値上げした」という誤解を防げる
- お薬手帳に挟む一言メモ:特に長期収載品を使っている患者には個別に伝える
- 6月1日の開局前にスタッフで説明練習:「薬局が独自に値上げしたわけではない」という共通認識を全員が持つ
6月施行当日の業務フローについては、【2026年6月1日施行】調剤報酬改定 当日の業務フローもあわせてご参照ください。
よくあるQ&A
Q:急に値段が上がってクレームになったら?
まず「国の制度変更によるもので、薬局が独自に決めたことではない」を冷静に伝えます。変更内容の案内資料を見せながら「ご不便をおかけして申し訳ございません」と謝意を示します。感情的なクレームには、まず共感が第一です。
Q:保険の種類や負担割合によって説明の仕方は変わる?
技術料の変更は1割・2割・3割いずれの負担割合でも発生します。負担割合が低い患者ほど1回あたりの増加額は少なくなります(1割負担なら約2〜4円の増加)。選定療養費は保険種別に関わらず発生します。
Q:全員に選定療養の説明が必要?
ジェネリックを使用している患者や、後発品変更不可の処方箋の患者、医療上の必要があって先発品を使っている患者には説明不要です。先発品を「希望」で使い続けている患者だけが対象です。患者リストを事前に確認しておくと対応がスムーズです。
Q:選定療養費は領収書のどこに記載される?
選定療養費は保険外の「自費」として計上されるため、通常の医療費と別に記載されます。患者から「なぜ2枚領収書が出るの?」と聞かれた場合にも、選定療養費の仕組みを説明できるよう準備しておきましょう。
まとめ
2026年6月から薬代が変わる主な理由は4つです。
- 調剤基本料の引き上げ(最大2点増)
- 調剤ベースアップ評価料・物価対応料の新設
- 服薬管理指導料の再編(かかりつけ薬剤師体系の変更)
- 長期収載品の選定療養費が実質2倍(差額の4分の1→2分の1)
患者への説明で最も重要なのは、「薬局が勝手に値上げしたのではなく、国の制度変更によるもの」という点を最初に伝えることです。特に長期収載品の選定療養費変更は負担感が大きいため、対象患者には5月中から事前説明しておくことを強くおすすめします。
改定全体の変更点は以下の記事もあわせてご確認ください。

