坐剤の説明を「体温で溶ける薬」で終えていませんか。
第十九改正日本薬局方は、直腸内で体温によって溶融するものと、水に徐々に溶解または分散して有効成分を放出するものを、坐剤の定義に含めています。
基剤の違いを理解しつつ、保管や切断、併用は製品ごとの電子添文で確認することが、説明の出発点です。
本稿は薬剤師向けに、4製品の現行電子添文と日本薬局方から確認手順を7項目に整理します。
患者さんや家族へ説明するときは、処方された製品の指示に絞って伝えます。
電子添文の探し方はPMDAで電子添文を検索する方法も参考になります。
もくじ
1.販売名と規格、投与部位を特定する
確認を始める前に、販売名、規格、製造販売業者、投与部位をそろえます。
日本薬局方では直腸用の坐剤と、腟に適用する腟用坐剤や腟錠は別の項目です。
「坐剤」という呼び方や外観だけで投与部位を決めず、処方内容と製品の用法を照合します。
電子添文の改訂日も記録します。
同じ製品を扱い続けていても、手元の説明書が現行の貯法や注意事項に対応しているとは限りません。

2.基剤と有効成分の放出を確認する
日本薬局方の製剤総則9.1は、坐剤に通常用いる基剤として油脂性基剤と親水性基剤を挙げています。
油脂性基剤の製剤には溶融性で放出性を評価できる規定がありますが、これだけで個々の製品の貯法や使用方法は決まりません。
| 確認した製品 | 電子添文の組成等 | 読み方 |
|---|---|---|
| カロナール坐剤100、200、400 | 添加剤はハードファット | 基剤に加え、現行の貯法と取扱い上の注意を確認 |
| ナウゼリン坐剤10、30、60 | 水溶性基剤として複数のマクロゴールを記載。溶融点50~57℃、分泌液で徐々に溶ける旨を記載 | 体温で融けることだけを前提に説明しない |
| ダイアップ坐剤4、6、10 | 添加剤はマクロゴール4000とマクロゴール1540 | 開封後の防湿と遮光も確認 |
| アンペック坐剤10mg、20mg、30mg | 添加剤はハードファット | ほかの坐剤との相互作用を製品の記載から確認 |
ナウゼリン坐剤を例に「坐剤には、直腸内の水分で徐々に溶ける製品もある」と説明できます。
ただし、「親水性なら熱を気にしなくてよい」と広げず、次の貯法を確認します。
3.温度は現行の貯法欄から確認する
日本薬局方の通則では、室温は1~30℃、冷所は別に規定がなければ1~15℃です。
冷所という語は温度範囲を示しており、冷蔵庫という設備名と同じではありません。
実際の保管場所が指定の温度を保てるかを確認します。
数値での個別指定や凍結を避ける指示があれば、それも守ります。
| 製品 | 今回確認した電子添文の貯法 | 版 |
|---|---|---|
| カロナール坐剤100、200、400 | 冷所保存 | 2026年8月改訂、第2版 |
| ナウゼリン坐剤10、30、60 | 室温保存 | 2026年8月改訂、第3版 |
| ダイアップ坐剤4、6、10 | 室温保存 | 2023年2月改訂、第1版 |
| アンペック坐剤10mg、20mg、30mg | 冷凍を避け、室温1~30℃で保存 | 2024年11月改訂、第3版 |
今回の確認では、カロナール坐剤の旧版を根拠にした「室温保存」という説明を修正しました。
2026年8月改訂版の冒頭は「冷所保存」です。
同じ成分でも他社製品へそのまま当てはめず、採用品の変更時には棚の表示や患者向けの説明も見直します。
薬局内の保管と患者さんへの伝え方は、冷所保管医薬品の運用も参考になります。
温度条件の根拠は対象製品の現行電子添文を優先してください。
4.開封後の湿気と遮光も確認する
貯法欄とともに、20項「取扱い上の注意」を読みます。
ダイアップ坐剤は、アルミピローを開封した後は湿気を避け、遮光して保存するよう指示されています。
カロナール坐剤は、外箱開封後に直射日光を避けてなるべく冷所に保管する旨が記載されています。
この20項を、冒頭の「冷所保存」を緩める根拠にはしません。
薬袋には、何を開封した後の注意なのかを区別して伝えます。
保管温度を外れた製品や変形した製品を、冷やして形が戻っただけで使用可能と判断しないでください。
製品名、温度、時間、包装状態を確認し、製造販売業者へ照会します。
5.切断と挿入は製品の説明を確認する
カロナール坐剤の14.1.2では、1/2個を用いる場合に斜めに切断する方法が示されています。
14.1.3では、取り出した後に太い方から肛門内へ深く挿入するよう記載されています。
処方された用量を確認し、この製品の指示として説明します。
この方法を、すべての坐剤に共通する指示として使わないことが大切です。
ほかの製品を分割する処方で根拠が確認できない場合は、規格の選択肢、処方医の意図、製造販売業者の資料を確認します。
用法の「1日量を数回に分割」という表現は、必ずしも坐剤そのものを切る意味ではありません。
ダイアップ坐剤の14.1は直腸投与のみとし、経口投与しないことを示しています。
投与部位と使い方を、患者さんや家族が自分の言葉で確認できるよう説明します。
6.併用は基剤と有効成分の両方から確認する
アンペック坐剤の10.2「併用注意」には、基剤の異なる消炎鎮痛薬の坐剤との併用について、次の記載があります。
| 電子添文に挙げられた併用例 | アンペックの吸収に関する記載 | 説明されている機序 |
|---|---|---|
| 水溶性基剤のインドメタシン坐剤 | 低下するとの報告 | 基剤の溶解に直腸内の水分が使われ、モルヒネの溶解が不十分になると考えられる |
| 油脂性基剤のジクロフェナク坐剤 | 上昇するとの報告 | 消炎鎮痛薬による直腸粘膜の透過性亢進が考えられる |
この記載は、すべての水溶性基剤なら吸収が低下し、すべての油脂性基剤なら上昇するという一般法則ではありません。
対象の組合せと、基剤または主薬による機序を分けて読みます。
同欄には一律の安全な投与間隔は示されていないため、独自に「何分空ければ問題ない」と決めず、処方医と使用方法を確認します。
坐剤同士に限らず、内服薬や市販薬も含めて確認します。
カロナール坐剤の警告には、アセトアミノフェンを含む他の薬剤との併用による過量投与と重篤な肝機能障害への注意が示されています。
「投与経路が違うから重複しない」と判断しないようにします。
7.説明と判断の根拠を記録する
| 確認欄 | 記録する内容 |
|---|---|
| 製品 | 販売名、規格、製造販売業者、投与部位 |
| 資料 | 電子添文の改訂日、URL、確認した項目 |
| 基剤 | 添加剤と、製品資料にある放出の説明 |
| 保管 | 温度、開封後の防湿や遮光、患者さんの保管場所 |
| 使用方法 | 処方量、切断の要否と根拠、挿入の説明 |
| 併用 | 他の坐剤、内服薬、市販薬、必要な照会結果 |
| 説明と共有 | 伝えた内容、理解の確認、次回見直す条件 |
上表は編集部の確認様式です。
患者さんを特定できる情報は、勤務先が定める記録先で管理します。
教育用の共有では、個人情報を含めず、製品と確認根拠を残します。
よくある質問
坐剤は全部、冷蔵庫へ入れればよいですか
製品ごとに貯法が異なります。
電子添文の温度条件と開封後の注意を確認し、指定範囲を保てる場所を選びます。
「念のため冷凍する」といった変更はしません。
半分にする方法は、ほかの坐剤でも同じですか
同じとは限りません。
カロナール坐剤の方法を他製品へ一般化せず、処方量と製品ごとの資料を確認します。
入れた後に出てきたら、もう一度使えますか
吸収した量を外観だけで判断できません。
製品名、投与からの時間、排出物の状態などを確認し、処方医や薬剤師へ相談するよう伝えます。
本稿では一律の再投与量や時間を示しません。
製剤の違いを説明できる体制を整える
製品が変わったときに保管や服薬指導も見直す仕組みは、薬局内の教育と引き継ぎに役立ちます。
まず採用品1つで確認表を作り、誰が改訂を確認し、説明書を更新するかを決めてみてください。
こうした記録は、自分が担ったDI業務や改善活動を振り返る材料にもなります。
医療情報を継続して読む環境を検討する場合は、m3.comの薬剤師向け活用方法も参考になります。
個々の製品の判断はPMDAや製造販売業者の一次情報へ戻って確認します。
確認した一次資料
- 厚生労働省「日本薬局方」:第十九改正の通則、製剤総則9.1、10.1、10.2。2026年9月30日分を含む正誤表も確認
- PMDA カロナール坐剤100、200、400:2026年8月改訂版の貯法、1項、3.1、14.1、20項
- PMDA ナウゼリン坐剤10、30、60:2026年8月改訂版の貯法、3.1、3.2
- PMDA ダイアップ坐剤4、6、10:2023年2月改訂版の貯法、3.1、14.1、20項
- PMDA アンペック坐剤10mg、20mg、30mg:2024年11月改訂版の貯法、3.1、10.2
確認日:2026年10月6日。
比較は上記4製品の資料に限ります。
用量、適応、禁忌を網羅した記事ではないため、実際の処方監査では電子添文全体と患者さんの状態を確認してください。


