口腔内崩壊錠(OD錠)は、口の中で速やかに溶解または崩壊させて服用できる錠剤です。
ただし、「水なしで飲める」という説明だけでは、服薬指導は終わりません。
服用時の姿勢、噛んでよいか、包装から出す時期まで、製品ごとに確認します。
薬剤師が照合したいのは、採用品の電子添文と、患者さんが実際に飲める方法です。
飲み込みに問題がある方に、OD錠なら一律に安全と説明することはできません。
確認日:2026年10月6日。
もくじ
OD錠の服薬指導で確認する7項目

| 項目 | 確認すること | 患者さんや介護者への確認 |
|---|---|---|
| 1 製品と剤形 | 販売名、規格、製造販売元、剤形 | 以前の薬と剤形が変わっていないか |
| 2 服用する手順 | 舌に置く、舌で軽くつぶす、崩壊後に飲み込むなどの指示 | 実際にはどのように飲んでいるか |
| 3 水と飲み込み | 水なしで服用できる条件と患者さんの嚥下状態 | 口の乾燥、飲み込みにくさ、むせがないか |
| 4 服用時の姿勢 | 寝たままの服用に関する注意 | 起き上がれるか、介助が必要か |
| 5 噛み砕き | 徐放性の粒などの構造、噛み砕きに関する指示 | 噛む習慣や、舌でつぶす操作との混同がないか |
| 6 包装と保管 | 取り出し方、開封後の条件、服用直前の開封指示 | 事前にまとめて出していないか |
| 7 説明と記録 | 説明した手順、照会した内容、資料の改訂年月 | 患者さんや介護者が手順を説明し返せるか |
資料の探し方は、PMDAで電子添文を検索する手順を参照してください。
同じ成分でも製剤設計や包装が異なる場合があるため、実際に交付する製品を選びます。
1.OD錠の定義と服用方法
第十九改正日本薬局方の製剤総則1.1.1は、口腔内で速やかに溶解または崩壊させて服用できる錠剤と定義しています。
定義だけでは、患者さんごとの水の使い方や服用姿勢まで決められません。
例えば、ハルナールD錠の電子添文14.1.3は、舌上で唾液により崩壊し、水なしでも水と一緒でも服用できるとしています。
一方、レンドルミンD錠14.2.1には、唾液を浸潤させ、舌で軽くつぶして崩壊させる手順があります。
この文言の違いを「舌にのせるだけで飲み込まなくてよい薬」と「飲み込む薬」に分けるのは適切ではありません。
レンドルミンD錠8.2は、口腔粘膜からの吸収で効果を期待する製剤ではなく、崩壊後は唾液または水で飲み込むと明記しています。
OD錠の崩壊と、服用を終えるまでの手順を分けて説明します。
2.舌下錠を「飲み込まない薬」と一括りにしない
日本薬局方では、OD錠は経口投与する製剤に、舌下錠やバッカル錠は口腔内に適用する製剤に分類されています。
この違いは、置く場所や使い方を確認する手がかりになります。
ただし、舌下錠について「絶対に飲み込まない」と一律に説明することはできません。
シダキュアスギ花粉舌下錠の電子添文6は、舌下に1分間保持した後に飲み込み、その後5分間はうがいや飲食を控える用法を示しています。
舌下錠をOD錠と同じ手順で直ちに飲み込ませたり、すべての舌下錠で同じ保持時間を案内したりせず、対象製品の指示を確認します。
ここで挙げたシダキュアの説明は剤形を比較するための一例で、治療開始や服用方法の変更を勧めるものではありません。
3.水なしで飲める条件と患者さんの状態
電子添文に水なしで服用できると書かれていても、その患者さんが安全に飲み込めるかは別に確認します。
口が乾いていないか、崩壊した薬を飲み込めるか、むせていないかを聞き取ります。
飲み込みにくさがある場合は、OD錠への変更だけで解決すると考えず、処方医や看護師などと服用方法を相談します。
水の量、とろみ、服薬補助食品の使用も、患者さんの状態と製品の条件を踏まえて検討してください。
4.寝たままの服用は、水の有無だけで判断しない
ハルナールD錠14.1.4とレンドルミンD錠14.2.2には、寝たままの状態では水なしで服用させない旨の注意があります。
就寝前の薬を説明するときは、服用時にはどの姿勢を取っているかも確認します。
この注意を「水を加えれば、誰でも寝たまま飲んでよい」と読み替えないようにします。
起き上がるのが難しい、飲み込みに不安があるといった場合は、無理に服用させず、医療者と安全な方法を確認します。
同じ文言が見つからない製品でも、寝たままの水なし服用が安全だと判断する根拠にはなりません。
注意書きの有無を数えるより、採用品の指示と患者さんの状態を記録することを優先します。
5.舌でつぶす操作と噛み砕きを区別する
ハルナールD錠14.1.2は、徐放性の粒を含むため、噛み砕くと薬物動態が変わる可能性があるとしています。
口の中で崩れる錠剤だからといって、粉砕や噛み砕きが可能とは限りません。
一方、レンドルミンD錠やホスレノールOD錠には、舌で軽くつぶす手順が示されています。
「舌で軽くつぶす」を、歯で噛み砕く指示と同じ意味で伝えないようにします。
粉砕の可否は、電子添文に同じ文言があるかどうかだけでは決められません。
製剤の構造や製造販売元の資料も確認し、処方変更が必要な場合は処方医と相談します。
6.包装から出す時期と保管条件
ホスレノールOD錠の電子添文20は、吸湿性があるため、アルミニウム袋を開けた後は湿気を避け、服用直前までPTPシートから取り出さないよう求めています。
「室温保存」の表示だけを見て、裸錠で事前に並べてよいとは判断できません。
一包化やお薬カレンダーへの準備を検討する場合は、包装を外す期間と保存条件を確認します。
自動分包機を使用できるかと、包装を外して保管できるかも別の問題です。
患者さんの管理方法を聞いたうえで、製品の指示に合う方法を考えます。
7.患者さんの説明し返しと薬歴
交付時には「分かりましたか」だけで終えず、どのように取り出し、口に入れ、飲み込むかを患者さんや介護者に説明してもらいます。
実際の操作と説明にずれがあれば、その場で製品の手順を確かめます。
| 共有する項目 | 記録例の形式 |
|---|---|
| 製品と資料 | 販売名/規格/電子添文の改訂年月/参照項目 |
| 実際の飲み方 | 水の使用/姿勢/口の乾燥/むせ/介助者 |
| 説明した方法 | 口に置く場所/崩壊の手順/飲み込み/噛み砕きの注意 |
| 保管と引継ぎ | 取り出す時期/包装の保持/相談した内容/次回の確認点 |
これは薬歴や施設との共有に使う項目例です。
架空の患者情報を埋めた記録ではなく、実際に確認した内容だけを記載します。
よくある質問
OD錠は、口の中に残しておけば効きますか
口腔内で崩壊することと、口腔粘膜から吸収させることは同じではありません。
製品の指示どおりに服用し、崩壊後の飲み込みまで確認します。
水で飲んでもよいですか
水での服用が認められている製品があります。
例えばハルナールD錠は電子添文に明記されています。
採用品の指示と患者さんの嚥下状態を合わせて確認してください。
注意書きがなければ、噛んでも一包化してもよいですか
記載がないことだけでは判断できません。
徐放性などの構造、安定性、包装条件を確認し、不明な場合は製造販売元へ問い合わせます。
服薬指導をチームで再現できる手順にする
施設や在宅に関わる薬剤師には、製品の情報を読む力に加え、患者さんの服用状況を聞き取り、介護者や医療者へ共有する力も求められます。
この7項目を採用品の確認メモに使い、担当者が替わっても同じ注意点を確認できるようにしておきたいところです。
継続的な情報収集の方法を検討する方は、m3.comの薬剤師向け情報サービスを紹介した記事も参考にしてください。
ニュースで改訂に気づいた後は、対象製品の最新電子添文へ戻って確認します。
参考資料と確認範囲
- 第十九改正日本薬局方:2026年4月10日告示。製剤総則1.1.1、2.1.2、2.1.3。正式版の案内から本文を確認。
- ハルナールD錠:2024年4月改訂、第2版。14.1.2~14.1.4。
- レンドルミンD錠:2025年10月改訂、第2版。8.2、14.2。
- ホスレノールOD錠:2024年10月改訂、第2版。14.1.1、20。PMDA掲載日の2025年2月とは区別。
- シダキュアスギ花粉舌下錠:2023年7月改訂、第1版。6。剤形比較の一例として参照。
本記事は代表例による服薬指導の整理です。
OD錠の全製品の調査や、治療ごとの適応と用量を網羅した資料ではありません。
個別の調剤や服薬指導では、最新の電子添文と患者情報を確認してください。


