「芍薬甘草湯と抑肝散が同じ袋に入っている」「葛根湯を長く飲んでいる人が、最近こむら返りを訴える」。
漢方製剤は複数併用されることがあり、カンゾウ(甘草)の重複は処方名だけでは把握しにくい場合があります。
厚生労働省の『重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症』(令和4年2月改定)には、グリチルリチン酸(GL)の含有量が多い医薬品の表と、PMDAへの副作用報告が多い医薬品の表が並んで載っています。
この2つの表を突き合わせると、報告件数の上位に入る漢方製剤8つのうち、GL含有量が多い製剤リストにも載っているのは芍薬甘草湯だけでした。
残りの7製剤は、カンゾウを1日1.0〜2.0g含む漢方製剤でした。
薬局や病棟で確認する順序を、含有量の合算、表記のゆれ、併用薬、患者背景、検査、初期症状、発症時の対応の7項目に整理しました。
確認日:2026年9月5日。
もくじ
カンゾウ含有製剤の処方監査で確認する7項目
まず、その漢方製剤が定期薬なのか頓用なのかを確認し、他院の処方、市販薬、健康食品まで含めてカンゾウとグリチルリチン酸の総量を把握します。
四肢の脱力、強い筋肉痛やこむら返り、赤褐色の尿、動悸、失神などが出ている場合は、下の順番にこだわらず、処方医への連絡や受診を優先します。
| 項目 | 確認すること | 処方医と共有したい情報 |
|---|---|---|
| 1. 含有量の合算 | 漢方どうしの併用、グリチルリチン酸配合剤、OTCの重複 | 1日あたりのカンゾウ総量、他院処方と市販薬の内訳 |
| 2. 表記のゆれ | シャカンゾウ表記、グリチルリチン酸としての配合 | 成分名で照合した結果、電子添文の該当箇所 |
| 3. 禁忌と併用薬 | アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症の有無、利尿薬、インスリン、ステロイド | 現病歴と既往歴、低カリウム血症を招きうる薬の一覧と開始時期 |
| 4. 患者背景 | 年齢、性別、体格、投与期間、既往 | 体重の推移、血圧手帳の数値、むくみの有無 |
| 5. 検査 | 血清カリウム値の測定歴、心電図 | 直近の採血日と数値、開始前値との比較 |
| 6. 初期症状の説明 | 脱力、こむら返り、むくみ、血圧上昇の伝え方 | 患者さんが訴えた症状と、いつからか |
| 7. 発症時の対応 | 処方医による中止・治療の判断、回復までの経過 | 被疑薬の候補、最終服用時刻、症状と検査値の推移 |
採用品の成分量を確認するときは、PMDAで電子添文を検索する手順から。
日々の情報収集先を見直す場合は、m3.comの特徴と薬剤師向けの使い方も参考にしてください。
1. GL含有量が多い製剤と、報告が多い製剤は一致しない
厚労省マニュアルは、GL含有量(標準使用による1日あたり含有量)が高い医薬品として次の製剤を挙げています。
カンゾウ1gに含まれるGLを40mgとして換算した値です。
| 医薬品名 | 投与経路 | 1日あたりのGL量 |
|---|---|---|
| 甘草湯 | 内服 | 320mg |
| 芍薬甘草湯 | 内服 | 240mg |
| 芍薬甘草附子湯 | 内服 | 200mg |
| 甘麦大棗湯 | 内服 | 200mg |
| 人参湯、小青竜湯、排膿散及湯、桔梗湯、黄芩湯、黄連湯、芎帰膠艾湯、桂枝人参湯、五淋散、附子理中湯 | 内服 | 各120mg |
| 半夏瀉心湯 | 内服 | 100mg |
| グリチロン配合錠 | 内服 | 150〜225mg |
| 強力ネオミノファーゲンシー | 注射 | 10〜200mg |
一方、同じマニュアルには、2010年から2020年までの約10年間にPMDAへ「偽アルドステロン症」または「低カリウム血症」として報告された医薬品の上位10品目が載っています。
| 医薬品名 | 1日あたりのGL量 | 報告件数 | 上の表への掲載 |
|---|---|---|---|
| 芍薬甘草湯 | 240mg | 184件 | あり |
| 抑肝散 | 60mg | 126件 | なし |
| グリチロン配合錠 | 150〜225mg | 112件 | あり |
| 補中益気湯 | 60mg | 29件 | なし |
| 強力ネオミノファーゲンシー | 10〜200mg | 18件 | あり |
| 六君子湯 | 40mg | 15件 | なし |
| 葛根湯 | 80mg | 15件 | なし |
| 大黄甘草湯 | 80mg | 14件 | なし |
| 十全大補湯 | 60mg | 10件 | なし |
| 桃核承気湯 | 60mg | 10件 | なし |
報告件数の上位に入る漢方製剤は8つあり、そのうちGL量の多い製剤リストにも載っているのは芍薬甘草湯だけです。
抑肝散、補中益気湯、十全大補湯、桃核承気湯はいずれも60mg、六君子湯は40mgで、芍薬甘草湯の4分の1から6分の1にあたります。
この差について、マニュアルは、GL含有量が高いのに報告件数が多くない製剤には処方件数が少ない影響があり、抑肝散などの報告が多い背景には対象疾患の広さと処方件数が影響していると考察しています。
副作用疑いの報告件数は、販売量、使用法、使用頻度、併用薬などが異なるため、製剤間のリスクを直接比較する数字ではありません。
薬局の監査では、1剤の含有量だけで判断せず、実際の服用量と重複、患者背景をあわせて確認する必要があります。
マニュアル本文にも、初期の報告例は大部分がGL 500mg/日以上の大量投与例だったが、その後はGL 150mg/日以下の比較的少量の投与例が多数を占めるようになり、生薬としての甘草を1日1〜2gしか含まない医療用漢方薬での発症例も報告されている、と記されています。
図1:2つの表の重なり方
GL量が多い製剤
甘草湯 320mg
芍薬甘草附子湯 200mg
甘麦大棗湯 200mg
人参湯・小青竜湯 ほか 120mg
→ 報告件数の上位10には入っていない
両方に載る
芍薬甘草湯
240mg/184件
→ 報告数は最多、GL量は甘草湯に次ぐ2番目
報告件数が多い製剤
抑肝散 60mg/126件
補中益気湯 60mg/29件
六君子湯 40mg/15件
葛根湯 80mg/15件
→ GL量が多い製剤リストには載らない
報告件数は処方件数などの影響を受けるため、製剤間の危険度の比較には使えません。
2. 電子添文で確認したカンゾウ量
報告件数の上位に入った漢方製剤について、ツムラの医療用製剤の電子添文で有効成分の欄を確認しました。
いずれも上のGL量と、カンゾウ1g=GL 40mgの換算で一致します。
生薬名の書かれ方を確かめるため、炙甘草湯と麦門冬湯もあわせて確認しました。
| 製剤 | 1日量 | カンゾウ | GL換算 | 電子添文の改訂年月日 |
|---|---|---|---|---|
| ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒 | 7.5g | 6.0g | 240mg | 2023年12月15日 |
| ツムラ葛根湯エキス顆粒 | 7.5g | 2.0g | 80mg | 2026年8月25日 |
| ツムラ大黄甘草湯エキス顆粒 | 7.5g | 2.0g | 80mg | 2023年12月15日 |
| ツムラ抑肝散エキス顆粒 | 7.5g | 1.5g | 60mg | 2024年10月18日 |
| ツムラ補中益気湯エキス顆粒 | 7.5g | 1.5g | 60mg | 2023年12月15日 |
| ツムラ十全大補湯エキス顆粒 | 7.5g | 1.5g | 60mg | 2023年12月15日 |
| ツムラ桃核承気湯エキス顆粒 | 7.5g | 1.5g | 60mg | 2023年12月15日 |
| ツムラ六君子湯エキス顆粒 | 7.5g | 1.0g | 40mg | 2023年12月15日 |
| ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(参考) | 9.0g | 2.0g | 80mg | 2023年12月15日 |
| ツムラ炙甘草湯エキス顆粒(参考) | 9.0g | シャカンゾウ3.0g | — | 2023年12月15日 |
合算すると、1剤あたりのカンゾウ量が比較的少なくても、併用によって総量が増えることがわかります。
抑肝散7.5gと六君子湯7.5gの併用でカンゾウ2.5g、抑肝散に補中益気湯が加わると3.0gです。
後者の例では、合算値が芍薬甘草湯1剤に含まれる6.0gの半分に達します。
ここで扱うGL量はマニュアルの換算値です。
実際の含有量は製剤や生薬のロットによって変動しうるため、正確な比較よりも「重なっているかどうか」を見るための目安として使っています。
同じ処方名でもメーカーによって1日量と生薬量が異なることがあるので、採用品の電子添文で確認してください。
3. 成分を1種類の名称だけで管理しない
電子添文を成分名で照合するとき、見落としやすい書き方が3つあります。
シャカンゾウ(炙甘草)表記
ツムラ炙甘草湯エキス顆粒の有効成分は「日局シャカンゾウ 3.0g」と記載されています。
「シャカンゾウ」は文字列として「カンゾウ」を含むため、部分一致検索では拾えます。
一方、成分名の完全一致や独自の辞書コードで照合する仕組みでは、表記を対応づけていないと別成分として扱われる可能性があります。
レセコン、電子薬歴、自作のチェック表では、実際の検索仕様を確かめたうえで「カンゾウ」と「シャカンゾウ」を同じ確認対象にします。
グリチルリチン酸としての配合
グリチロン配合錠のようなグリチルリチン酸製剤は生薬名では現れません。
報告件数では112件と3位に入っており、漢方だけを見ていると総量を見誤ります。
ツムラ抑肝散エキス顆粒の併用注意にも、カンゾウ含有製剤と並んでグリチルリチン酸およびその塩類を含有する製剤が挙げられています。
OTCと一般用漢方
マニュアルは、GLあるいは甘草エキスを含むものが多い一般用医薬品として、かぜ薬、解熱鎮痛薬、健胃薬、総合胃腸薬、鎮咳去痰薬、ビタミン含有保健薬、婦人用薬などを挙げ、一部の食品にも含まれることがあるとしています。
仁丹の習慣的な使用による発症例も報告されており、処方薬の外側に量が積み上がっている場合があります。
お薬手帳だけでなく、市販薬と食品の使用状況をたずねておきたいところです。
図2:カンゾウ総量を数えるときの確認先
① 当該処方の漢方
電子添文の有効成分欄
② 併用の漢方
他院分・頓用を含む
③ GL製剤
グリチロン配合錠 等
④ 市販薬・食品
かぜ薬・総合胃腸薬・ビタミン含有保健薬
検索条件に入れる語:カンゾウ/シャカンゾウ/甘草/グリチルリチン酸
4. 禁忌と併用注意は、製剤によって書かれ方が違う
同じカンゾウ含有製剤でも、電子添文の書きぶりは揃っていません。
今回確認したツムラの10製剤のうち、「2. 禁忌」の項があったのは芍薬甘草湯と炙甘草湯の2製剤でした。
| 製剤 | カンゾウ | 「2. 禁忌」の項 | 併用注意に利尿剤 |
|---|---|---|---|
| ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒 | 6.0g | あり(アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症) | あり(ループ系、チアジド系) |
| ツムラ炙甘草湯エキス顆粒 | シャカンゾウ3.0g | あり(同上) | あり(ループ系、チアジド系) |
| 葛根湯、大黄甘草湯、抑肝散、補中益気湯、十全大補湯、桃核承気湯、六君子湯、麦門冬湯 | 1.0〜2.0g | なし | なし(カンゾウ含有製剤とグリチルリチン酸製剤のみ) |
抑肝散の併用注意にはカンゾウ含有製剤とグリチルリチン酸およびその塩類を含有する製剤しか挙がっておらず、利尿剤の記載はありません。
一方、芍薬甘草湯と炙甘草湯には、ループ系利尿剤(アゾセミド、トラセミド、フロセミド等)とチアジド系利尿剤(トリクロルメチアジド等)が併用注意として並んでいます。
電子添文に書かれていないことは、リスクがないことを意味しません。
利尿薬との併用で低カリウム血症を生じやすいという記載は、次に見る厚労省マニュアルのリスク因子の側にあります。
製剤ごとの記載差ではなく、患者さんが飲んでいるもの全体で判断する必要があります。
また、アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症のある患者さんに芍薬甘草湯や炙甘草湯が処方された場合は、電子添文上の禁忌に該当します。
現在の疾患・状態と既往歴を区別して確認することは、こむら返りへの頓用処方であっても省けません。
5. 低カリウム血症を招きやすい併用薬をあわせて見る
マニュアルは、投薬上のリスク因子として次の薬剤を挙げています。
カンゾウ含有製剤と重なっているときは、血清カリウム値の確認をより早い時期に設定する判断材料になります。
| 分類 | 具体例 | 確認の観点 |
|---|---|---|
| 利尿薬 | チアジド系降圧利尿薬、ループ利尿薬 | 高血圧症や心不全での併用、開始・増量の時期 |
| 糖尿病治療薬 | インスリン | 低カリウム血症を生じやすく重篤化しやすい |
| ホルモン関連 | ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、甲状腺ホルモン薬、経口避妊薬 | 投与量と期間 |
| その他 | アミノグリコシド系抗菌薬、シスプラチン、β2刺激薬、アスピリン、イブプロフェン | 短期でも重なる時期がないか |
B型あるいはC型慢性肝炎では、GLや小柴胡湯の服用に加えて、40mL以上のGL配合剤を大量に静脈投与する例で生じやすいとされています。
なお、マオウ(麻黄)を含む処方では、カンゾウとは別の重複が問題になります。
ツムラ葛根湯エキス顆粒はカンゾウ2.0gに加えてマオウ3.0gを含み、併用注意にはマオウ含有製剤(小青竜湯、麻黄湯、麻黄附子細辛湯など)、エフェドリン類含有製剤(エフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン配合剤など)、モノアミン酸化酵素阻害剤などが挙げられています。
dl-メチルエフェドリン塩酸塩は市販のかぜ薬や鎮咳去痰薬にも配合されるため、市販薬の確認はここでも効いてきます。
漢方の重複を見るときは、カンゾウとマオウの両方を数えると漏れが減ります。
多剤併用そのものの整理は、ポリファーマシー対応の進め方と一次情報の更新ログにまとめています。
6. いつ血清カリウム値を見るか
マニュアルは、本症を惹起しうる医薬品を服用している患者について、投与開始時あるいは投与量変更時は1か月以内、維持期でも3〜6か月に1回の、定期的な血清カリウム値の確認や心電図測定が重要だとしています。
好発時期には一定の傾向がなく、使用開始後10日以内に発症した例から数年以上の使用後に発症した例まであります。
ただし3か月以内の発症が約40%を占めます。
「長く飲んでいるから大丈夫」という前提は置けませんし、逆に「まだ始めたばかりだから」という理由で確認を先送りする根拠にもなりません。
患者側のリスク因子として、日本での統計では男女比が1対2で女性に多く、年齢は29〜93歳、平均64歳、全体の80%が50〜80歳代とされています。
低身長、低体重など体表面積が小さい人や高齢者に生じやすいとされます。
薬局で採血データを直接見られない場合は、直近の採血日と、開始前と比べて数値が下がっていないかを患者さんや処方医に確認する形になります。
腎機能や電解質の共有の仕組みは、腎機能チェックシートの作り方で整理しています。
7. 患者さんに伝える初期症状
マニュアルによると、臨床症状の頻度は四肢脱力・筋力低下が約60%、高血圧が35%で、この2つが発見の契機として最も多いとされています。
全身倦怠感が約20%、浮腫が約15%の症例で報告されています。
| 症状 | 報告された頻度 | 患者さんへの伝え方の例 |
|---|---|---|
| 四肢の脱力、筋力低下 | 約60% | 手足に力が入りにくい、立ち上がりにくいと感じたら教えてください |
| 血圧上昇 | 35% | ご自宅で測れる方は、いつもより高い日が続かないか見ておいてください |
| 全身倦怠感 | 約20% | 理由の思いあたらないだるさが続くときは相談してください |
| 浮腫 | 約15% | 足のむくみ、靴がきつい、体重が急に増えたなどの変化 |
| 手足のしびれ、つっぱり感、こわばり、こむら返り | 初期症状として記載 | これまでと違う頻度や強さのこむら返りは伝えてください |
初期症状に気づきながら受診せず、起立や歩行が困難になるまで重症化する例が多いとされています。
自覚症状がないまま、血液検査で低カリウム血症(3.5mEq/L以下、あるいは服用前に比べて低下)が見つかって診断に至った例も少なくありません。
低カリウム血症に伴って心室性不整脈をきたした症例も稀ではないと記されています。
こむら返りに芍薬甘草湯が処方されているときは、処方箋上の用法だけでなく、実際の服用回数と連用日数を確認します。
芍薬甘草湯の電子添文には、重大な副作用としてうっ血性心不全、心室細動、心室頻拍(Torsades de Pointesを含む)が記載されており、動悸、息切れ、倦怠感、めまい、失神などの異常があれば投与を中止し適切な処置を行うこととされています。
「効かないから増やす」ではなく、いつ・どのくらい飲んでいるかを確認したい場面です。
8. 疑ったときに何が起きるか
診断と中止、治療は処方医が患者の状態に応じて判断する領域です。
マニュアルは、薬剤性の偽アルドステロン症の治療について、推定原因医薬品の服用を中止することが第一であるとしています。
低カリウム血症に対してカリウム製剤を投与することも多いものの、尿中へのカリウム排泄を増すばかりであまり効果がないとされ、抗アルドステロン薬であるスピロノラクトンの通常用量の投与が有効とされています。
適切な対応が行われれば予後は良好で、甘草を原因とするものでは、甘草含有物の摂取中止後、数週間の経過で臨床症状の消失と血清カリウムの上昇をみることが多いとされています。
一方で、原因医薬品の中止後も数週間は症状と臨床検査値の異常が残存する点に留意すべきとも書かれています。
中止後も自己判断で経過をみるのではなく、症状と検査値を継続して確認する必要があります。
なお、血圧上昇は必発ではありません。
血圧が正常だからという理由だけで除外はできない、という読み方になります。
処方医への伝え方や記録の型は、疑義照会の実務ガイドにまとめています。
よくある質問
カンゾウは1日何gまでなら安全ですか
マニュアルに、安全域としての上限値の記載はありません。
初期の報告例の大部分はGL 500mg/日以上でしたが、その後はGL 150mg/日以下の比較的少量の投与例が多数を占めるようになり、甘草を1日1〜2gしか含まない医療用漢方薬での発症例も報告されています。
量が少ないことを理由に確認を省く根拠にはならない、という整理になります。
抑肝散は芍薬甘草湯より危険ということですか
そうは言えません。
報告件数は処方件数などの影響を受けるとマニュアルは考察しており、製剤間の危険度の比較には使えない数字です。
抑肝散の報告が多い背景には、対象疾患の広さと処方件数の多さがあると記されています。
注射のグリチルリチン酸製剤でも同じように起こりますか
マニュアルには、経静脈投与ではGLからGA(グリチルレチン酸)が生じにくいため、注射用GL製剤では内服用製剤と比べて本症を発現しにくいとされる、と記載されています。
注射用製剤に含まれるグリシンや含硫アミノ酸がGLの電解質代謝作用を減弱することも指摘されています。
ただし報告件数の上位には入っており、確認の対象から外れるわけではありません。
漢方薬のうち、どのくらいにカンゾウが入っているのですか
マニュアルは、日本で医薬品として認可されている漢方薬の70%以上に甘草が含まれるため注意すべきとしています。
「この処方には入っていないだろう」と見当をつけるより、電子添文で成分を確認するほうが早い場面が多くなります。
頓用の芍薬甘草湯も監査の対象ですか
対象になります。
頓用として交付されていても、実際の服用が連日になっている場合があります。
残薬の減り方や、いつ・どのくらい飲んでいるかを確認すると、処方箋の記載と実際の使用量の差が見えてきます。
確認した内容を、次回の監査につなげる
カンゾウの重複は、1剤ずつ見ているかぎり気づきにくく、合算して初めて見えてきます。
薬歴には、そのとき数えたカンゾウの総量、検索に使った成分名、血清カリウム値の確認日・採血日・情報源、患者さんに伝えた初期症状を分けて残しておくと、次に同じ処方を受けたときに差分を確認しやすくなります。
電子添文は改訂されます。
今回確認した中でも、ツムラ葛根湯エキス顆粒は2026年8月25日、ツムラ抑肝散エキス顆粒は2024年10月18日の版でした。
記録には製品名と改訂年月日まで残しておくと、更新の必要があるかを判断しやすくなります。
改訂情報を追う習慣を整えたい方へ
一次資料を確認する時間と、日々の医療情報に触れる時間を分けておくと、変更点を整理しやすくなります。
情報収集先の一つとして、m3.comの特徴と薬剤師向けの使い方をまとめています。
同じ監査の視点で、抗精神病薬の処方監査、高カリウム血症改善薬の処方監査も確認できます。
参考資料と更新時の確認先
- 厚生労働省・PMDA:重篤副作用疾患別対応マニュアル「偽アルドステロン症」(平成18年11月、令和4年2月改定)。GL含有量の表、副作用報告件数の表、早期発見と早期対応のポイント、治療方法を参照。
- PMDA:医療用医薬品 添付文書等情報検索。ツムラ芍薬甘草湯、葛根湯、大黄甘草湯、抑肝散、補中益気湯、十全大補湯、桃核承気湯、六君子湯、炙甘草湯、麦門冬湯の電子添文で有効成分、禁忌、重要な基本的注意、相互作用、重大な副作用を確認(2026年9月5日確認)。
- 厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル一覧。「低カリウム血症」(平成30年版)を参照。
本記事は2026年9月5日に確認した一次情報に基づく、薬剤師向けの実務整理です。
偽アルドステロン症の診断基準、鑑別、治療を網羅した資料ではありません。
GL量はマニュアルの換算値(カンゾウ1g=GL 40mg)に基づく目安であり、実際の含有量は製剤やロットにより異なることがあります。
実際の監査では採用品の最新の電子添文と患者情報を確認し、疑義は処方医と解消してください。


