「妊婦向けのRSウイルスワクチンは定期接種になったのですか」「高齢者向けも公費ですか」。薬局窓口で質問を受けたときは、妊婦の定期接種と成人の任意接種を分けて案内する必要があります。
2026年4月1日から、妊婦に接種するアブリスボ筋注用が予防接種法に基づく定期接種になりました。さらに、2026年7月14日には、組換えRSウイルスワクチンの重大な副反応としてギラン・バレー症候群を追記する改訂指示が出ています。
先に確認したい4点
- 定期接種の対象は、接種時点で妊娠28週0日から36週6日までの妊婦です。
- 費用や実施期間は自治体によって異なります。「定期接種だから全国一律で無料」とは限りません。
- アレックスビーは、60歳以上または18歳以上の重症化リスクが高い人が承認上の対象です。成人への接種は予防接種法上の定期接種ではありません。公費負担や助成の有無は自治体へ確認します。
- 2026年7月改訂の電子添文では、アブリスボとアレックスビーの重大な副反応にギラン・バレー症候群が記載されています。
もくじ
2026年4月から変わった妊婦の定期接種
定期接種に使われるのは、母子免疫ワクチンであるアブリスボです。妊婦が接種して作られた抗体が胎盤を通じて胎児へ移行し、出生後の乳児におけるRSウイルスによる下気道疾患を予防します。
厚生労働省が示す対象は、接種時点で妊娠28週0日から36週6日までの妊婦です。妊娠ごとに1回接種します。前回までの妊娠時に接種した人も、今回の妊娠で対象期間に該当すれば定期接種の対象です。
接種後14日以内に出生した乳児では有効性が確立していません。妊娠38週6日までに出産を予定している場合は、接種時期を医師へ相談するよう案内します。

アブリスボとアレックスビーの違い
2製剤は、承認上の対象と定期接種での扱いが異なります。アレックスビーを妊婦の母子免疫目的に使うことはできません。
| 確認項目 | アブリスボ筋注用 | アレックスビー筋注用 |
|---|---|---|
| 承認上の対象 | 妊娠24週から36週の妊婦、60歳以上 | 60歳以上、または18歳以上で重症化リスクが高い人 |
| 妊婦の定期接種 | 妊娠28週0日から36週6日までが対象 | 対象外 |
| 接種回数 | 妊婦は妊娠ごとに1回、60歳以上は1回 | 1回 |
| 費用 | 妊婦の定期接種は自治体により異なる。60歳以上は任意接種 | 任意接種。医療機関により異なる |
| 母子免疫 | 適応あり | 適応なし |
アブリスボの電子添文上の接種可能時期は妊娠24週から36週ですが、定期接種の対象期間は妊娠28週0日から36週6日です。妊娠24週0日から27週6日までの接種を検討する場合は、任意接種になることを含めて産科へ確認します。
アレックスビーの成人対象を確認する
アレックスビーの現行電子添文では、接種対象が「60歳以上」または「18歳以上でRSウイルス感染症の重症化リスクが高いと考えられる人」とされています。
- 慢性肺疾患、慢性心血管疾患、慢性腎臓病、慢性肝疾患
- 糖尿病
- 神経疾患、神経筋疾患
- 肥満(BMI 30kg/m2以上が目安)
- 基礎疾患または治療による免疫不全状態、その疑い
- このほか医師が接種を必要と認めた人
年齢だけで薬剤師が接種適否を決めるのではありません。既往歴、治療内容、体調、接種歴を整理し、接種医へつなぐ役割に徹します。
7月14日の安全性改訂を窓口対応へ落とし込む
厚生労働省が案内するアブリスボの主な副反応は、接種部位の疼痛、腫脹、紅斑、頭痛、筋肉痛です。一方、厚生労働省は2026年7月14日、アブリスボとアレックスビーの重大な副反応にギラン・バレー症候群を追記するよう改訂を指示しました。現在公開されている両製剤の電子添文には、頻度不明の重大な副反応として記載されています。
症例数を発現率として読まない
PMDAの調査報告書では、国内症例は両製剤とも0例、海外症例はアブリスボ15例、アレックスビー3例でした。このうち、ワクチンと事象との因果関係を否定できないと評価された症例は各1例です。
これらは副作用報告データベースの集積であり、接種者全体における発現率ではありません。接種対象別の内訳も示されていないため、この数字から妊婦での発現リスクを推定することはできません。
接種後相談で記録する項目
- 接種した製剤名と接種日
- 症状が出た日と、その後の変化
- 手足に力が入りにくい、歩きにくいなどの訴え
- 呼吸苦、意識の変化、急速な悪化の有無
- 接種医療機関、かかりつけ医などの連絡先
症状だけで薬剤師が診断や因果関係の判断をするわけではありません。接種歴と経過を整理し、気になる神経症状があれば早めの医療機関相談につなげます。呼吸が苦しい、意識がおかしい、急速に悪化している場合は緊急性を優先します。
今回の改訂を追うときは、販売会社の解説だけでなく、PMDAで電子添文を検索する手順も確認しておくと、薬局内で同じ版を共有しやすくなります。
薬局窓口で聞かれやすい質問
妊婦の定期接種はいくらですか
自治体によって実施期間と費用が異なります。住民票のある自治体や接種医療機関の案内を確認するよう伝えます。
高齢者向けも定期接種ですか
2026年7月16日時点で、成人へのアブリスボとアレックスビーの接種は、予防接種法上の定期接種ではありません。妊婦に対するアブリスボの定期接種と分け、公費負担や助成の有無は自治体へ確認するよう案内します。
ほかのワクチンと同時に接種できますか
アブリスボとアレックスビーは、医師が必要と認めた場合、ほかのワクチンと同時接種できます。アブリスボでは、百日せき菌の防御抗原を含むワクチンとの同時接種で百日せき抗原への免疫応答が低下したとの報告が電子添文にあるため、接種計画は医師へ確認します。
接種後はどのくらい様子を見ますか
両製剤の電子添文では、失神による転倒を避けるため、接種後一定時間は座らせるなどして状態を観察することが望ましいとされています。固定の時間を薬局側で断定せず、接種医療機関の指示に従うよう案内します。
保管と調製を扱う施設での注意点
アブリスボとアレックスビーは、いずれも凍結乾燥した抗原製剤を専用溶解用液で調製します。保管は2℃から8℃です。
- アブリスボ:調製後すぐに使えない場合は15℃から30℃で保存し、調製後4時間以内に使用します。調製後の液は凍結しません。
- アレックスビー:調製後すぐに使えない場合は遮光して2℃から25℃で保管し、4時間以上経過したものは廃棄します。凍結した製品は使用しません。
製剤ごとに調製後の温度条件が違います。記憶で運用せず、使用時点の電子添文と手順書を確認します。
制度変更と安全性情報を継続して確認する
ワクチンの対象や電子添文は更新されます。m3.comなどの医療者向け情報で更新を知り、厚生労働省とPMDAの一次情報へ戻る流れを作っておくと、薬局内で共有しやすくなります。
薬局内で共有するなら1枚の更新メモにする
今回のような更新は、「定期接種の対象」「成人の承認対象」「費用の確認先」「安全性改訂日」「患者相談時の記録項目」を1枚にまとめると、朝礼や申し送りで使いやすくなります。情報源のURLと確認日も残します。
情報の残し方は、薬局DIメモの作り方でも解説しています。ワクチン情報に限らず、更新前後の差分を薬局内で追える形にしておくことが、患者説明のばらつきを減らします。
まとめ
妊婦に対するアブリスボの定期接種は、接種時点で妊娠28週0日から36週6日までが対象です。費用と実施期間は自治体によって異なるため、全国一律と説明しないことが大切です。
成人では、アブリスボは60歳以上、アレックスビーは60歳以上または18歳以上の重症化リスクが高い人が承認上の対象です。2026年7月の安全性改訂も含め、製剤名、対象、接種日、症状の経過を整理して接種医へつなぎます。
参考情報
- 厚生労働省「RSウイルスワクチン」
- 厚生労働省「医療従事者の方へ RSウイルスワクチン定期接種の留意事項」
- PMDA「2026年7月14日 使用上の注意の改訂指示通知」
- PMDA「組換えRSウイルスワクチンの改訂内容」
- PMDA「組換えRSウイルスワクチンの使用上の注意改訂に関する調査報告書」
- PMDA「アブリスボ筋注用」
- PMDA「アレックスビー筋注用」
本記事は2026年7月16日時点の一次情報に基づいています。実務では、接種時点の厚生労働省資料、自治体案内、PMDA電子添文を確認してください。


